それでも生きる為に
囲まれる前には、必ず活路を見つけておく事、それは戦術の基本の一つ。
逃げ道の無い戦いはアホのする事、背水の陣とか、本当のバカだと思う。
(既に囲まれていますので、強引にでも逃げ道を作って逃げないと死ぬ!)
勝つ・勝てないの問題では無く、戦う前に万が一に備え、生き残る手段を作って置くのは絶対条件。
なので、まずは「手勢を増やします!」
完全に囲まれる前に!来たれ我が精鋭達よ!
『キノコのこのこ茸の子、美味しい山があったとさー』
[召還!キノコの山!]
「のこ?」「喚んだ?」「キノ?」「エリンギ?シイタケ?」
隠れていたキノコを含め、8体のキノコが応援に駆けつけた。
「ひっ!今度はお化けキノコです!もうお終いですわ」
「安心してマリエ、彼らは味方です。キノコが人に悪さをする事はありえません。
キノコは友達!怖いことはありません!」
「・・・キノコは友達」
「そう、キノコは友達です」蹴ったりヘディングしたり、転がしたりしても友達です。
ただ少し、その反撃で食べた人が食中毒を起こしたり、酷いアレルギーを起こして死亡する場合があるだけです。
木の根・草群、落ち葉の中、そんな所に生えて来る、それがキノコ。
キノコの山は食べ盛りなのです。
「き」「マシュ!」「シメジ!」
「?様子が変ですわ」
キノコ達がまごまごして、どこか怯えているような。
(切られ焼かれ炙られ煮込まれ、それでも形を変えず美味しさを増すキノコ達が恐れている?)
「そんなバカな事が・・・まさかキノコさん達、恐がっているのですか?」
「キノッ!」「マタンゴ!」「シイタケ!」「シメジ!」
肯定するように手をバタバタさせ、振るえながら声を上げるキノコ達。
(そうですか・・そんなに)ですがここでキノコ達に逃げられては困る。
彼らに戦って貰わなければ、私達がゴブリンの食卓に乗せられてしまうんです。
・・・仕方ない、本当に不本意ですが。
無数のゴブリン達が突然現われたキノコを警戒して、足を止めている今しか無い。
す~~~は~~~。
「聞きなさいキノコ達よ、キミ達が恐れ・戦き[おののき]恐怖するのは解ります。
ですが今は私の声を聞きなさい」
聞いて下さい。
「きの?」
「敵は眼前を埋め尽くし、その手には恐ろしい刃を持つゴブリン。
その目は私達を殺し、蹂躙し犯し喰らい殺す、悪意の光り。
それを前にして『恐れるな』と言うのは無理な話です。
ですが・・・・」
『戦いなさい』
「エリンギ!」「シメジ!」
「戦士達よ、此処で戦わなければ、その刃は力無き者達を・・・
戦えぬ仲間達を襲うのです。
ここでキノコ達が恐れ・怯え・逃げ惑い、追われ、殺されたならば、その悪意は幼いキノコ達を殺すのです」
「き!?」「のこ??」
「邪悪な軍勢がキノコの山を焼き、悪意と恐怖が、力無ない幼いキノコ達を踏みにじるのです。
聞きなさい、弱きキノコ達の啼き声を。
聞きなさい、あの邪悪に満ちたゴブリンの足音を」
「この場を逃げ延びたとしても、敵の刃は必ず私達の背中を引き裂きます。
邪悪な者は、けっして弱者を逃さないのです。だから私は命令します」
『戦いなさい、そして戦って死になさい』
「死を恐れぬ戦士達の戦いが敵を恐れさせ、その足を踏み留めさせるのです。
勇敢な戦士達の闘いが、
その強き背中が、
今は戦えぬ者達に、幼いキノコ達に勇気を与え、戦士と変えるのです」
「聞きなさいキノコ達、どのような敵もどのような悪意にも負けずに戦い続ける戦士達よ!
いま!立上がり戦わねば、敵はキノコを弱き者と考え蹂躙するのです!
邪悪なゴブリンが弱者をどうするか。
踏みにじり・奪い・殺し・欺き・隷属させようとするでしょう。
戦士達よ、私と共に戦いましょう!
心優しいキノコ達よ、仲間を守る為に勇気を!」
「・・・キノ!」「茸!」「松茸!」「トリフ!」
キノコ達に戦意が戻る、強くお高いキノコの名を叫びぶ。
キノコ達が傘を広げ、戦意を奮い立たせてて、立ち上がる。
(演説による戦意高揚・・・クソですが)
兵士を騙し、死地に送る演説なんかダイキライだ。
それも、自分が逃げる為とか、最悪だ。
(ならばせめて、私が前に立ちます)
「キノコ達よ!私の背中を追いなさい!私と共に進むのです!
最低でも10匹、それ以下で死ぬ事は許しません!」
突撃!突貫!
キノコ進軍!キノコ!進軍!!
(『ひど!キミって本当に悪魔的人でなしだね!!
凄く好きになっちゃうよ!』)
(気が散るから念話は止めなさい!それと逃げ遅れたら置いて行きますよ!)
棘吉の念話[テレパシー]!読み取れる感情は好気。
悪魔の畜生に好かれても困ります、本当に置いていきますよ。
「あの!」
「マリエさんも早く!遅れて囲まれても助けられませんよ!」
困惑した顔のマリエール、彼女の手を掴み走る。
いきなりキノコに演説した私に驚くのは解りますが、勝機を逃せば待っているのは敗北と死です。
「行きたいなら私に着いてきなさい、必ず生きて森を抜けますよ」
「ハイ!」
私達は駆けだした、邪悪な鳥が呼び出したゴブリンの群れに向かい。
眼前には30を超えるゴブリンの群れ、私達は変身出来ない普通の少女、それでも生きる為に。
演説し、味方の戦意を高揚させる指導者。魔王の片鱗?




