ナナミ
この村の外れの森には、ドラゴンが棲んでいる
誰もが知っていて、誰も信じていない口頭伝承。
でも、僕だけが、その真実を知っていた、、、、
__________________________________
2時間程かけて、この森の中心の滝までやってきた。
ナナミを連れて。
ナナミ「ここに、いつもいるの?」
リオウ「そ!」
ナナミ「でも嘘よ。誰もリオウが森にいるのを見た事無いんだから」
リオウ「僕がここにいつも来ているのは本当。でも、実は続きがあるんだ。」
リオウは滝壺を見る。
リオウ「ここ。」
ナナミ「え?」
リオウ「この、下、なんだ」
と、滝壺の下を指差す。
ナナミ「、、、この下って、、、、、、滝壺の、中??」
ナナミが怪しげな何かを見るように滝壺を覗き込み、眉間にシワを寄せ、怪訝そうにこちらを見る。
、、、無理も無い。
リオウ「水着、着て来た?」
僕は(そのナナミの怪訝な目に気付かないフリをして)、服を脱ぎながらナナミに尋ねる。
、、、勿論既に僕は服の下に水着を着てきている。
(普段、僕1人の時は水着なんて着ないんだけどね)
ナナミ「う、うん、、、一応」
と、ナナミは恥ずかしそうに頷き、服を脱ぎ始めた。
__________________________________
2人とも水着になり衣服を袋入れ、ギュッと袋の口を閉じる。
そして
リオウ「さ、行くよ」
僕はナナミの手を取り、滝壺の中に飛び込んだ、、、、!
ゴオオオオオオオオ
滝の水の落ちる音がする。
滝壺の中は水流がごちゃごちゃで方向感覚が分からなくなる。
普通の人は溺れてしまうだろう。
でも、僕は、何度もここに来ているから慣れていた。
繰り返しここで泳いでいたから泳ぎも、上手くなっている。
だから僕はナナミの手を取って、滝壺の下へ、奥へ、ずっとずっと、底を目指して潜り続ける事が出来ていた。
、、、、、、、、。
滝壺の底が見える。
滝壺の底は固い岩場だ。
そこはこれ以上下へは行けない、、、
様にみえる。
でも
僕が目指しているのは、その下、だ。
地面の下。
岩場の下。
その勢いのまま、地面に向かって泳ぎ続ける
そして
地面にぶつかる!
、、、かと
思われた僕たちは
地面にぶつかる事なく
その地面の中を
溶けるようにすり抜けていった、、、、
__________________________________
気がつくと、辺りは緑の広い広場になっていて、その向こうには360°に渡って森が広がっている。
森の向こうは森があり、
どこまでも、どこまでも、その森は続いているかの様に思われた。
、、、、、、、。
ナナミ「けほっ、けほっ、けほっ」
ナナミは少し水を吸い込んでしまったのか、咳をしている。
リオウ「大丈夫?」
ナナミの背中をさする。
ナナミ「けほっ、けほっ、、、う、うん、一応、、、、」
僕の声に大丈夫、と気丈な返事をする。
、、、ナナミはいつも弱さを見せない様に振る舞う。
本当は、きっと怖かったに違いないのに、、、。
でも、
それなのにも関わらず、僕を信じて付いてきてくれた。
その事実が、僕の中でナナミの事を、更に、愛おしく感じさせていた、、、、。
リオウ「でも、ほら、見て、ナナミ」
それ以上に、僕は見てほしかった。
待ち切れなかった。
この時をずっと待っていた。
ナナミ「ん、、、、何???」
呼吸の落ち着いてきたナナミはリオウの言う方へ目線を、上げ、、、
リュカ「おや、お客さんかい?リオウ」
目線を上げて、
ナナミは目を見開く
だって
そこには大きな大きな、白い竜が(寝起きの様な顔で)こちらを、見ていたんだから、、、、