森の破壊者?それとも再生を成す者?
「待て待て待て待て!!森が!森がぁぁ!!」
腐敗していく、キノコが森を埋め尽くしすごい勢いで森の木が腐り倒れて朽ちて行く。
「スゴイ・・さしずめ[菌糸腐海獄]だね、こんな魔法初めてみたよ」
償還者の命令を受けたキノコは地中の虫と虫の魔物に菌糸を張り、木の洞にかくれたスライム、森に眠っていた死体の魔物を次々と駆逐しながらキノコの世界を作りあげていた。。
「ちっ違います!私はこんな事を望んではいません!」
゛あ゛あ゛あ゛あああ!!!キノコの森!キノコの里!
『キノ?』『キノキノ?』『キノコ?』
「そうそう、もう十分だからね?キミ達はスゴイ、頑張ってくれてありがとう」
もうだから還って下さい。
『キッノ~~~♪』キノコ達が飛び跳ね、地面に潜りこむように還って行った、、っぼい。
「ようやく止まりましたか」森が全部無くなるかと思った、キノコまじヤバイ。
?・・キノコが止ったと思ったら、腐った倒木から草が!花が!光りの胞子が?
もしゃもしゃ生えて来た、なんだろう。
破壊からの再生ですか?森に魔力が満ちてる。
「森を腐らせて魔力を生み出して?!再生してる?これって!」
「皆まで言わないで!」無限破壊魔法じゃないですか!
環境を破壊しながら魔力補給する魔法、禁忌に触れる感じがスゴイします。
なぜこうなった・・・
“個体名[ユズキ]はすごくレベルが上がった”
「あ~あ~聞こえ無い!私は何も聞こえ無い!」
天の声さんも適当!!
“周囲約100mの森を腐らせ自分の[支配領域]に変えておいて、何も無いでは済みませんよ?”
少し怒ったような、叱りつける天の声さん。
「あーあー!聞こえ無いですわ!天の声とか、私には何も聞こえません!」
私が悪るぅございましたから、責任問題にしないでぇぇ!!
『森が泣いている』とか『緑地を守れ』とか!環境活動家にデモされますから!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ザクッとしたレベルアップはさておき、天の声まで私を追い詰めてくるなんて、不幸です。
すごく不幸ですわ。
身体に力が満ちて今にも走り出しそうな私、
決してこの犯行現場から逃げ出したい訳ではないのですが、全力で走り出す!
(お腹は空いていますが・・くぅ~~~キノコに『食べ物を出して』と言うべきでした。
こうなっては後の祭りですけれど、しかたありません)
今は頭を切り換える事こそ重要!
意識高い系の人達に捕まる前に、今は場所を変えるのです。
「犯人は犯行現場に戻ると言いますが、私は犯人では有りませんので」
2度とこの場所には近づきませんわ!
「まってよ~~~」
光りながら走るユズキを青いハリネズミっぽい走りで追う棘吉。
ソニック!ソニック!五月蠅いハリネズミから逃げようと加速するユズキ、1人と1匹が進む先に何があるのか、走り出した彼らにはまだ何も解らなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「は~~~~・・」
時は少し巻き戻り、ティアナ[ユズキ・勇飛]を鞄一つで追い出したラルフ=レーディン侯爵。
彼は門を出て歩き出した報告を執事から受け、空澱む窓を見あげて深く息を吐いていた。
「これで、本当に良かったのか?」
自問自答、報告を終えた老執事はその問いには答え無かった。
「確かにあの子には、第三王子との婚約の場で失態があったのは事実だ、しかし・・・」
その失態も腹の違う妹、今の自分の妻の娘とその取り巻きが画策したつまらない失敗だ。
それを大げさにした妻と、その娘を黙らせられなかった非は自分にもある。
「それに、姉妹の確執を王族に見せるなど愚かすぎると判断した結果だが」
ティアナの兄である長男のラインヴァルト、長女のマルゴットの溺愛している妹娘を追放など・・早まった判断だった、と。
長男のラインヴァルトは王国の第3軍・5000人の兵を預かる将、長女のマルゴットはこの家を出ているとはいえ宰相の第2婦人、しかも早世した妹レオノールに似た、としの離れた妹のティアナを溺愛している。
(・・・頭が痛い話しだ)
ラルフもティアナを愛していない訳では無い、だが貴族とは・貴族の家とは血縁よりも地位と立場を優先する。
妻を病気で失ったあとすぐに再婚したのは、今の妻の実家と懇意にする事で得る物が大きかったから。
妻を失い、すべてに空虚になった自分に残されたのは、父より受け継いだ貴族の地位と格式、それを高められるならばと。
現在の妻であるナターリヤがシトマフ公爵家の親族で無ければ、ラウルが彼の女に頭が上がらない状況で無ければ、残されたティアナが追放される事は無かっただろう。
心優しいティアナ、笑顔と美しい声と誰にでも分け隔て無く接する清らかさを持つ先妻のイリーナによく似た娘。
彼女が最後に残し、彼女が最後に愛した娘。
「私は確かにティアナを恨んでいた、あの娘を産まなければイリーナが死ぬ事は無かった・・・」
そう信じていた。
だから疎み、距離を取り冷遇した。
イリーナは死ぬ直前、最後に自分では無く、ティアナの名を呼んだ。
産着に包まれたティアナを抱き寄せ、頬のキスし最後に微笑んだのだ。
長女のマルゴットがティアナを可愛がる姿を見る度に、レオノールの代用品だと哀れんでいた。
「それが失った今、なぜだ」
気分が晴れる所か、なにか大事な物を喪失したような空虚が広がってくる。
「近くに置けば鬱陶しく、遠くに置けば気になるというのは・・・な」
「ですが、ティアナ様がお戻りになれば、ナターリア様とアグネスタ様の御機嫌が」
水と油・風と湖、烈火のような気質の二人と、穏やかな性格のティアナは相性が悪い。
ゆっくりおっとりとしたティアナの所作は、猪のような剛健でキビキビと行動する彼女達から見れば鬱陶しく見えるのだろう。
妻のナターリアなどは、うさん臭い占い師を呼びよせティアナの将来を占わせ。
『!?・・・こっ!この娘は将来アグネスタ様を不幸にする存在です!
それだけではありません!世界を!世界を滅ぼす魔王をも超える真の魔神に!!!』
などと馬鹿げた演技までさせたのだ。
「ナターリアもアグネスタも態度は高圧的だが、ああ見えて繊細なのだ。だから余計に気に障るのだろうな」
打っても響かない、何をしても気を荒立てる事の無いティアナの姿を『自分達を軽んじている』『無視されている』『何を聞いても受け流れる』そう感じてしまうのだろう。
「ティアナが無事町に着けば、解っているな」
「はい、既に指示を出しております。
この屋敷で抱えの商人が保護した上で、海向こうのウルリッヒ侯爵様の所で療養していただくよう手紙も」
「イリーナ実家だ、それにあそこの娘とは幼い頃からの友人だと聞く」
(きっと大事にしてくれるだろう・・・)
海の風に病を負わなければ良いが、船には波もある。
船乗りは気が荒く強欲だと聞く。。。大丈夫だろうか、怪我はしないだろうか、恐ろしい目には遭わないだろうか、病にかかったりはしないだろうか、心配だ。
(・・・海には海賊もいる、巨大な魔物が船を襲うとも聞くが・・・)
「フランツ!本当に大丈夫なんだろうな!
ケガとか病気とか・・商人にはちゃんと私の名を出してカネも多めに渡したんだろうな!」
「・・・もちろんでございます」
老執事は深く頭を下げて答えた。
心の中で(それほどご心配するのでしたら、追い出すような事をしなければ・・)と少し思いつつ、貴族の社会は少しの油断・失敗で全てを失う、それは貴族としては有ってはならない事なのでしょう。
『受け継いだ物を守り、次ぎに伝える事、それこそが貴族の家に生まれた者に与えられた使命だ』
先代の侯爵様が残された言葉。
先代侯爵の時代から彼らを支えていた執事はそれを思い出し、(出過ぎたまねは慎むべきですね)と頭を左右に振った。
その娘ティアナはいま、道を離れ山に向かっている事を彼らは知らない。
そして数日後、いつまで経っても町に着かない愛娘を心配し、発狂せんばかりに頭を掻き毟り、病床に落ちるまでやせ衰える事になる事も。
うっかり大魔法で大量レベルアップ、貴族の3女、実は世界を滅ぼす最終魔王?
属性は詰め込むほどおもしろい?。




