雨宮桃華との撮影 3
桃ちゃんからのヒントをもとに情報を集める。
「駄菓子屋?それなら『カカシ』という駄菓子屋がこの道を真っ直ぐ行って突き当たりを左に曲がったらあるぞ」
「ありがとうございますっ!」
1人のお爺さんが駄菓子屋のことを知っていたようで、丁寧に道を教えてくれた。
「見つかったよ。桃ちゃんのヒントのおかげで」
「良かったですっ!では行きましょうっ!」
とのことで俺たちは駄菓子屋『カカシ』を目指す。
「そういえば昔、一度だけ桃ちゃんと駄菓子屋に行ったな」
「夏目様、覚えてくださったのですね……」
「当たり前だろ。桃ちゃんと遊んだ日々は全て覚えてる。それくらい楽しかったからな」
そう言うと桃ちゃんの顔がパーっと笑顔になる。
「私も夏目様と過ごした日々は覚えてます!それこそ、どんな話をしたかも鮮明に覚えてますよ!」
「そ、それはすごいな」
さすがにどんな話をしたかは覚えてないが、出かけた記憶や遊んだ場所などはしっかり覚えている。
「家族以外の人が怖くて周囲に馴染めなかった私が変わったキッカケですから」
俺と出会った時の桃ちゃんは周囲の人に怯え、林檎さんから片時も離れなかった。
そんな桃ちゃんに俺は声をかけ、手を引いて外へ連れ出した。
「私はその恩を一生かけて夏目様へお返しする予定です。だから……」
――楽しみにしてくださいね、夏目様。
妖艶な笑みを浮かべ、俺にウインクをする桃ちゃん。
「っ!そ、そんなことしなくていいが……楽しみにしてるよ」
「はいっ!」
嬉しそうに返事をする桃ちゃん。
そんな会話をしていると駄菓子屋『カカシ』との看板が立てられた店に到着した。
「桃ちゃん。この店で合ってる?」
「はいっ!大正解です!」
「よしっ!」
無事課題をクリアし、桃ちゃんからの身体的アプローチも終了となることに安堵する。
「せっかく駄菓子屋に寄ったから中に入って何か買おうか。久しぶりに駄菓子が食べたくなったし」
「いいですね!私も食べたくなりました!」
とのことでお邪魔させてもらう。
「ごめんくださーい」
「はーい」
中からお婆ちゃんの声が聞こえてくる。
「あら、凛さん。それと桃華さんも」
「俺たちのこと知ってるんですか!?」
「もちろん。凛さんはテレビで有名だし桃華さんは雑誌で何度か見かけてるからね」
そう言って近くの雑誌を指さす。
そこには大胆な露出をした桃ちゃんが写っていた。
「それにあの子から凛さんたちが訪れるからと聞いてたからね。あ、今お茶を用意するよ」
「いえっ!俺たちに気遣いはいりません!俺たちは買い物に来ただけですから!」
あの子というのは気になる発言だったが、アポ取りのことかと思いスルーする。
「店内を見て回ってもいいですか?」
「もちろん。ゆっくりしていってね」
とのことで俺と桃ちゃんは店内を歩く。
今は駄菓子以外も売ってるというのは本当のようで、駄菓子コーナーは店内の4分の1程度。
残り4分の3は食べ物や雑貨品などを陳列していたため、駄菓子屋と気付く人は少ないだろう。
そんなことを思いつつ店内を歩いていると、桃ちゃんから声がかかる。
「見てくださいっ!フルーツ餅です!」
「お、懐かしいな。これ、桃ちゃんと2人で食べたことあるな」
「はいっ!あの頃は夏目様が奢ってくださったんですよ!」
「そ、そうだっけ?」
「ふふっ。私が食べたそうにしてたところを見た夏目様が買ってくださったんです。あの時の光景は今でも覚えてますよ」
懐かしそうに桃ちゃんが語る。
「あっ、きなこ棒です!これも懐かしいですね!これも夏目様が奢ってくれました!」
そんな感じでしばらく桃ちゃんと駄菓子について語り、たくさんの駄菓子を買って店から出る。
「せっかくだから何か食べようか」
「そうですね。久しぶりに駄菓子を見て食べたくなりました」
とのことで店の前にあったベンチに腰掛ける。
「どれを食べようか?」
「そうですね……私はきなこ棒にします!」
「なら俺はフルーツ餅を食べるか」
俺たちは各々開封し、パクっと食べる。
「んーっ!美味しいです!」
「駄菓子はいつ食べても美味しいな。これが100円以下って考えられないぞ」
そんな感想を述べつつ俺たちは食べ進める。
すると「あっ……」と桃ちゃんが声を出す。
そのため桃ちゃんを見てみると、食べた時にきな粉をこぼしてしまったようだ。
胸の谷間に。
「っ!」
俺は慌てて視線を逸らし、桃ちゃんの顔を見る。
「こ、こぼしたみたいだな」
「はい。やはりきなこ棒は食べる時にきなこをこぼしてしまうのが難点ですね」
そう言いつつきなこを振り落とすため、手で胸の谷間を触る。
そして振り払う時の衝撃で巨乳が揺れる。
しかし今日は露出が多いことで谷間の中にまできなこが入ったようで、紙切れを探す時以上に揺らす。
その様子を俺はジーッと見つめてしまった。
「そんな熱い視線で見られると恥ずかしいですね」
「っ!ご、ごめん!」
桃ちゃんの顔を見ていたはずが、無意識のうちに胸の谷間に視線がロックロンされていた。
そのことを指摘され、慌てて視線をフルーツ餅に移す。
「ふふっ。可愛いですね、夏目様は」
そんな声が聞こえてくるが振り向いたら再び見てしまうので、振り向かずにフルーツ餅を食べ続ける。
そんな俺の耳元に桃ちゃんが近づき、声がカメラに拾われない程度の声量で呟いた。
「夏目様がお望みなら、私の代わりにきな粉を振り払ってもいいですよ。胸の谷間の奥底まで入り込んだきな粉を」
「っ!お、俺が捕まってしまうので……遠慮しておきます……」
「ふふっ、分かりました。では撮影のない2人きりの状況で似たようなことが起きたら、その時はお願いしますね」
そう言って耳元から離れる。
(やられたっ!盛大に揶揄われたっ!)
俺は顔が赤くなっているのを自覚しながら、フルーツ餅を無心で食べ続けた。




