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明影  作者: kazoo
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(35)

数日後、オフィスで仕事を終えた佐藤は、中村とともにいつものカフェで一息ついていた。二人は最近の仕事のことや、これからのプロジェクトについて話しながらリラックスしていた。


「ねぇ、佐藤さん」と中村が話し出した。「この前のシンクラ社の案件、うちが勝てて本当に良かったわね。リーさんもプレゼンに出てきたら、もう少し違ったかもしれないけど、北川さんだけだったから…でも、彼女、本当にできる人ね。ああいう人みたいになりたいなって思うの。」


中村の言葉に、佐藤は少し考え込んだ。リーのことを気にかけているのは自分だけではないことを感じたが、彼女の能力や存在感を賞賛する中村の言葉に、嫉妬や不安は感じなかった。ただ、自分が彼女と同じ舞台で戦うべきなのか、そうではないのか、考えずにはいられなかった。


「実は、北川さんからシンクラに来ないかって誘われたんだ」と、佐藤は少しためらいながらも打ち明けた。


「えっ、本当に?」中村は驚いて目を見開いた。「それってすごいチャンスじゃない!シンクラは勢いのある会社だし、キャリアアップにもなるんじゃない?」


佐藤は苦笑いを浮かべながら首を振った。「確かにそうかもしれないけど、僕は今の会社に義理を感じているし、ここでの仕事に誇りを持っている。だから転職は考えていないんだ。」


中村は佐藤の言葉を聞いて、少し安心した様子で頷いた。「佐藤さんらしいね。その真面目さが私も好きなんだ。」


翌日、オフィスでは予期しないニュースが流れた。佐藤が信頼を寄せていた上司の田中が、シンクラ社にヘッドハンティングされることが知らされたのだ。田中は役員待遇でかなりの報酬を約束されているという噂も広がり、社内はざわついていた。田中の決断に驚きながらも、佐藤は心の中で、会社を離れる理由が田中にとって何だったのかを考えていた。


数日後の午後、佐藤のメールボックスに一通のメールが届いた。送信者はリーだった。簡潔に、「お食事をしませんか?」と書かれており、指定されたレストランの名前と時間が記されていた。佐藤は一瞬ためらったが、特に断る理由も思いつかず、指定されたレストランに行くことにした。


レストランは落ち着いた雰囲気のイタリアンで、テーブルにはリーが一人で座っていた。しかし、佐藤が近づくと、もう一人の男性が席から立ち上がった。リーの会社の社長だった。


「ようこそ、佐藤さん」と社長は笑顔で手を差し出した。「お会いできて光栄です。」


予想外の展開に佐藤は驚きを隠せなかったが、礼儀正しく挨拶を返した。食事の席で、社長はシンクラ社のビジョンや成長計画について熱心に語り、続けて佐藤への転職の誘いを持ちかけた。リーも横で微笑みながら、社長の言葉を補足するように話していた。


「佐藤さんのような人材を迎え入れることができれば、さらに会社を発展させることができると確信しています」と、社長は言葉に力を込めた。


佐藤は冷静に聞きながらも、心の中ではすでに答えを出していた。丁寧に礼を述べながら、「今の会社での仕事に誇りを持っており、現時点での転職は考えていません」と断りを入れた。


社長は一瞬残念そうな表情を見せたが、すぐに微笑みを浮かべ、「そうですか。佐藤さんの決断を尊重します。もし考えが変わることがあれば、いつでも連絡してください」と言った。


食事を終え、レストランの外に出ると、佐藤はほっと息をついた。しかし、すぐにリーが佐藤の隣に立ち、笑顔で言った。


「この後、もう少し飲みに行かない?話したいこともあるし。」


佐藤は一瞬考えたが、リーの目を見て頷いた。何が話されるのか、興味もあった。再びバーに向かい、二人は静かな空間で夜を過ごすこととなった。

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