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数日後の午後、クレスト・テクノロジーズのオフィスにて。佐藤はデスクに向かい、次のプレゼンに向けた資料の整理をしていた。静かなオフィスに、突如として鳴り響いたのは、田中部長の携帯電話の音だった。田中はその場で電話に出ると、表情が一変した。深刻そうな顔で電話口の相手の言葉を聞きながら、時折短く返事をする。
電話を切った田中は、すぐに佐藤の席へと足を運んだ。「佐藤君、ちょっと役員室に来てくれ。」その一言で、佐藤の胸に不安が走った。田中の声には、いつもの落ち着きが感じられなかったのだ。
役員室に入ると、数名の役員がすでに揃っていた。田中部長は佐藤とともに席につくと、ゆっくりと状況を説明し始めた。
「実は、先日のプレゼンの結果が、先ほどクライアントから連絡があったんだ。」
佐藤は、田中の言葉をじっと聞いた。心の中では、成功の報告を期待していた。しかし、田中の表情がそれを裏切っていることを感じ取るのに時間はかからなかった。
「残念ながら、先日の案件は他社に決まったそうだ。」
その言葉に、佐藤の胸は一気に冷たくなった。驚きと失望が入り混じり、口を開くこともできなかった。
「佐藤君、君のプレゼンは本当に素晴らしかった。クライアント側も非常に高く評価していた。しかし、最終的に選ばれたのは別の会社の提案だった。選ばれた理由は、その提案が他社よりも安価でありながら、効果が非常に大きいとクライアントが判断したためだそうだ。」
佐藤は深呼吸し、冷静さを取り戻そうと努めた。「どこの会社が採用されたんですか?」
田中は少しためらった後、答えた。「選ばれたのは、シンクラ社だ。最近、勢いのある新興企業で、大規模な案件を次々に獲得していると噂されている。彼らの提案は、他の会社がどんなに頑張っても太刀打ちできないほど納得のいく内容だったらしい。」
シンクラ社。佐藤も耳にしたことがある。その会社は、急速に成長し、市場に強い影響力を持ち始めているという話だった。だが、これほどの大きな案件で対峙することになるとは思ってもいなかった。
佐藤は、田中部長と役員室を後にした。オフィスに戻る道すがら、胸の中にわだかまる感情を噛み締めていた。




