表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/51

夢中夢、夢の中で見る夢。

 崖から落ちる・誰か追われる・水に溺れる・火で焼かれる、そんな夢を見るようになったら早く病院に行く事をお勧めする。

 

(仕事してる・仕事に追われるって夢は見た事はあるが、誰かに追われる夢ってのはどうなんだ?)

誰か教えてくれませんか?


「お、オレの知ってる事は全部話したんだ、もういいだろ、開放してくれ」

「ん?・・ああ」ちょっと考え事をしてて忘れてた。


 コイツはクズの強姦魔だが、利用されただけってのも本当っぽい、、、

 女に騙されたバカってところは、同じ男として同情の余地はある。

 そして実際に被害に遭ったわけでも無く、未遂で終わったわけで。


(利き手の指を全部へし折ってやったからなぁ・・・それでチャラにしてやっても)


「その顔は覚えたからな、次ぎは無いですよ?」

 ナイフを刺した方の膝を強く縛ってからナイフを引き抜き、バートの持っていた皮袋を貰う。

 中身は金貨と火打ち石と綿クズ、コイツ本当に猟師かよ。


「ちょ、ちょっと待ってくれ、せめて腕だけでも解いてくれよ!」

「黙れ、その黄色で臭い前歯全部へし折るぞ?」

 生かして置いてやるだけでも感謝しろバカが。


 地面に転がったバートを見下ろし、、、

「バートさん、この道を進まずに西か東に行ったら何があります?

 それを教えてくださるなら、その腕を開放してさしあげますよ」


「・・・西は止めといた方がいい、ずっと森が続いて、その向こうは山だ。

 東は少し行けば川だ、その川を下れば町の端に着く。

 町の外壁をぐるっと半周すれば、別の町に行くための街道がある」


「そうですか、ありがとうございます」

 約束どおり腕を縛っていた上着を解き、バートに背を向けた。


「では、ごきけんよう」

 まずは東に歩き出し、ヤツの目が届かない距離まで歩くと大回りして西に。

 これで一応は時間が稼げるはず。


(この格好で山越え、寒いだろうなぁ・・・)

 泣き言は安全が確保できてから、今は1歩でも1秒でも早くこの場から離れる事が先決。


・・・・・・・・・・・


 森の中は日が少し傾いただけで暗くなる、自分が歩いている方向も解らなくなった時点で足を止めた。


(これ以上は無理だな)


 そう判断したら素早く寝床を確保するべく行動を始める。

 安全の確保は難しい、だとすれば次ぎに優先するのは逃走経路の確保と周辺の確認。

 何者かが近づけは直ぐに気付けるように枯れ枝をバラ撒き、葉が覆い茂る低木の下に落ち葉を引き詰め身を隠す。


(これで目を閉じたら、目が覚めたりして)

 

 それで夢の内容は全く覚えていないとか、ああ、やだなぁ。

[仕事したく無ぇなぁ]あと五分・・10分、寝させてくれねぇかなぁ・・・



(・・・・・・?)

 目を開けると星空のような暗闇。

 どこまで広がっているのか解らない黒い床は、磨かれた硝子ように真っ平らで堅かった。


(夢の中で寝たら夢を見てる?)夢中夢、そんな物もあるのだろう。


 地面の堅さ・人工物のような凹凸の無さが手の平に伝わってくる。


 ヒトの手では作れない天上の星空、人工物でしか作れないだろう無限の平面。

 人間は追い込まれるとこんな夢を見るのだろうか。


『全ては泡沫の夢、そんな事を言った人間がいたよね』


!?・・「誰だ?」

 瞬きはしていない、油断もしていない。

 確かにこの空間には、オレの他には誰もいなかった。

 

 なにも無い空間にいきなり現われた光りと黒いモヤ、そいつはオレの警戒を嘲笑うようにヒトの形になり、そして平面な床に足を降ろす。

 

「もう一度聞く、誰だ」


『・・・覚えてないのかい?』人型の光りは青年のような声で問いかけ。


『ヒトは理解出来ない事象に名前を付ける事でその存在を縛ると言うが、光りに何者か、と問うても答える光りがあるものだろうか』

 黒いモヤは人型?に変化しその黒く深い目でオレを見る。


(・・・敵か?悪意も敵意は感じ無いが)

 見下ろされているような嫌悪感は感じる。


 光りと影が興味深そうなおれを視線で見下ろし、2人で何かを喋る中、光りのお陰で明るくなった地面にソレは居た。


 深い茶色の短毛種、宝石のような深い緑の大きな目、気高さと高貴さを合わせ持つ貴賓のある表情。

 おれの好きな尻尾の長い猫!猫がいた!


「じっ・・・」猫はこっちを見ている。


!(目を合わせないようにして・・・)腰を落とし体勢を低くする。

 チラッ、チラッ、と猫の様子を覗いゆらゆらと手を動かす。


「こっちおいで~~~こわくないよ~~~」

「じっ・・・」ねこなで声を出して誘って見たが、猫の視線はバカを見ているような冷たい視線。


 現実では、猫好きではあったが猫を飼える環境では無かった。

 稼ぎも少なく休みも少ないオレが、猫を世話を出来るわけも無く、猫に遊んで貰う事も出来ない。


 住んでいるアパートはペット禁止、会社は猫が病気やケガをした時に有給も使えない。

 そんなオレの前に美人猫がいる。


 夢の中なんで、少しくらい触らせてくれても良いじゃ無いですか。

不思議空間に現われた尊大な態度の者たち、神様ですが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ