(31)
年末の寒さが増す中、街は年の瀬の慌ただしさに包まれていた。会社の同僚たちとの忘年会は大いに盛り上がり、賑やかな笑い声と乾杯の音が店内に響いていた。宴会が終わり、年末の挨拶を交わしながら参加者たちがそれぞれの帰路につく。佐藤は、不意に隣にいた中村に気づいた。中村はどこか落ち着かない様子で、周りの様子を気にしながら、「もう一軒いいですか」と小さく声をかけた。
二人はバーに移動し、静かにカウンターに並んで座っていた。周囲の喧騒とは対照的に、二人の間には沈黙が続いていた。しばらくして、中村が意を決したように口を開いた。「私・・・。告白しました。」短く、はっきりとしたその言葉の後、再び沈黙が訪れた。
佐藤はしばらく考え込んだ末に「ああ」とだけ返事をした。言葉を続けることもなく、再び二人の間に静寂が流れた。中村はその場でじっと佐藤を見つめ、やがて意を決して問いかけた。「佐藤さんは、私のことどう思っていますか?」
佐藤はその質問に答えようとしたが、言葉がうまく出てこない。無言の時間がさらに続き、中村は佐藤の次の言葉を待っていた。深く息をつき、佐藤は自分の胸の内を整理しながらゆっくりと口を開いた。
「山は楽しかったな。」と佐藤は遠くを見るような目をしながら言った。「中村さんと一緒にいると、気を遣わないで話せるんだ。いや、気兼ねなく話ができて、なんだか落ち着く。この前の告白のことだけど、正直に言うと、僕は同僚だと思っていたから、あまりそういうことを考えたことがなかったんだ。」
一息ついて、佐藤は続けた。「僕は、あまり女性と付き合った経験がないから、どうしていいのか正直分からなかったんだ。それでなんとなくごまかしていた。でも、一緒にいると安心するし、仕事でも頼りにしている。もし僕でよければ…。」
その言葉を聞いた中村の顔がぱっと明るくなった。彼女は佐藤の言葉に耳を傾けながら、目に涙を浮かべ、心から嬉しそうに微笑んだ。「本当に?」と小さな声で確認するように聞く。
佐藤は少し照れくさそうに頷きながら、「うん」と応えた。二人はそのまま、いつもとは少し違う特別な夜を過ごした。




