斬首の太刀。
「降りてくるのか」
どうやって距離を詰めようかと考えていたが、向こうから降りてくるなら手間が省ける。
(と言うより自分から敵の間合いに入るとか)
所詮はトカゲ頭か。
「どうするの!?完全なキュアなら勝てるのに!」
「完全なキュア?!」なにそれ怖い。
(心まで希望の戦士キュアキュアになる40歳男性、怖すぎる)
淡く光るフォルシオンを鞘にしまい、左手に掴んだのは可愛い小鬼の落とし物。
「これを使います」
「斧?!そんなゴブリンを殺して奪ったような武器じゃ、ワイバーンの鱗すら傷付ける事なんて出来ないよ!」
「殺して奪ったなどと、まるで私が強盗のような事を言わないでいただけます?」
ドロップアイテムです!ゴブリンが落として逝ったのです!
それにいまは少し立込んでますので、質問は後にしていだけます?
木々を揺れ木葉が舞う、ワイバーンの放ったパニックボイスの振動が空気を揺らす。
(その攻撃はすでに見た)私には効きません。
耳を塞ぎ木々の隙間に飛び込んだユズキ、高出力の音波は木の枝・木の葉が邪魔をしてうるさいだけだ。
(うるさい!ですが獲物がこうやって木の間に隠れられたら、木の葉が邪魔で空から見えないでしょう?)
森に隠れた獲物を狩り出すように飛ぶワイバーン、獲物が隠れている木々の上を旋回し高振動の音波と翼で起こした風が周囲の葉を巻き上げる。
(すごい風!吹き飛ばされそうです!)
ワイバーン攻撃は想定の範囲内、後は斧の強度ですが。[投擲]!
右手に持ち替えた斧を掴み、真上を飛ぶワイバーンに向けて!
キノコゴーレムの戦いの中で投擲した石が当たる距離は確認済み、であれば投げた斧は必ず当たる!
空を虹色の曲線軌跡が描く。
投げた斧がワイバーンの背を走り、虹の帯がワイバーンの翼に巻き着いた。
「レインボーリボン!?なんで?ボク、教えて無いよ?!」
リボンはフォルシオンを抜くと髪を縛っていた物、そのリボンを斧の柄に縛って投擲しました。
「レインボーリボン・・・」キュアキュアコンパクト的な。
「『もしかして』とは思いましたが、やはり魔法のリボン」
魔法少女の小物なら何か有る、そう思ったのですが。
「道は出来ました!さあワイバーン、覚悟はよろしくて?」
跳べないのであれば他の方法を考える、工夫とは人の英知。
(バカが、斧が届く距離まで降りてくるから)
リボンの片方を森の木に結び、その上を少女が走る!
「あっ!あれはキュア走法?」
「キュア走法とか言わない!」
足をぐるぐる回して走るのはキュアだけじゃ有りません!
ワイバーンは翼に絡む帯を睨む。
自分が飛ぶ邪魔にはならないがワイバーンの手でコレを解くには、一度地面に降りるか巣に戻り仲間に解かせるしか無い。不愉快だ。
見れば不愉快の元凶である獲物が帯を足場に走って来る、空を飛ぶ自分の所まで来るつもりだ。
(バカな、空を飛べない獣が自分に向かって来る!?)
獲物は白銀の牙を剥き、真っ直ぐに向かってくる。
その表情はまるで獲物を狙う獣のように鋭く、荒々しかった。
それは恐怖だった、この帯をなんとかしなければ、この獣を排除しなければ自分が死ぬ!
本能だった、本能からの恐怖と叫びが喉を焼く。
(死ぬのはお前だ!!)
全力の魔力を全力で息を吸い込み、溜め込んだ魔力と生命力を全て込めたようなブレス。
生涯で初めて本気で放つ、喉すら焼き焦す炎。
火竜にも匹敵する程の炎の息を吐いた!
ゴワッッッ!!
視界が赤く染まる炎、敵を全て燃やし尽くし灰すら残さない熱い炎の塊、生涯最大の炎の咆哮。
(・・・やったか?!)空気が燃え眼球が沸騰しているような視界の歪み。
白い牙を向けていた獲物の姿はどこだ、死んだか?。
「それはフラグだ!正義と勇気の光り、キュア フォルシオン!・・・」うっ吐き気が!
(正義とか勇気とか、ぶっちゃけあり得ないから!)
自分のセリフで自身を取り戻す、そう正義なんて物は存在しない。
有るのは悪と悪意だけ、勇気なんか戯言だ、自分の言葉に酔うナルシストが作った幻想。
勇気なんて言葉に酔ったヤツの行く先は、自己犠牲か他者犠牲の強要なんですよ。
虹のリボンを走っていた私は、ワイバーンの口が赤く染まるのを見た。
首の後に流れる嫌な鈍痛が危険を知らせ、瞬時に私はリボンに蹴り入れた。
リボンの弛みを作り、そのままワイバーンの下に潜る。
その直後、自分のいた場所を炎の壁が押しつぶし私の髪が少し焦げた。
乙女の髪を燃やす悪いワイバーンには死の制裁を。
びよ~~ん。
リボンの弛みで身体を上に飛ばし、私はワイバーンの頭上に。
炎で目が眩んだワイバーンは、私の飛翔に気が付かなかったらしい、ヤツは自分が吐いた炎の先を見ていた。
「・・・参る」
気持ちを切り替え、フォルシオンを腰の鞘から引き抜く。
そして無防備なワイバーンの首に、刃を通す。「諸行無常」
・・・・
「凄い!」キュア フォルシオンは身体を回転させ着地、棘吉が声を上げた。
「凄くは有りません、この剣が切れすぎるのです」
竜の首の下にある逆鱗、最初はその場所を狙うつもりでした。
そんな場所を狙う必要も無いくらいこの剣・フォルシオンは鋭く、そして切れすぎた。
(結局はこの剣に頼ってしまいました、、、)
強い武器、強力な武力は人を歪ませる。
自分が強くなった・他者より上の存在になった、そう勘違いしてしまうほどに。
シャキン
鋭い剣を鞘に戻し、私の姿が普段の姿に。
(人は力の魅力には逆らえないのでしょうか)
有れば頼ってしまう、それが私には恐ろしい。
このままでは私・・・女子力が上がってまう。
完全なキュアに変身するまえに、子供達に怒られるまえに前になんとしないと。




