桃ちゃん家へ 1
ゴールデンウィーク最終日となる。
婆ちゃん家で昼ごはんを食べた俺と寧々は実家に帰るため、荷物を持って玄関にいた。
「気をつけて帰るのよ」
「あぁ。ありがとう、婆ちゃん」
「身体に気をつけてね!また来るから!」
俺と寧々は見送ってくれた婆ちゃんに手を振りながら家を出る。
そして桃ちゃんの使用人と待ち合わせをしている最寄り駅まで歩く。
「雨宮さんの使用人が迎えに来てくれるんだよね?」
「あぁ。桃ちゃんの厚意に甘えさせてもらったんだ。だから何かお礼をしたいんだが、何が良いと思う?」
寧々は桃ちゃんと連絡先を交換してから頻回にやり取りをしているらしい。
そのため、桃ちゃんの好みや欲しい物を知ってるはずだ。
「そうだね。お兄ちゃんに何でも命令できる権利をあげたらとても喜ぶと思うよ」
「そんな権利をあげたら俺がパシられて大変な目に遭う可能性があるんだけど……」
「雨宮さんみたいな美女からパシられるなんてご褒美だよね!」
「俺にそんな特殊性癖はねぇよ」
俺は痛くない程度の力で寧々の頭を“ポカっ!”と叩く。
「でも桃ちゃんの欲しい物なんて分からないから、直接本人に聞くしかないよなぁ」
「うんうん!だから何でも言うことを聞くというお礼はアリだと思うよ!」
「……そうだな。そうしてみるか」
大金持ちのお嬢様である桃ちゃんの欲しい物に見当がつかないため、パシられるようなことを桃ちゃんはしないと信じて、桃ちゃんにしてほしいことを直接聞くことにする。
そんな会話をしながら歩いていると、合流地点である最寄り駅に一台の車が停まっているのを見つける。
その車は縦に長く、ハリウッドスターが乗っているような車だった。
「お兄ちゃん、もしかしてだけど……」
「あぁ。桃ちゃんのところだろう」
人口500人程度しかいない集落に高級車がポツンと停まっており、違和感しか感じない。
そのタイミングで車の中から桃ちゃんと、桃ちゃんによく似た美少女が出てきた。
「夏目様っ!寧々さん!おはようございます!」
そして俺たちの姿を見つけた桃ちゃんが笑顔で駆け寄ってくる。
「おはようございます!雨宮さん!」
「おはよう、桃ちゃん。今日はわざわざここまできてくれてありがとう」
「いえいえ!私のお父様に予定を合わせていただきましたので、これくらい当然です!」
桃ちゃんが屈託のない笑顔で言う。
「あ、そうです。お2人に紹介したい方がいました」
桃ちゃんが側にいる黒髪美少女を手招きする。
「私の妹の美柑です。夏目様たちとは同い年になります」
「よろしくね!リン様っ!それと寧々さん!」
そう言って美柑さんが頭を下げる。
桃ちゃんの妹ということで顔立ちは似ており、胸の大きさも桃ちゃんに負けないくらい大きなものを持っている。
違う部分は目元が若干つり目になっていることと、黒髪を肩の辺りで切り揃えている点だけだ。
そのため運動が得意そうな美少女といった容姿をしており、桃ちゃんとは違ったタイプの美少女である。
「ウチ、2人のことは大学で何度も見てるんだ!2人とも大学内では有名人だからね!」
「ってことは俺たちや桃ちゃんと同じ大学に通ってるのか」
「うん!だから大学で見かけた時は声をかけてね!」
そう言って俺たちと握手を交わす。
「では、自己紹介も終わりましたので車に乗りましょう。積もる話がたくさんありますので」
とのことで、俺と寧々は桃ちゃんに促されて高級車に乗り込んだ。