HUMANスレイヤー! [人間を殺す者]
「キノ!キノ!」
戦気に満ちたキノコが走る、足の動きの遅いキノコ達が一丸となって私達に続く。
丸い目が鋭くゴブリンを睨み、両腕を拡げながら敵陣に突っ込んで行く。
キノコの魔物が群れとなり吠え、奇声を上げてゴブリンに襲いかかる。
その姿は恐れを知らずに戦う狂戦士。
「キノコ達!進みなさい!」ユズキは立ち塞がるゴブリンにショートソードを振り抜き、喉を斬り裂く。
(腕力が上がってる、それに握力も)レベルアップした私の身体は軽く、意思通りに動く。
今まで水中にいたかのようです、これなら・・・
「身体が馴染む・・・」そんな感じがします。
どれだけ全力を出しても息が切れない。
感覚が鋭く冴え、視界がクリアで周囲の動きが目で追わ無くても解る。
(全部の動きが理解できる、、)
「次はそこか!」倒れたゴブリンの後ろにもゴブリン、その腹をショートソードで貫き肝臓を引き裂く。
「サイコーにハイ!ってヤツか!?」ひゃっはー!!!
走り、目の前に現れたゴブリンの頭に手斧を振り下ろす。
『ぎしゃっ!』頭を割ってつぶれた頭を「邪魔だ!」蹴り飛ばす。
回りはゴブリン、殺して良いゴブリンだけ。
スイカ畑でスイカ割り、その数100だ、やり放題だ!
「赤いゴブリン汁で畑を染めてやる!」
「アッだめ!」悲鳴、一瞬の隙にマリエールを押し倒すゴブリンが2匹!
「どきなさい!」身体の上にいる小鬼を蹴り上げ、腕を押えていた小鬼に踵落とし!
「油断!・・・」油断するな、と言うのは違う。
(彼女には実戦経験が足らない事は知っていたはず、油断していたのはオレの方)
見えていたのは自分の周囲だけでした。
「大丈夫ですか?ケガは?」
ゴブリンの汚れた剣や槍の先には毒が塗ってある、もし傷が深ければ直ぐに対処しないと。
「大丈夫でず」「顔色は良くないですが、ケガは無さそうですね」
恐怖で血が下がった顔のマリエに、私は微笑みながら手を差し伸べる。
「いくら数がいても所詮はゴブリンですからね、正義の戦士キュアキュアの敵じゃないです。
一緒に戦いましょうキュアレイピア」
「・・・ハイッ!」
私の手を取る彼女の指先に力が戻る、まだ大丈夫そうですね。
・・・・・・
力を取り戻した彼女はその剣で道を切り開く。
素早くゴブリンの頭を突き刺し、バックステップで剣を抜きながら、素早いフロントステップで正面の敵を刺し貫く。
一対一の戦いに適した武器はその反面、乱戦に弱い。
だがその背後と側面をカバーする者が居れば、その突撃を躱せるゴブリンはいない。
単純な突進力なら彼女の方が上、なら自分の役目は。
(その背中を守る事!)
数で勝るゴブリンが2匹同時、3匹同時に飛び掛かる!
「正面はお願いします!」
「ハイ!」素早い返事、目の前のゴブリンの眼球にレイピアが突き刺さり、切っ先が頭を抜けた。
レイピアが抜ける前に左右から襲いかかる二匹のゴブリン。
「させません!」手斧を投げ付け1匹始末。
そのまま突っ込み、斧を持っていた手でゴブリンの頭をつかむ。
[電撃]!シナプス破壊、脳神経をブッ壊す!
(電気を飛ばすより、直接流したほうが!早い!)
効果も高く魔力消費も少ない(多分)気がします。
泡立つ涙を流し目玉が裏返るゴブリン、死んだか?
ゴブリンの死体から棍棒を奪い、次ぎのヤツを。
「キノコ達も武器を拾って戦いなさい!1っ匹でも多く殺すのです」
武器を取れ!敵の武器で殴りつけろ!
訓練された部隊であれば、敵が大勢でもお互いをフォローしながら部隊を継続させられる。
だがユズキ達は召還したキノコ達と令嬢、10倍以上の敵を前に徐々に囲まれ、圧され始めていた。
(1対1なら負ける訳が無いのに!)戦意高揚が持たない、数が多すぎる!
ゴブリンの中に混じる筋肉質のホブゴブリン、そいつが戦うキノコ達を押え、その背後からゴブリンが槍で突き刺す!
「て、テメェ!」棍棒を投擲!
槍を持ったゴブリンに直撃したが、ボブゴブリンの持つ斧がキノコを割った。
「きっ!?・・キノ!!」
一瞬こっちを見たキノコは、最後の力で頭を割った斧を掴み、そして自爆した!
ボワッ 爆発し胞子を周囲に撒き散らして絶命するキノコ!
「・・・あいつ、笑いやがった、なにがお先にですか!」バカ!バカですよアナタは!
キノコの撒き散らした胞子は[煙幕][困惑][麻痺][毒]を敵に与え、硬直しているホブゴブリンとゴブリンが苦しみ藻掻く。
その霧胞子の中で、仲間の仇をとるように暴れるキノコが次々と敵を殺す。
胞子の霧を盾に戦うキノコと私達、ですが敵の数は私達を押し潰すようにまだ増えている。
(・・・嫌な感じです)
「キノコ達!1度霧から離れなさい!」
私は声を上げたが、狂戦士化したキノコ達は敵を見つけてはゴブリンに襲い掛かる。
ガキッ!ぎぎっ!
胞子の霧の隙間にソイツはいた。
鎧を着込み、兜を深く被った戦士の盾が攻撃を防ぎ、右手の剣がキノコを襲う!
(アレもゴブリン?!ゴブリン戦士!?)
[重装兵]分厚い鎧と盾で身を守り、強力な武器を持つゴブリンは明らかに他のゴブリンとは違った。
首を守るように播かれた布は兜の中の口を守り、毒の胞子から呼吸を守っている。
ソイツはまるで人間が使う毒や煙を知っていて、先走るゴブリンを戦わせ、こちらの手の内を探っていたように、敵を弱らせ観察していたように現われた。
(『ソイツは!そのゴブリンは人間殺しだ!』)
HUMANスレイヤー!
人間に強い怨みを持ち、人間を殺す為に鍛え成長したゴブリン、、、ってなに?
ゴブリンは愚かだがバカでは無い。
群れを襲われ、仲間を殺され続けたゴブリンは、ゴブリンを殺す者を警戒し、その戦いを学び人間を狩る者となったのだ。
そのゴブリンの名は HUMANスレイヤー!




