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翌日、佐藤は早朝から緊張感を胸に秘め、会議室に向かっていた。普段よりも身なりを整え、背筋を伸ばして廊下を歩く。社内の重要会議の一つであり、部長を含む役員たちが集まる場だった。クレスト・テクノロジーズの未来を左右する大きな案件が議題に上がる。そんな重要な場に呼ばれたことが、佐藤にとって誇りでもあり、同時に大きなプレッシャーでもあった。
会議室に入ると、田中部長がすでに席についていた。彼の表情はいつものように冷静で、自信に満ちていた。部長は佐藤に軽く頷き、席を促す。佐藤が腰を下ろすと、周りには会社の重役たちが並び、厳粛な空気が漂っているのを感じた。
会議が始まると、役員の一人が口火を切った。「今回の案件は、社運を掛けた非常に重要なものです。大手メーカー数社とのコンペに勝つためには、我々の全リソースを投じる覚悟で臨む必要があります。」その言葉に、佐藤は身が引き締まる思いがした。
プロジェクトの詳細が次々と説明される。今回の案件は、大手家電メーカーとの新しいAI技術を用いた製品開発に関するものだった。クレスト・テクノロジーズが開発する最新のAIアルゴリズムを基盤とし、これを製品に組み込むことで、消費者の生活を劇的に変える可能性があると期待されていた。
「我々が提示する技術は、市場において競合他社と差別化できる要素です。これが成功すれば、クレスト・テクノロジーズの名が一気に広がることになります。」別の役員が力強く言い切った。
田中部長が進行役として説明を続ける。「この案件に関しては、佐藤君と私が中心となり、プレゼンを進めるように考えています。君のこれまでの実績を見れば、適任だと判断した。」佐藤は、部長の言葉に小さくうなずいた。期待と重責が彼の肩にのしかかるのを感じた。
会議が進む中、佐藤は役員たちの鋭い目線を感じながら、自分の考えをまとめていた。プロジェクトの成功が、クレスト・テクノロジーズの未来を左右することは明らかであり、そのためには誰よりも自身が結果を出す必要があると強く思った。
会議が一段落すると、田中部長が佐藤に向き直った。「佐藤君、君の手腕にかかっていると言っても過言ではない。今回のプレゼンで成果を出せば、君の昇進も現実味を帯びてくるだろう。私も期待しているからな。」
「ありがとうございます、部長。全力を尽くします。」佐藤は静かに返事をしたが、心の中ではその言葉が重く響いた。これまでの経験が、今こそ試される時が来たのだと感じた。
会議が終わり、部屋を出るとき、佐藤は深呼吸をして気持ちを整えた。これから待ち受ける挑戦に向けて、心の準備をする必要があった。彼の頭の中には、成功への道筋が次々と浮かんでは消え、新たなアイデアが形を成していた。
その晩、佐藤は帰宅後、再びウイスキーのグラスを手に、プロジェクトの資料を開いた。新たな責任と期待に応えるべく、彼は一つ一つのデータを丹念に見直し、最善の戦略を練ることに集中した。夜は更けていき、静かな部屋の中で、彼の決意はますます固まっていった。




