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復帰後初仕事 4

「もちろんだよ!だって私は凛くんのファンだからね!」


 真奈美が俺の右手を両手で握った状態で満面の笑みを浮かべる。

 そんな真奈美の笑顔に見惚れていると…


「お嬢様、あとは押し倒すだけでゴールインでございます」

「「わっ!」」


 突然、声が聞こえたため、俺たちは飛び跳ねるように距離を取る。


「ちっ、ヘタレめ」

「今、なんて言った!?」

「ヘタレですね、と言っただけです」

「そんなこと言わなくていいの!」


 メイド服を着た女性の言葉に、真奈美が顔を赤くして騒ぎ出す。

 しかし、メイド服を着た女性は真奈美の発言をスルーして俺に話しかける。


「おはよう御座います。私、真奈美お嬢様の専属メイドを務めておりますシャロンと申します。末長く、よろしくお願いします」


 ハーフだと思われる顔立ちをした20代後半くらいの綺麗な女性が、丁寧に頭を下げる。


「あ、はい。よろしくお願いします」


 『末長く』の部分を強調されたが、スルーして俺も頭を下げる。


「ちょっとシャロン!私のことを無視しないで!」

「そんなことありません。凛様への挨拶が終わった後に対応する予定でしたから」

「後回しにしてる時点で無視してるのと同じだよ!」


 真奈美が頬を膨らませてシャロンさんに詰め寄る。

 そんな真奈美をシャロンさんは再度無視して俺に話しかける。


「どうですか、凛様。頬を膨らませて怒ってるお嬢様、可愛くありませんか?」

「そ、そうですね。とても可愛いと思います」

「かっ、可愛い……」


 すると、何故か膨らませていた頬を辞めて、両手で頬を触りだす真奈美。


「………」


(手玉に取ってるなぁ)


「さて、怒りが落ち着いたお嬢様の対応は私に任せて、凛様は収録の準備に取り掛かってください。もうすぐで収録が始まりますので」


 そう言われて時計を見ると、いつの間にか収録時間が迫っていた。


「わっ、ほんとだ!じゃ、また後でな!真奈美!」


 俺の声が届いたのかは分からないが、頬を抑えてクネクネしてる真奈美はシャロンさんに任せ、俺は楽屋を出た。




 俺は急いで自分の楽屋へ戻る。

 そして矢上さんと本日の収録の最終確認を行う。


「今日は復帰後初仕事です!頑張ってください!」

「はいっ!」


 俺は元気に応え、楽屋を出る。

 そして、スタッフへ挨拶をしつつ用意された席に座る。


「凛くん!今日はよろしくね!」

「あぁ。迷惑かけるとは思うが、よろしく頼む」


 俺は隣に座っている真奈美へ伝え、司会を務める下田さんを見る。

 この場にはゲストである俺と真奈美、そして司会の下田さんしかおらず、今回は3人でひたすら話すだけの収録となっている。


「さぁ、始まりました!『おっしゃれ~イズム』のお時間です!」


 戸坂さんから収録開始の合図を受け取り、下田さんが話し出す。


「ではさっそく、ゲストの方々を紹介します!」


 ゲストは俺と真奈美の2人で、下田さんが俺たちを丁寧に紹介する。


「4月から放送中のドラマ『逃げることは恥ですが役に立ちます』でヒロイン役に抜擢され、現在大活躍中の女優、愛甲真奈美さんです!」

「はーい!よろしくお願いしまーす!」


 真奈美が挨拶すると、スタッフたちから拍手が沸き起こる。


「そしてもう1人ご紹介します。先日発売された『読者モデル』で表紙を飾り、発売初日で売り切れ続出という誰も成し遂げたことのない偉業を達成した立役者、夏目凛さんにお越しいただいております!」

「よろしくお願いします!」


 俺も真奈美に倣って挨拶をすると、スタッフたちから拍手をもらう。


「では、さっそくトークに移ろうと思いますが、なんとここで夏目さんから重大発表があります!」


 との前振りから、下田さんが俺に話を振る。


「じゅ、重大発表と前置きされると言いにくくはなりますが、皆さまに俺から一言お伝えしたいことがあります」


 俺が夏目レンであることを知っているのは監督と下田さん、そして一部のスタッフのみ。

 そのためスタッフのほとんどが、ワクワクしながら俺からの重大発表を待っている。


 その様子を確認し、俺は一拍置いた後、高らかに言う。


「実は俺、6年前まで子役として芸能界で活動してました!」

「えっ!そうなんですか!?」


 全てを知ってる下田さんがオーバーリアクションで場を盛り上げる。

 スタッフも驚いている人が多く、ここまで声は聞こえないが、コソコソと話し出す人までいる。


「子役時代の芸名を聞いてもいいですか!?」

「もちろんです!俺、昔は夏目レンって芸名で活動してました!」

「「「「えぇぇぇぇっ!!」」」」


 俺の発言を聞いて、スタッフたちの驚きの声が聞こえてくる。


「カットーっ!」


 入ってはいけない声がスタジオ内に響き渡り、戸坂さんが撮影を止める。


「君たち、驚きすぎだよ」

「いやいや!ディレクター!夏目レンですよ!そんなビッグネームが出て来たら驚きますよ!」

「夏目レンって小学5年生にして日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を取った人ですよ!そんな名前が出てくるとか思いませんて!」

「ってことは、夏目レンが夏目凛に改名して芸能界に復帰したんですか!?」


 そんなことを言いながら、スタッフたちが戸坂さんに問い詰める。


「皆さん驚きすぎですよ。そんなに驚くことですか?」

「いや、俺と戸坂さんも君が夏目レンって愛甲さんから聞いた時は、あんな反応してたからな」


 そんなことを下田さんが呟いていた。

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