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翌日の昼。
佐藤は、杉本との約束の時間である13時半に合わせて、指定されたイタリアンレストランに向かった。その店は少し高級感があり、普段のランチタイムとは異なる特別な雰囲気が漂っていた。
店に入ると、すでにスーツ姿の杉本が待っていた。佐藤を見つけると、杉本はにこやかに手を振り、席へと招いた。
「お待たせしました、杉本さん。」佐藤は笑顔で挨拶した。
「いえいえ、私が少し早く着いてしまっただけですから。」杉本も微笑んで返した。
席に着くと、二人は山の話題で盛り上がった。杉本は、次は富山の方の山に行く予定だと楽しげに話した。
「富山の山々も美しいですよね。」佐藤は興味深げに耳を傾けた。「ただ、最近は仕事が忙しくて、あまり休みが取れないので、次に行けるのは来年になるかもしれません。」
「そうですか。」杉本は頷きながら、「でも、山は逃げませんからね。お互い、また時間ができたらぜひ一緒に登りましょう。」
食事は美味しく、会話も弾み、楽しいひとときがあっという間に過ぎていった。最後に杉本が、「また機会があれば、ぜひお食事でもご一緒させてください。」と佐藤を誘った。
「もちろんです。今日はありがとうございました。」佐藤も笑顔で答えた。
別れ際に、二人は名刺を交換した。佐藤が名刺を手に取ると、そこには上場している大企業の役員という肩書きが書かれていた。思わず佐藤は少し驚きつつも、そのことを表に出さずに、「山では本当にお世話になりました。」と杉本が改めて感謝の言葉を述べた。
「こちらこそ、お話できて楽しかったです。」佐藤は、少し恐縮しながらも、明るく答えた。「では、またぜひ。」
佐藤はレストランを出て、杉本との会話を思い返しながら、自分の職場へと戻っていった。




