(32)
付き合い始めてから数ヶ月が経ち、佐藤と中村の関係は社内でも公然のものとなっていた。二人が一緒に帰る姿も見慣れたもので、同僚たちからも温かく見守られていた。
とはいえ、同じ会社で働くことの難しさもある。仕事に対する考え方の違いから、時折小さな喧嘩が起こることもあった。しかし、互いに大人である二人は、そのたびに冷静に話し合い、譲り合いながら関係を保っていた。お互いの存在が、日々の支えとなり、安心感を与えていた。
ある日、佐藤の部屋でくつろいでいる中村が、ふと思い出したように話を切り出した。「結局、うちの会社からシンクラ社へは、7人も引き抜かれたらしいわ」と、軽くため息をつきながら言う。
佐藤は頷きながら、「そうか。かなりの数だな」と答える。激しい引き抜きが続いた時期に比べれば、最近はやや落ち着きを見せていたが、それでもその影響は社内に残っていた。しかし、少しずつ会社にも新しい風が吹き込んでおり、新入社員たちが配属されていた。
そんな日々の中、ある日突然、新規案件の引き合いが舞い込んできた。佐藤がその報告を受け、詳細を確認していると、かつて取引のあった企業名が目に飛び込んできた。シンクラ社とのコンペだったのだ。
佐藤は、その報告書を静かに見つめながら、思いを巡らせる。これまで自社に影響を与えてきたシンクラ社との再びの対峙。内心、少なからず緊張を覚えるが、それを表に出さず、平静を保つ。
中村が資料を覗き込みながら、元気よく言う。「シンクラ社か。今度こそ巻き返したいわね。色々あったけど、私たちだって負けてばかりじゃいられないし。」彼女の目には、挑戦に燃える意欲が伺えた。
佐藤は中村の言葉に励まされるように、微笑んで答えた。「そうだな。今度は俺たちが見せてやる番だ。」
中村は意気揚々とした様子で、「うん、絶対に成功させましょう!」と応じる。彼女のその明るさに、佐藤もつられて前向きな気持ちを取り戻した。過去のことに縛られず、目の前の仕事に集中し、結果を出すことが大事だと心に決める。
再び訪れたシンクラ社との競争の舞台で、佐藤と中村は力を合わせて挑む準備を進めていった。




