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明影  作者: kazoo
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(23)

久しぶりに休みが取れた佐藤は、長野の山に足を運んでいた。登山が趣味の彼にとって、この時間は心のリセットのようなものだった。最近の忙しさから解放され、山の澄んだ空気を吸い込むたびに、心の奥底が少しずつ軽くなる気がした。しかし、その一方で、シンクラ社の影響で仕事が減ったことも、この休みが取れた理由の一つだと考えると、皮肉な気持ちも湧いてきた。


登山道を進んでいると、急に空が曇り始め、しとしとと雨が降り出した。急な天候の変化に備えて、佐藤は近くの山小屋に急ぎ、屋根の下へと逃げ込んだ。山小屋は小さな木造で、古びたが、温かみのある空間だった。


中に入ると、すでに数人の登山者が雨宿りをしていた。その中には、年配の夫婦が一組、笑顔でお茶を飲んでいるのが目に入った。佐藤は少し離れた場所に腰を下ろし、リュックサックから水筒を取り出して一息つく。


「お若いのに、こんな天気でも登山ですか?」と、隣の夫が声をかけてきた。温かい微笑みが印象的だった。


「ええ、たまの休みにこうして山に来るのが好きなんです。でも、今日は少し運が悪かったみたいで」と佐藤は笑顔を返した。


「山の天気は変わりやすいですからね。でも、こうして山小屋で休むのもまた一興ですよ」と妻が続けた。


何気ない会話が続く中で、佐藤の心は少しずつほぐれていった。日常の忙しさや、シンクラ社との競争で感じていたプレッシャーが、一時的にでも遠のいたような気がした。雨音が優しく小屋の中に響き、外の世界から切り離されたこの瞬間が、佐藤にはかけがえのないものに思えた。

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