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選考会という名の修羅場 13

 みんなに勝負服の感想を伝えると川端さんが歩いてくる。


「おはようございます。今日もよろしくお願いします」


 そう言って挨拶をする川端さんへ各々が挨拶をする。


「では早速今回の撮影内容を説明します」


 とのことで全員が気になっている撮影内容を話し始める。


「夏目ガールを選ぶための最終選考は『夏目さんとの仲』。つまり夏目さんとの相性です」

「相性ですか?」

「はい。今回の撮影では夏目さんと簡単な旅をしてもらいます。その内容を見た私たちと夏目さんが順位をつけます」

「俺もですか?」

「はい。撮影をする夏目さんも順位付けに参加してもらいます。実際、隣を歩くのは夏目さんなので」

「分かりました」


 当然と言えば当然だが、俺との相性が悪ければ良い番組を作ることはできない。

 そのため実際に旅をしてもらい、俺との相性を見て判断するようだ。


「では旅の内容に移ります。今回、みなさんには企画した番組と同じことをやっていただきます」


 そう言って川端さんが1つの箱を持ってくる。


「この中には5つの課題が書かれてます。それを1つ選び、その課題を夏目さんとクリアしてください」


 今回、俺が出演する番組内容は、出題された課題を俺が地域の人たちから情報を得てクリアするというもので、地域の人たちからの情報で解決できない場合、夏目ガールがサポートする手筈となっている。

 今回はそれと同じことを小規模で行うらしい。


「では立花さんからはコチラへ。クジを引いて課題を選んでいただきます。ついでに撮影の順番もクジで決めます」


 とのことで皆んなが2つのクジを引く。

 結果、1番目が立花さんで2番目が桃ちゃん、3番目が美奈で4番目が浜崎さん。最後に真奈美となった。


(お、立花さんが最初か。なら寧々のアドバイスを実行するチャンスだな)


 立花さんから嫌われている俺だが、寧々から『しつこいくらい歩み寄ってみて。押し倒しても怒られないから』と言われた。

 立花さんと仲良くなりたい俺は今日の撮影で試してみる予定だ。

 もちろん、押し倒したりはしない。


「課題も決まりましたね。では夏目ガール候補の5人はコチラへ。それぞれ、課題の答えをお伝えします。答えをもとに夏目さんが困っている時はヒントをお願いします」


 とのことで皆んながスタッフから選んだ課題の答えを聞き、ヒントを考える。


「つまり今からお兄ちゃんは真奈美ちゃんたち5人とデートするんだね」

「デートみたいなものだがデートと思ってるのはお前だけだ。皆んな夏目ガールのポジションを勝ち取ろうと必死なんだから」

「………はぁ」

「え、今ため息のタイミングだった?」

「相変わらず鈍チンだね、お兄ちゃんは」


 “やれやれ”といったジェスチャーをしながら呟く寧々。

 そんな会話をしていると5人がスタッフとの会話を終えて俺のもとへ集まる。

 その様子を確認した後、川端さんが口を開く。


「早押しクイズと障害物競走での順位が5人とも同じなので、これから行う撮影内容で相手を選ぶこととなります。何か質問はありますか?」


 川端さんの問いかけに真奈美が手を挙げる。


「川端さんから勝負服を指定されました。何故、勝負服を指定したのですか?」


 川端さんからは「夏目さんがメロメロになるような勝負服をお願いします」と言われた。

 外を歩くことは伝えられていたため、靴などには注意をとも言われていたが、この内容をするなら動きやすい服装を指定した方がいいような気がする。

 だがこの質問は想定内のようで川端さんは淡々と返答する。


「それはですね。夏目さんも審査員だからです。審査員への色仕掛けは選ばれるための有効な手段ですから」

「なるほどっ!っということはヒントを教えつつ凛くんに自分の魅力をアピールすればいいんですね!」

「そういうことです」


 “ゴゴゴっ!”と真奈美以外も気合いが入る。


(撮影中に色仕掛けはやめてよ?みんなの身体をエッチぃ目で見てるとこ放送されたくないから)


 そう切に願う。


「では撮影を始めます。1番目の立花さん以外は離れて待機をお願いします」


 とのことで立花さんを除いた4人が動き出す。


「リン様、頑張ってください!」

「私たちも近くで皆さんの旅を見ることができるみたいです。夏目様の勇姿、この目にしっかりと焼き付けますね」

「凛くん、香帆ちゃんに変なことしたら許さないからね?」

「ですです。ウチもしっかり監視してますので」

「そんなことしねぇよ!」


 俺のツッコミには返答せず、4人が立ち去る。


「凛は私に変なことをする予定なの?」

「しないよ。これ以上、立花さんから嫌われたくないからな」

「……べ、別に私は凛のこと嫌ってなんかないわよ。だって私たちはその……と、友達なんだから」

「………え?」

「何で驚いてるのよ」

「あ、いや。立花さんは俺のこと友達と思ってないと思ってたから」


 以前立花さんへ「友達になってくれると嬉しいな」とお願いし、俺たちは友達になった。

 しかし俺への態度が友達と接するような態度ではなかったため、友達と思ってるのは俺だけかと思ってた。


「今まではその……悪かったわ。凛が歩み寄ろうとしてるのに突き放すようなこと言って。先日、寧々から録音が送られて……ではなく!寧々から聞いたわ。こんな面倒な私を見放さず、今も仲良くなりたいっと思ってるって」

「そんなこと俺は気にしてないぞ。だって俺たちは友達だからな。遠慮なく言い合える関係は間違ってない」


 録音という物騒な発言はあったが、立花さんが俺のことを友達と思ってることに安堵する。


「今までは立花さんから嫌われてると思って中々仲良くできなかったけど、これからは遠慮なく話しかけるよ」


 そう言って俺は笑顔を向ける。

 そんな俺を見て、下を向きながら何かを呟く。


「ほんと、カッコいいわね」

「……?なんか言った?」

「っ!な、なんでもないわよ!」


 そう言ってそっぽを向かれた。


(よく分からないが……寧々のおかげで立花さんとは仲良くなれそうだ。さすが俺の妹だ)


 そんなことを思い、心の中で寧々に感謝した。

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