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嵐の前の静けさ

 サイン会が終わり、『生徒会長は告らせたい』の撮影も終わりが近づいたある日のこと。

 社長から呼び出された俺は事務所へ向かい、社長から話を聞いていた。


「え、バラエティー番組の出演依頼ですか?」

「あぁ。凛くんにオファーが来た。出演番組は『日本の果てまでイッテ来い』だ」

「えぇー!『イッテ来い』からのオファーですか!?」


 『日本の果てまでイッテ来い』は番組タイトル通り、日本各地でロケーションを行う番組だ。


「今回、凛くんにはその番組の中で行う新コーナーの出演を依頼された」

「新コーナーですか?」

「あぁ。夏目凛の初めてのおつかいだ」

「………へ?」


(俺、幼稚園児と思われてるのか?)


「そんな顔するな。タイトル名なんて気にする必要ないからな」

「いや、このタイトルだと俺がおつかいしたことのない人になってますから」


 そうツッコミを入れるが「私に不満を言われても変更なんてできないぞ」と言われ、タイトル名にツッコむのを諦める。


「それで、どんなコーナーですか?」

「あぁ。番組側が用意したミッションを凛くんが街の人たちに聴き込みをしながら達成するコーナーだ」


 どうやら『〜という地名で〜を買え』などのミッションを提示され、スマホを一切使わずに街の人たちからの聴き込みだけで達成するコーナーらしい。


「これ、なかなか難易度高くないですか?」

「そうだな。例えば『別府市にある7ヶ所の地獄を全てめぐれ』というミッションを提示された時、まず別府が何県にあるか聞き込みをしなければならない」

「……普通に別府市がどこにあるか知らないんですが」

「だろ?それに加え、7ヶ所も地獄をめぐらないといけない。普通に難しいぞ。まぁ、今のは一例だけどな」

「つまり舐めてかかると一生達成できないミッションということになりますね」

「あぁ。街ゆく人たちに別府市の場所を聞くが、誰も知らないという可能性もある」

「……なかなかハードなコーナーですね」


 出演依頼をされたコーナーの概要は理解できた。


「ちなみに達成できず延々と聴き込みをするという可能性もあると思うのですが……」

「あ、それなら大丈夫だ。撮影中、凛くんに付き添う女の子がいるからな。行き詰まったらその人に聞くことになってる」

「そうなんですね。それなら安心です。ちなみに俺に付き添う女の子って誰なんですか?」

「それなんだが……なかなか大変なことが起きそうだぞ」


 俺の質問に対し、何故か憐れんだ表情をされる。


「そのコーナーでは凛くんに付き添う女の子を夏目ガールと呼ぶことになるんだが、これから夏目ガールを選ぶ選考会を行うらしい」

「へー、選考会ですか。候補は誰なんですか?」

「今のところ候補は4人。ドラマで共演してる愛甲さんに立花さん。以前、凛くんとの写真集を発売した雨宮さんにスキャンダル擬きが発生した小鳥遊さんだ」

「見事に全員知り合いですね」

「初めてのコーナーということで話題性を重視したらしい。もちろんルックスも重視されたらしいが、4人とも美少女だから問題なく選ばれた」


 現在ドラマが放送中ということで俺と共演している真奈美と立花さんが出演する理由は理解できる。

 それに俺との写真集が馬鹿みたいに売れたことから桃ちゃんが選ばれることも理解でき、数ヶ月前に美奈とのスキャンダルで世間を騒がせたことから美奈が選ばれたことも理解できる。


「だからこの4人が夏目ガールの候補に選ばれたらしい。ちなみに4人とも出演OKの了承は得ている。あとは凛くん次第だ。どうする?このオファーを受けるか?」

「そうですね。知ってる人と旅ができるのなら面白そうですので、そのオファー受けます!」

「分かった。そう先方には伝えておこう」


 そう言って社長が電話をかける。

 その間、俺の隣にいた矢上さんが話しかけてくる。


「すごいメンバーになりましたね。これは波乱の選考会になりそうですよ」

「……?そうですか?楽しい選考会になると思いますが」

「……はぁ」

「あれ?ここってため息の場面なんですか?」

「……そうなるといいですね」


 なぜか遠い目をしながら矢上さんが言う。

 そのタイミングで電話が終了した社長から声がかかる。


「あ、そうだ。夏目ガールの候補に加えたい女の子はいるか?」

「……?真奈美たち4人以外で誰か希望する人はいるかってことですか?」

「あぁ。もう1人選ぶ予定らしいが良い人がいないようでな。凛くんに希望する子がいるか聞いてくれって言われたんだ」

「希望する子ですか……」


 そう聞かれ俺は考える。

 すると真奈美たち以外で1人の女の子が頭に浮かぶ。


「あ、それなら……」


 俺は希望する女の子を社長に告げ、社長室を後にする。


「近々出演するコーナーの説明を兼ねて選考会を行うって言ってたな。すごく楽しみだ」


 そんなことを思いながら気分良く廊下を歩いた。




 この選考会が人生で最も大変な時間になることを今の俺は知らなかった。


【6章完結】

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