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『読者モデル』の撮影 1

 寧々と談笑しながら家を目指して歩く。

 すると1人の女性から話しかけられた。


「すみません!少しだけお時間よろしいでしょうか!?」

「……なんでしょうか?」


 寧々ではなく俺に声を掛けられたと思った俺は、女性に返事をする。


「私、芸能プロダクション『ソレイユ』で働いております矢上鈴香(やがみすずか)と申します」


 そう言って名刺を渡される。

 20代後半くらいの綺麗な女性で黒髪をポニーテールに結んでおり、スーツがとても似合っている女性だ。


(も、もしかして夏目レンということがバレたか!?)


 そう思い、誤魔化す準備をしつつ、声をかけてきた目的を聞く。


「えーっと芸能プロダクションの方が俺に、どのような用件でしょうか?」

「はい。単刀直入に言います。私を助けてください!」

「いきなり何があったんですか!?」


 謎の助けて宣言に声をあげて聞く。


「今、『読者モデル』を撮影してるのですが、モデルさんが急遽来られなくなったので、代役を探しまわってたんです!」

「なるほど。つまり『俺に代役をしてほしい』というお願いですか?」

「はい!是非、お願いします!」


 矢上さんが頭を下げる。


「あのぉ……大変申し訳ないのですが、断らせていただきます」

「な、なぜですか!?」


 顔を上げて驚いた表情をする矢上さん。


「お、俺なんかよりもカッコいい方はいらっしゃいますので」


 この言葉は本心だ。


 俺は髪を切ったことでイケメンになったとは思っているが、『読者モデル』に掲載されるほどのイケメンになったとは思っていない。

 そのため断っているが、隣にいた寧々が口を挟む。


「私は協力してもいいと思うよ」

「え?」

「だって矢上さん、本気で困ってるよ?」

「た、確かにその通りだが……」


 今にも泣きそうな顔でお願いする矢上さんに心苦しい想いをしているが、『読者モデル』の撮影を行うと俺が夏目レンということがバレる可能性があるため、心を鬼にして断っている。


 すると、寧々が耳元で囁く。


「夏目レンということがバレないように生きるくらいなら、もう一回、芸能活動を再開したほうがいいと私は思うな」


 確かに、芸能活動を再開すれば、バレることに怯えながら生活しなくていい。

 むしろ、バレた方がネタになって注目される。


「それに、私はお兄ちゃんが芸能界で活躍するところをもう一度見てみたいんだ。どうかな?」


 寧々が耳元でお願いしてくる。


(そういえば寧々も俺の芸能活動を応援してたな。母さんと一緒に)


 母さんが亡くなったことのショックが大きくて芸能界を引退してしまったが、引退したことで寧々をガッカリさせてしまったことを思い出す。


「芸能界に復帰する気はないが、今回は寧々のお願いだから引き受けよう。正体がバレて波瀾万丈な日常を送りたくないから、1枚しか写真を撮らないけど」

「今回だけなのは残念だけど、写真を撮ってくれるなら許す!」


 そう言って寧々が喜ぶ。


(『読モ』に一回写ったくらいで正体がバレことはないだろう。しかも1枚だけってお願いすればバレる可能性も低くなる)


 可愛い妹のお願いを断りきれなかった俺は、心の中で自分を説得させる。


「わかりました。俺でよければ引き受けますよ」

「ありがとうございます!」


 俺の返事に飛び跳ねそうな勢いで喜ぶ矢上さん。


「ただし掲載する写真は1枚だけでお願いします」

「分かりました!撮影場所はコチラになりますので、ついて来てください!彼女さんもご一緒に!」

「かっ、彼女じゃありません!私はお兄ちゃんの妹です!」


 矢上さんの発言に顔を赤くする寧々。


「す、すみません。お似合いに見えましたので」


 そう頭を下げて謝った後、矢上さんが口を開く。


「では妹さんもご一緒に撮影現場へ向かいましょう」


 とのことで俺たちは矢上さんとともに撮影現場を目指して歩き出した。




 歩きながら矢上さんに簡単な自己紹介をする。


「夏目凛です。隣にいるのは妹の夏目寧々です」

「凛さんと寧々さんですね!今日はよろしくお願いします!」

「はい!お願いします!」


 簡単に挨拶を終えた俺たちは雑談をしながら移動する。


「矢上さんはお兄ちゃんと話しても顔が赤くなったりしませんね」

「そんなことありませんよ。代役のモデルさんを探してる時に凛さんを見かけた時は、心臓が止まるかと思いました」

「分かります!私も初めて見た時は心停止一歩手前でしたから!」

「そうですよね!私、今普通に凛さんと話せていることが奇跡だと思ってます!」


 そんな会話が聞こえてくる。


(心停止一歩手前て……2人には俺の顔がお化けに見えるのか?)


 そんなことを思った。

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