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復帰後初仕事 5

 スタッフたちが騒ぎながら戸坂さんに問い詰める間、俺たちは雑談をしながら過ごす。

 そして、スタッフたちが落ち着いたところで収録が再開される。


「子役時代の芸名を聞いてもいいですか!?」


 先ほどと同じやり取りを行い、俺は下田さんの質問に答える。


「もちろんです!俺、昔は夏目レンって芸名で活動してました!」


 俺の発言に、今度は誰も声を上げることなく収録が続く。


「えっ!夏目レンですか!?」


 そして下田さんがオーバーなリアクションを取る。


「言われてみれば、夏目レンの面影を感じますね!」

「子供は成長が速いって言いますからね。6年も経てば、面影が残ってる程度しか感じないと思いますよ」

「でも私は『読モ』の表紙を飾ってる凛くんを見て、すぐに夏目レンだって気づいたよ!」

「真奈美の場合は夏目レンの本名が夏目凛であることを知ってたからな。幾分か勘付きやすかったかもしれんぞ」

「あ、そっか!」


 真奈美が「確かに!」と言って納得する。


「そういえば、お2人は『マルモのおきてだよ』で共演されましたね」

「そうですね。俺が真奈美の弟役でした」

「同い年ということで、共演が終わってからも凛くんとは交流がありました。特にドラマ終了後は、私と凛くんで歌った『マルマルモリモリ』が大ヒットしましたからね。何度もスタジオで凛くんと歌いましたよ」

「あの頃は喉のケアをいつも以上に大切にしたなぁ」


 そんなことを真奈美と話しながら、昔を思い出す。


「実は俺、夏目レンの大ファンだったんです。復帰するのを心の底から待ってたんですが……『読モ』の夏目さんを見ても夏目レンと結びつけることができませんでした」


 そう言って下田さんが落ち込む。


「仕方ありませんよ。先ほども言いましたが6年も経ってますので、面影が残ってる程度しか感じないと思います」

「それもそうですが……あーっ!悔しいっ!」


 下田さんが悔しそうに地団駄を踏む。


「ちなみに『読モ』の表紙を見て、夏目さんが夏目レンと同一人物であることに気づいた人はいたのですか?」

「いたらしいですね。事務所宛に俺=夏目レンかを確認する電話が数件ほどあったようなので」

「すごいですね、その方々は!俺もその1人になりたかった!」

「おかげで事務所は電話対応に追われて大変だったらしいですよ」


 俺は笑いながら下田さんへ言う。

 そんな感じで、夏目レンの話題を中心に3人で語りあった。



 

 その後も夏目レンの話題を中心に語り合う。

 特に、俺と真奈美のエピソードを中心に語り、あっという間に収録が終わった。


「「ありがとうございました!」」


 俺と真奈美は戸坂さんと下田さんに頭を下げる。


「コチラこそありがとう。とても良い収録だったよ」

「俺も楽しかった。また一緒に仕事をすることがあれば、その時もよろしくな」

「「はいっ!」」


 そう応え、再度頭を下げた俺たちは収録現場から立ち去るため歩き出す。


 すると…


「リン様っ!私、『読モ』の表紙を見てファンになりました!あ、握手してくださいっ!」

「あっ!ずるいっ!私も握手してください!」

「私はリン様の表紙にサインをお願いします!」


 俺のもとに、たくさんの女性スタッフが駆け寄って来た。


「えっ、えーっと……こ、これでいいかな?」

「はぅ〜、ありがとうございます……」


 突然のことに困りながらも、俺は駆け寄って来た女性スタッフに握手をする。


「わ、私もお願いします!」

「あ、あぁ。これからも応援してくれると嬉しいな」

「は、はいっ!借金してでもリン様にお金を使います!」

「いや、そこまでしなくていいんだけど……」


 そんな感じで、駆け寄って来た女性スタッフに困りながらも対応する。


「むぅ」


 そのため、その様子を不機嫌そうに見てた真奈美に、俺は一切気づかなかった。




 集まって来た女性スタッフたちに困りながらも対応し、数分かけて対応を終える。


「リン様の活躍、とても楽しみしてます!頑張ってください!」

「私も応援します!頑張ってください!」

「ありがとうございます。みなさんの声援が力になりますので、これからも応援よろしくお願いします」


 みんなの言葉を聞いて嬉しくなった俺は、女性スタッフたちに笑顔で伝える。


「か、かっこいい……」

「この笑顔だけで元気が出ます……」

「そ、その笑顔、反則ですわ……」


 そんな俺のことを、頬を染めてウットリした目で見つめる女性スタッフたち。


「むぅ!凛くん!用事が終わったなら私と楽屋に戻るよ!」


 そう言って頬を膨らませながら俺の手を握り歩き出す。


「あ、ちょっと、真奈美!」


 そんな真奈美に手を引かれた俺は、真奈美と一緒に収録現場を出て楽屋に向かう。

 そして一言も話さない真奈美と共に、真奈美の楽屋へ入る。

 その際、“バタンっ!”と勢いよく扉を閉じたことから、不機嫌であることが伝わってくる。


「ま、真奈美?」

「――もんっ」

「ん?」

「凛くんのことを1番応援してるのは私だもんっ!」


 そう言って可愛く拗ねる。

 その姿を見て、俺は口元を手で隠す。


(なにこれ、可愛いかよ……)


 その可愛らしい姿に俺は口角が上がってしまい、口元を隠すが、その態度が気に食わなかったようで…


「凛くん!聞いてる!?私が凛くんの1番のファンだからね!」


 と、再び可愛く怒り始める。


「あぁ。もちろん分かってるよ。だから、1番のファンには何かファンサービスをしなきゃいけないな」


 機嫌が悪いのは、先ほどの女性たちのようなサービスを受けることができなかったからと思い、俺は真奈美に提案する。


「何か俺にしてほしいことはあるか?」

「ふえっ!そ、そんなつもりで言ったわけじゃないけど……」


 と言いつつも真剣に悩み始める。

 しばらく真奈美の発言を待っていると…


「そ、それなら凛くんに頭を撫でてほしいなーって。ど、どうかな?」


 真奈美が俺の顔を覗き込むように、上目遣いでお願いする。


「っ!」


 その可愛いさに“トクンっ!”と俺の心臓が跳ねる。


「あ、あぁ。もちろんだ」


 俺は真奈美の可愛さに抗うことができず、真奈美の頭に手を置く。

 そして綺麗な水色の髪を優しく撫でる。


「えへへ〜」


 俺のナデナデが気持ちいいのか、真奈美が嬉しそうに目を細める。

 そんな真奈美を眺めつつ、俺は真奈美の頭を撫で続けた。

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― 新着の感想 ―
 もういっそ、収録の時に「お帰り、凜」「ただいま、真奈美」とか言いながらハグしちゃったりして……
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