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浜崎涼菜との撮影 1

「では浜崎さんとの撮影を始めます」

「夏目さん、よろしくお願いします!」

「あぁ。よろしく、浜崎さん」


 浜崎さんとは『生徒会長は告らせたい』の収録しか接点がないため、この機会に少しでも仲良くなろうと思う。


「では始めます」


 川端さんの言葉を聞き、カメラが周り出す。


「今からは女優の浜崎涼菜さんと課題クリアに向け頑張っていこうと思います」


 簡単な説明をカメラに向けて行い、浜崎さんの方を向く。


「今からの課題は何になるんだ?」

「はいっ。今からの課題は『ミシュラン一つ星を5年連続で受賞した、一貫1000円の高級寿司店でご飯を食べろ!』です!」

「一貫1000円!?」


 大学生である俺が手を出していい店ではなかった。


「はいっ。頑張って探しましょう!」


 浜崎さんが胸の前で握り拳を作る。

 番組の企画にあるってことは奢ってくれるのだろう。

 そう願い、行動に移る。


「あぁ。じゃあ移動しようか」


 山の麓では人がいないため、人通りの多い場所を目指して歩く。

 その間、浜崎さんとの会話に花を咲かせる。


「『生徒会長は告らせたい』に出演して以降、仕事の方はどうなんだ?」

「そうですね。ありがたいことに、いくつかお仕事をいただきました。主演級のお仕事はまだいただいてませんが、大きな一歩だと思います」

「そうだな。芸能界に飛び込んだばかりの人間がいきなり主演を務めるなんてあり得ない話だ。俺や真奈美、香帆だって最初はモブキャラだったんだから」


 浜崎さんは俺と共演した『生徒会長は告らせたい』で初めて役をもらった。

 ようやくスタートラインに立てたので、ここからは女優として生き残るため、技術を磨かなければならない。


「そうですね。ここから愛甲さんや立花さんのような女優になるため、頑張らないといけません。ウチには叶えたい目標もありますので」

「目標があるのか。その目標って聞いてもいい?」

「はいっ。ウチの目標は愛甲さんや立花さんを超え、夏目さんと今度は主演として共演することです」


 真剣な表情で浜崎さんが言う。

 なぜ俺との共演が目標になるのかは分からないが、人の目標に難癖をつけるわけにはいかない。


「そうか。なら俺も頑張らないとな。浜崎さんが有名女優になった時、俺が主演級の役を貰えなかったら叶えられないからな」

「………笑わないのですか?」

「笑う?そんなことするわけないだろ。実際、浜崎さんの演技力ならいずれ真奈美たちを超えるかもしれないと思ってるからな」


 浜崎さんは現在、高校2年生で役者を初めてまだ短い。

 伸び代しかないので俺は言葉で背中を押すことにする。


「だから頑張れよ。俺も浜崎さんと主演級の役で共演できるよう頑張るから」

「はいっ!頑張ります!」


 そんな会話をしながら俺たちは歩いた。




 浜崎さんと人通りの多い場所に到着する。


 そこで聞き込みを行った結果、欲しい情報はすぐに手に入れることができた。


「さすがミシュラン一つ星の店だ。すぐに集めることができたぞ」

「ですね。これならウチのヒントは必要なさそうです」


 集めた結果、ここから数分ほど歩いたところにある店が俺たちの課題である高級寿司屋らしい。


「この課題ははやく終わりそうですね」

「あぁ。お腹も空いたからはやく行こうか」

「うぅ……ハズレの課題を引いてしまいました……」


 何故かガッカリしている浜崎さん。


「何に落ち込んでるかは知らないが辿り着けば良いことがあるぞ」

「……?なんですか?」

「あぁ。おそらくだがタダで高級なお寿司が食べれるかもしれないっ!」


 俺は力強く言い切る。

 浜崎さんに向けて言いいつつ川端さんに聞こえるように伝え、タダ飯だよね?っということをアピールする。


「あ、そうなんですね」

「かるっ!」


 しかし浜崎さんの反応が思ってたのと違った。


「浜崎さん、高級寿司屋だよ?一貫1000円だよ?」

「確かに高級な寿司を無料で食べれるのは魅力的ですが、そのメリットで補えないくらい残念なことが起こってます」

「……?」


 そう言われても全く分からない俺は首を傾げる。


「ウチ、夏目さんとのデートが楽しみだったので、もう少し長く旅をしたかったです」


 そう言って落ち込む。


(そうか。確かに他の3人と比べて課題に取り組む時間が短かった。ということは出演時間が短い。新人女優である浜崎さんにとって出演時間が短いことは致命的だ)


 そう思い、俺は浜崎さんに一つ提案をする。


「なら少し遠回りをして向かおうか」

「えっ、いいんですか?」

「あぁ。それくらい問題ないよ。俺ももう少し浜崎さんと歩いてみたかったからな」

「ありがとうございます!」


 俺の言葉にパーっと笑顔を見せ、感謝の言葉を告げる。


「じゃあ、このお寿司屋さんの評判を聞くか。オススメのネタを食べたいからな」

「はいっ!」


 とのことで予定を変更し、もう少し街を歩くことにした。

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