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真奈美からの電話

 俺は真奈美からの電話に出る。


『凛くん!すごいことになってるよ!』


 それが真奈美の第一声だった。


(俺以上に興奮しているのが声だけで分かるぞ)


 そんな真奈美に自然と笑みが溢れる。


『そうだな。これは真奈美が俺を代役に推薦してくれたおかげだ。本当に感謝してるぞ』

『ううん!私だけの力じゃないよ!凛くんの出演を許してくれた下田さんや戸坂ディレクターたちのおかげでもあるんだから!』

『それもそうだが、真奈美の推薦がなければ出演すらなかったんだ。だからありがとう』


 真奈美の言う通りではあるが、真奈美の熱弁がなければ下田さんたちも俺を代役として認めなかっただろう。

 俺は真剣なトーンで真奈美に感謝を伝える。


『そっ、そこまで言われたら素直に受け取るよ。どういたしましてっ!』


 真奈美が嬉しそうに言う。


『予定通り、おっしゃれ〜イズムのおかげで俺が夏目レンだということを周知できそうだ。だから昔のように真奈美と一緒に仕事ができるかもしれない』

『だよね!私もそのことを言おうと思ったんだ!昔みたいに切磋琢磨しながら仕事ができるかもしれないね!』


 昔の俺たちはお互いに励まし合いながら仕事をしてきた。

 そんな関係に戻れることが嬉しくて電話してきたようだ。


『ははっ、そうだな。ドラマの出演が決まった時は、真奈美に褒められるよう頑張るよ。だが、6年も演技をしてないからなぁ。鍛え直しが必要かもしれない』


 ドラマ出演のオファーが来るかは分からないが、備えあれば憂いなしという言葉通り、備えておく必要はある。


『凛くんなら絶対、昔の演技を取り戻せるよ!だから私、凛くんの演技を楽しみにしてるからね!』


 俺が昔の演技を取り戻し、俳優として活躍することを確信しているように真奈美が言う。

 そんな真奈美の言葉を嬉しく思う。


(真奈美の期待を裏切るわけにはいかないな。こりゃ、もう一度、婆ちゃんに鍛え直してもらった方がいいかもしれん。2度と受けたくないと思えるほどスパルタだったけど)


 活動を休止して婆ちゃんから演技指導された頃を思い出して身震いしてしまう。


 そんなことを思っていると…


『あ、あのね?凛くん』


 と、先ほどまでの元気を無くして真奈美が話し始める。


『どうした?』

『え、えーっと……り、凛くんって今、彼女さんとかいるのかなーって』

『ん?俺に彼女なんかいないが………急にどうしたんだ?』

『えっ!えーっと……そ、そうっ!芸能界に復帰したから恋人がいたら大変だなーっと思って!』

『なるほど。確かに恋人がいたら大変だな』


 アイドルとなれば話は別だが、芸人や俳優の熱愛報道は応援してくれるファンが多い。

 そのため俺に恋人が居てもスキャンダルになるとは思っていないが、今の俺は芸能界に復帰したばかり。


 きっと彼女が居たら芸能界の仕事で忙しくなることに加え、彼女との付き合いもしなければならない俺のことを心配したのだろう。

 だが俺には縁のない話なので心配無用だ。


『安心しろ、真奈美。俺は今まで彼女なんか居たことないから心配しなくていいぞ』

『そ、そうなんだ……』


 俺に彼女がおらず芸能活動に集中できると思ったのだろう。

 どこか安心したような声で真奈美が言う。


『あっ!ちなみに、私も今まで恋人はいないんだ!』

『へー、そうなんだ。やっぱり芸能界で活躍すると彼氏なんか作ってる時間はないんだな』


 真奈美ほどの可愛さがあれば、いくらでも彼氏を作れたはずなのに今まで恋人がいたことがない。

 それだけ、芸能界は忙しいのだろう。


『うぅ……なんか思ってた反応と違うよぉ……』


 しかし俺の発言にガックリしたような声で返答される。


『……?どうした?』

『ううん、なんでもないよ……』


 なんでもないような反応ではないが、なんでもないと言われたので、これ以上は追求しない。

 そのため、別の話題に切り替える。


『あ、そうだ。寧々が真奈美に会いたがってたぞ』

『ほんと!?私も寧々ちゃんに会いたいよ!』

『なら寧々と電話を代わってもいいか?』

『うんっ!』


 俺は真奈美の返答を聞いて、近くでスマホを触っている寧々を呼ぶ。


「真奈美からだ。寧々の声を聞きたいんだって」

「真奈美ちゃんから!?お兄ちゃん、代わって!」


 俺の言葉を聞いて寧々がスマホを受け取る。


「もしもし真奈美ちゃん!さっきテレビ見たよ!」


 そして俺のスマホで寧々が話し始める。


(久々に2人で話してもらった方がいいな)


 そう思い、俺は寧々から離れてテレビを見る。


 しばらくテレビを見ていると…


「えっ!真奈美ちゃん、まだ誰とも付き合ってないの!?」


 寧々の声がリビング中に響き渡る。


「ってことは真奈美ちゃん、今でも………きゃぁぁっ!6年も想い続けるなんて凄すぎだよ!」


 そして発狂し始める。


「な、なんだ?」


 突然騒がしくなった寧々のもとに俺は近づく。


「騒がしいけど、なんの話をしてるんだ?」

「あっ、ううん!なんでもないよ!真奈美ちゃんが乙女だなーって話をしてただけだから!あとスマホありがと!」

「………?そうか」


 俺は首を傾げながら寧々からスマホを受け取る。


『寧々がうるさかっただろ』

『う、ううん。私は大丈夫だよ。それより寧々ちゃんに電話を変わってくれてありがと。あとは寧々ちゃんのスマホに電話するから』

『了解。また仕事で共演した時はよろしくな』

『うんっ!凛くんも頑張ってね!』


 その声を聞いて俺は電話を切る。


「さて、あとはどれだけ仕事が増えるかだが……こればかりは気にしても仕方ないか。今は明日からの仕事に集中だ」


 さっそく、明日は雨宮さんとの写真集の撮影が控えている。


「はやく寝て明日に備えるか」


 そう呟いて俺はリビングを出た。

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