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第21話 元厄災の過去と後悔 厄災の残滓遭遇戦

 一行が厄災の残滓に挑む。

 開幕はソロモンの超火力の爆発魔法が炸裂した。

 ダンジョン全体が揺れるほどの火力だ。

 爆煙に紛れて前衛が突っ込んでいく。

 高熱は、ククルの神聖魔法によって防ぐ。


「合わせて!」

「あいよ!」

「了解だ!!」


 アイリスが弓を射る。

 爆炎を纏った矢が厄災の残滓目掛けて飛来する。

 着弾と同時に火柱が上がり、その中からユリウスとアッシュが同時に攻撃をした。

 そしてその間にソロモンが魔力を練り上げて行く。

 膨れ上がっていく魔力を、自身の体全体を器と見立てて満たすことで増幅させる。


「第一増幅燃料装填完了。――其は天地開闢を見届けし番人。火の星による豊穣は、いつしか灼熱へと変貌し、その内に秘めしは地を焼き払う狂気。生命は根絶され、新たなる豊穣の礎とならん。天壌を焼くは豊穣の焔! ――ネフト・イーラ・ヴィージス!!」


 厄災の残滓が灼熱の火柱に貫かれた。

 さらに全属性の魔矢を叩き込む。

 属性反応による爆発が大気を震わせ、衝撃波が岩盤に亀裂をいれた。


「サンキュー! ソロモン!!」


 ソロモンが全員の武器に属性や強化効果を付与した。

 支援を行いながら、魔法による物量攻撃をする。

 敵に攻撃をさせないよう抑え込もうとするが火力が足りず、動作を遅らせるのが精一杯だった。


「硬すぎ!!」


 ソロモンが苦言を吐いた瞬間、厄災の残滓が彼女に向って熱線を放つ。

 第三魔力元素と呼ばれる特異な物によって生成された熱戦は、まるで魔法のようだった。

 熱線の魔法陣を目視した瞬間にソロモンは、短距離転移を発動させた。

 転移した瞬間に、熱線がソロモンがいた場所を薙ぎ払う。

 一秒でも遅れていれば、灰になっていた所だ。


「あれは!?」

「全員回避!!」


 アイリスが厄災の残滓の予備動作に気が付き、上を見ると高密度の魔力が集まっていた。

 そしてその後に何が起こるのかを察したアッシュが慌てて指示を出す。

 それから数秒して、超火力の熱線が無数に放たれて地面を焼いていく。

 熱線が着弾した場所はあまりの熱量で融解していた。


「主よ。我らを守り給え! ――ホーリープロテクション!!」

「合わせる! ――プロテクション!! おまけよ! ――ヒートシールド!」


 ククルとソロモンが防御魔法を展開した。

 前衛の三人が熱線を回避しながら、滑り込むように防壁の内へと入る。


「あの熱線をどうにかしないと近づけねーぞ!!」

「なら、わたしが熱球を吹っ飛ばす。魔法の投射後、魔力装填に時間がかかるからカバーお願い」


 一同が頷いた。

 それと同時にソロモンが魔力を練り上げ始める。

 可視化され、その圧に押し潰されそうな程の膨大な量の魔力だ。


「其は天地を別け、開闢の兆しを起こすもの。地母神の肉は大地となり、血は生命の源なり。絶叫と共に引き裂かれし四肢は怨念を腹みて悪星となる。人の業を以て地母神に最上の苦痛を献上せん!! ――ネフィト・オールオーレル・ピュトス!!」


 第一二位階の最高位魔法を使う。

 ソロモンが放った核撃魔法が熱球を消し飛ばした。

 凄まじい爆発と轟音、そして衝撃波が襲う。

 厄災の残滓の外殻の一部が吹き飛び、絶叫の咆哮が響く。

 熱線が止んだ。

 その隙にアッシュたち前衛が残滓に向かっていき、特大の剣技を放つ。

 強靭な鱗を裂き、確実にダメージを耐えた。


「行けるぞ! 畳み掛けろ!!」


 アッシュの声に従うように攻勢が強まった。


「第二魔力装填完了……魔力炉心起動……増幅融合術及び分裂増幅術成功……準備完了!!

 いっくよーー!!!」


 ソロモンが魔力を全回復させた。

 膨大な魔力を誇り、それを存分に生かした超火力攻撃。

 一撃の消費魔力は、常人が一生かけて生成する魔力量を簡単に上回る。

 それでも直ぐにガス欠になってしまう欠点を補ったのが装填技法だ。

 体外にある大気中の魔力など、あらゆる魔力を集めてストックすることで即座に魔力を回復させる技である。

 一歩間違えれば、適合不全で死に至るほどのリスクがあるが、一流である彼女がそんなミスをすることはない。

 そして増幅術により、ほんの少しの魔力量を何千倍にも膨れ上げさせることで、自身の燃費の悪さを完全に克服した。


「――刺突爆雷!!」


 ソロモンが抉れた残滓の背中に、半透明の爆雷の槍を叩き込んだ。

 爆雷の槍は、超高熱により光を屈折させて半透明になっている。

 槍が刺さった瞬間、大爆発が起き、残滓を地面に叩きつけた。

 

「はあぁぁぁぁああ!!」


 アッシュ達が奥義クラスの剣技を頭に叩き込む。

 厄災の残滓が絶叫とともに力尽きた。

 体から魔力が霧散していく。


「や、やったのか……?」


 ユリウスが唖然としながら言った。

 倒せるか分からなかったものに勝って、実感が得られなかった。

 それは全員同じでどこか夢心地だった。


「や、やったー!」 


 ソロモンの歓喜の声でやっと他のメンバーも喜びの声を上げる。


「ソロモン?」


 ククルが少し不安そうにソロモンの名前を呼んだ。


「大丈夫だよクク姉。魔力反応が完全に沈黙してる。倒したんだよ! 伝説の断片を!!」


 嬉しそうなその声は、ククルに安心を与えた。

 ソロモンの診断を聞いて、彼女も心から喜びの声を上げた。


 その時、厄災の残滓の心臓が強く一回鼓動したのを誰も気づいていなかったのだった。

『面白い』や『よかった』と思っていただけたら評価やブックマーク、感想等をしていただけると嬉しいです。


毎週木曜もしくは土曜日の更新予定です。

これからもよろしくお願いします。

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