夢中夢、続き。
『アレだねぇキミは、キミはそこにいるのが何か知ってるのかい?』
(ようやく綺麗な猫が近づいて来てくれたって時に・・・)
光っている人型は呆れるような声を出す。
この可愛い生き物を知らないとは、、、人生そんしてますよ。
「どう見たって猫ですよ、、、美人の美人ネコさんです。
御猫様?が正しいのですか」
オレの指をクンクンする猫、すみません、オヤツとか持っていなくて。
猫の首にはエジプトの壁画にも描かれていそうな、緑の[多分翡翠]を金糸で編んだ大きめのネックレス、良いとこのお嬢さん猫なのかも知れないとは思う。
『その姿を見ても思い出せぬとすると・・・やはり歪みは大きかったか』
黒いヤツの顔は猫を真似てだろうか、口が尖り頭の上に耳。
(ってそれ、犬じゃん!犬は苦手なんだ!)
吠えるし噛むし追いかけてくるし、嫌いじゃないが苦手なんだ!
『む?・・むつかしいか?』
そいつは犬の顔のままで更に小さく姿を変え、デフォルメしたマスコットのような姿に。
そして頭に王冠を乗せた。と思ったらポテポテと近づいて来た。
『これでも思い出さないかい?』
子供のような声の王冠を被った子犬の、何かを問いかけるような目、どこかで見たような・・・
『なら私も』光る人型もその身体を小さく縮め、徐々に子供の姿に。
「どうかな?」小学生低学年・大体6~8・9歳の姿になったヤツは満面の笑顔で聞いて来た。
(・・・・・)
脳の端に残る記憶、やっぱりオレはこの子供を知っている気がする。
(4X歳未婚、オレには子供なんていない。
女友達?自体高校の時にいたような気がする程度だ)
つまりどう考えてもオレの子供じゃないわけで。
親戚の子供って線も考えられなくないが、そもそも親族の集まりに参加したのは、大学で暇を持て余した時期以来だ。
従妹とか、はとこの結婚式なんかに参加した記憶も無い。
(それに、こんな美形の子供なら、噂程度でも伝わって来るだろうし)
「これでもダメか、う~~ん難しいなぁ」
「やはりイレギュラー過ぎたんだよ、もうこれは全部説明するしか無いんじゃない?」
子供とマスコットが難しい顔をする中、オレは少し離れた所で横になる猫様に夢中だった。
「1から説明するけど怒らないでね?」
「きっとビックリするよ?驚いてもいいけど大声はやめてね」
「どうせ夢なんです、なにを聞いても怒りません。
それに、猫がいる場所で大声は出さない」常識です。
いい歳した大人です、子供の姿をしたヤツを怒るとか、親を殺されたくらいじゃないと怒りません。
「それを聞いて安心した、良いね今の言葉は約束だからね?
縛りだよ?嘘つきは針千本だからね。って事で・・・コレ覚えてる?」
子供が立つ場所の右側、その空間を裂くように巨大な剣が現われた。
幅広の両手剣、それに埋められた青の宝石。
「・・・」
寒気と圧迫感、一目見ただけでそれが実用された武器だとわかる。
なのに美しさと冷たさは1級の美術品を思わせた。
?・・鼻の奥が熱い、ソレを見ると何故か涙が。
「これは・・」なん・・・?懐かしい?
「聖剣アストレア、魔王を伐ち倒した勇者、キミの正義と共にあった剣だ」
・・・?勇者?正義?魔王?なんですその不穏なキーワードは。
「まぁオーケーです。コレは夢、夢ならなんでもありですね」
「世界を救った勇敢な勇者は、人類を滅ぼす魔王を倒した褒美に平穏な日々を願ったんだ。
力も名誉も記憶も捨てて、
『ただの一般人になって、平和な国の平和な町で暮したい』そう願ったんだ」
「だから神であるボクは、キミの記憶を消して異世界に転生させた。
綺麗な聖女と聡明な賢者である彼女達を世界に残してね」
神、自分をそう名乗った子供は笑顔で言う。
(きっとそいつはバカですね。
美女を残して異世界転生とか、本当にもったい無い。
それとも異世界基準で美人なだけで、そいつの好みじゃなかった、とか)
「こっちの世界でも美人だと思うよ?
だってキミ、こっちの世界の女性を美人だとか可愛いと思った事、ないでしょ?」
・・・・「いや、あるよ?うん、まじで」ただちょっと違うなぁって思うくらいで。
「心の底から?違うよね?そう言う所、女の子ってのは直ぐに解るんだよ?
だからキミ、女の子と長続きしないんだ」
長続きしない、とか。
違うんだ!オレが妄想オタクで、いい歳して異世界とか必殺技とかアニメとかが好きってだけで、決して2次元女性と3次元女性を比べたりした訳では!
はぁはぁ、、、「わかった、解りました。仮にですが、仮にオレが元勇者だったとして、神様が夢の中にまで出て来てなんの御用があるのでしょうか?」
「あはははっ、その切り替えの早さはさすがだ。
まぁボクはキミのお陰で、2人の女性から悪神の汚名を被ったんだけどね」
「・・・おぅ、それは申しわけ無いです」
「で、まぁ汚名返上って事じゃないんだけど、キミにも説明責任があるんじゃないかって?
事で、もう一度2人に会ってくれないかな、って思ってた所でね」
死ぬ瞬間まで監視していたらしい。
「そして次ぎはボクだ、ボクも神なんだ、こっちの神とは違う世界の」
王冠を被ったキャラクターっぽい犬は、子供のような声でそう言いました。