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プレゼンの準備は着々と進んでいた。佐藤は毎日のように資料を読み込み、何度もシミュレーションを繰り返した。会議室のホワイトボードには、彼の考えが次々と書き込まれ、図解され、時折消されては新しいアイデアに置き換えられていた。
中村も、そんな佐藤の奮闘ぶりを目にし、度々声を掛けて応援してくれていた。「佐藤さん、今度のプレゼン、きっと成功しますよ。あんなに努力しているんですから。」中村の優しい言葉に、佐藤は感謝の気持ちを抱きつつも、さらなる決意を固めるのだった。
毎日、終電間際になるまで会社に残る日々が続いた。しかし、佐藤はその忙しさをむしろ心地よく感じていた。会社の未来を左右する大きな案件を任されたことで、自然とやる気がみなぎっていた。疲れを感じる暇もなく、充実感が彼を支えていた。
その夜も、オフィスの灯りが消える中、佐藤は一人資料をまとめていた。周りの同僚たちは皆、先に帰っていき、静寂がオフィスを包んでいた。パソコンのモニターだけが薄暗い光を放ち、キーボードを叩く音が静かな部屋に響いていた。
ふと気がつくと、部屋の隅で同じように仕事をしている中村の姿が目に入った。彼女もまた、遅くまで残って仕事をしているようだった。佐藤は中村に視線を送ると、彼女もこちらに気づき、微笑んで返してきた。お互いの存在が励みになり、深夜のオフィスでの孤独感を和らげていた。
時計の針が終電の時間を知らせると、佐藤はデスクの上の資料を整理し始めた。中村も同じタイミングで仕事を切り上げる。慌ただしく荷物をまとめ、二人は会社を出ることにした。
夜風が肌に心地よく、静かな通りを歩きながら、佐藤と中村は並んで駅へと向かった。オフィスの喧騒から解放された瞬間の静寂が、二人の間に漂っていた。
「いよいよ明後日、プレゼンですね。」中村が少し緊張した様子で口を開いた。「佐藤さんなら、絶対にうまくいきますよ。がんばってくださいね。」
佐藤はその言葉に微笑んで答えた。「ありがとう、中村さん。あなたのサポートもあって、ここまで来れたよ。最後まで全力を尽くすつもりだ。」
中村の励ましの言葉は、佐藤の心をさらに奮い立たせた。プレゼンが成功すれば、クレスト・テクノロジーズの未来が開けるだけでなく、自分自身のキャリアにも大きな一歩となる。その責任感と期待が、彼の中で燃え上がり、決して揺るがない自信となっていく。
駅に着くと、佐藤と中村はそれぞれの方向へと別れた。佐藤は一人ホームで電車を待ちながら、中村の励ましの言葉を思い出していた。彼女の笑顔が脳裏に浮かび、その笑顔が、次のステップへと彼を駆り立てていた。




