選考会という名の修羅場 9
桃ちゃんのえっちぃ姿から目が離せないでいると…
「おぉーっと!速くも小鳥遊さんが3つ目の障害物、平均台へと挑戦します!」
との声が聞こえ、視線を美奈へ移す。
そこには太さが10cmしかない平均台を難なく進む美奈の姿があった。
「さすがアイドルですね。バランス感覚が素晴らしいです」
平均台から落ちた場合、平均台のスタート位置に戻ることとなりタイムロスとなるが、美奈が平均台から落ちる気配はない。
それくらい安定した歩きを見せている。
「ここで浜崎さんも平均台へ到着!立花さんは網くぐりをクリアしました!」
現在の順位は美奈がぶっちぎりでトップを走り、浜崎さん、立花さん、真奈美と続く。
そして桃ちゃんが5位を走っている。
「全然進まないよぉーっ!」
「なんですか、この網はっ!ものすごく進みにくいです!」
網くぐりに苦戦している巨乳2人の声が聞こえてくる。
「真奈美と桃ちゃんはまだかかりそうですね」
「この位置では3位の立花さんに追いつくのは難しいでしょう」
つまり真奈美と桃ちゃんで最下位争いをすることになりそうだ。
「おぉっと!平均台の方で立花さんが浜崎さんを追い上げています!」
バランス感覚が優れているのか、立花さんが浜崎さんを追い上げており、先ほどよりも差が縮まっている。
「へー、立花さんってバランス感覚が良いんだ」
「そのようですね。実際、先頭の美奈さんと同じくらいのペースで進んでますから」
そんなことを話しつつ全体を見渡すと、巨乳の2人が網くぐりを抜けており、平均台へと向かっていた。
「愛甲さんと雨宮さんが網くぐりを抜けたみたいですね!」
「そのようですね。2人とも疲弊し切ってますが」
どうやら網くぐりにかなりの体力を使ったようで、2人とも疲弊している様子。
桃ちゃんなんか肩で息をしており、先程よりも巨乳を揺らしながら走っていた。
(2人とも胸に重りを背負ってるからなぁ。走るだけでも大変そうだ)
そんなことを思ってしまう。
「おぉーっと!小鳥遊さんが平均台をクリアし、最後の障害物であるパン食い競走に到着しました!」
ぶっちぎりでトップを走る美奈が最後の障害物に到着する。
そこにはスタッフが5つのパンを吊るしており、美奈は口でパンを咥えなければならない。
「小鳥遊さんは一発でパンを咥えることができるのでしょうか!?」
一之瀬さんと共に固唾を飲んで美奈を見る。
「えいっ!」
そんな可愛らしい声をあげながら美奈がジャンプする。
しかし、吊るされたパンまで口が届かず、そのまま落下する。
「惜しいっ!数cmほど届かずっ!」
「もう少し膝を曲げてジャンプした方がいいかもしれませんね」
俺の言葉が届いたのかは分からないが、美奈は先程よりも膝を曲げて溜めを作る。
そして「えいっ!」と可愛らしい声をあげて再びジャンプをする。
しかしパンを咥えることはできずに落下する。
「惜しいっ!先程よりも惜しかったです!」
ほんの少し届かなかった美奈が「次こそはーっ!」と気合を入れている。
しかし何度もジャンプをするが、残念ながらパンを咥えることはできない。
「どうやら小鳥遊さんは吊るされたパンが高くて届かないようです!」
「5人の中で1番背が低いですからね。1番背の高い桃ちゃんに合わせて高さ調整してると思いますので、美奈にとっては不利な状況ですね」
運動神経は良いのでジャンプ力はあるが、背が低すぎてパンに届かないようだ。
「むぅ〜っ!次こそはっ!」
気合の入った声とともに“ぴょんぴょん”とその場でジャンプをするが、あと少しのところで届かず悔しそうな顔をしている。
そんな美奈を見て無性に応援したくなった俺は…
「頑張れっ!美奈っ!」
と、大きな声で美奈を応援する。
「リン様っ!」
その声が届いたのか、美奈が俺の方を向く。
「リン様が応援してくれましたっ!絶対、1位になってみせます!」
そう呟いた美奈が少し助走をとり、一気に駆け出す。
そして思いっきりジャンプして、遂にパンを口で咥えることに成功する。
「ふぁっふぁーっ!」
咥えた状態なので何を言ったかは分からないが、満面の笑みで俺を見ているので、とても喜んでいるのだろう。
そんな美奈に俺も笑顔で返す。
そして美奈はパンを咥えたままゴールし、一位となる。
「リン様のおかげでゴールできましたー!」
俺の方を向き、“ぴょんぴょん”と跳ねながら可愛らしい笑顔を見せる。
「あぁ。見てたよ。よく頑張ったな」
「えへへ〜!」
そして嬉しそうにはにかむ。
(やっぱり美奈の笑顔は人を元気づける力があるよ)
そんなことを思った。




