不意の出会い
『この村の外れの森にはドラゴンが住んでいる。』
、、、それはこの村の事を誰かに紹介するときの謳い文句だ
この村ではドラゴンに関する伝承が数多くある。
それは子供のおとぎ話であったり、噂話であったり、古文書だったり、ドラゴンの爪の化石であったり、様々だ。
この村の産業が盛んなのはドラゴン伝説目当ての観光客が全国からやってくるからだ。
まさに、ドラゴン様様な好景気。
けれど、その実、村の人は誰もドラゴンの存在なんて信じちゃいなかった。
だって誰も見た事が無かったし。
それはさながらサンタクロースのように。
誰もが知っていて、しかし誰もその存在を信じていない。
ドラゴンを見た!なんて言ったら笑われちゃう!
12歳にもなって何言ってんだ!
、、って。
、、、そういう、存在。
だから僕も
"ドラゴンなんて居るわけが無い!"
って思っていた。
そう、
あの日、
までは、、、、、
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、、、その日。
僕はいつもより、もう少し奥の方まで探検してみようと思った。
なんでそんな事思ったのか、自分でもよく分からない。
、、、、、、、、。
、、けれど。
もしかすると、その日の朝、
母『リオウ!また、ナナミちゃんを叩いたって!?』
、、なーんて、母さんにこっぴどく叱られた事が原因かもしれない。
、、、なんで母さんはいつも僕の話を聞いてくれないんだろう。
今回の事は僕は悪くないのに、、、、。
ナナミがいけないのに、、、
聞いてくれたら分かってくれるはずなのに。
その、訳も聞かずに怒られた事で、僕は酷く理不尽を感じていた。だから、僕は何か、すっきりしたかった。何か、悪い事をしてやろうと思った。
、、、、うん。
やっぱりそんなところ。
僕が今歩いている理由。
一番奥に行きたい理由!
、、、驚かせてやりたいんだ。
母さんを。
僕は本当は凄いんだぞって。
だから僕は行くんだ!
この、ドラゴンの森の、一番奥に!!
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、、、ドラゴンの森。
この、ドラゴンの森は村人みんなの憩いの場だ。
怖い動物なんていないし、道も入り組んでいないから迷うなんてことも無い。
だから村の子供が遊ぶとしたら、大抵、この森だった。
しかも森には色んなな生き物が居て、綺麗な川も流れていて、飽きる事が無い!
僕が一番居心地良いと感じる所だ。
、、でもよく、『奥は行ってはいけないよ』と、言われていた。
なぜ?
そんなの考えるまでも無い。
別に理由なんて無いに決まってる。
迷う事は無いが、結構広い森だから、多分、距離的な意味で奥へ、遠くへ行くな、と言っているのだろう。
でも、僕はもう子供じゃない。大人なんだ。
だから、、、、もう、大人の言う事なんて聞かないんだ!
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リオウ「わあああああああああああああ」
森の中心にある滝を見て、僕は感嘆の声を上げた。
写真では見た事あったけど、この目で間近で見たのは初めてだった。
ドラゴンの森を地図上で見ると円形で、ちょうど中心に広場があり、そこに滝がある。
それが、ここだ。
それにしても、、、
良い気持ち!!
滝の近くまで行くと、水飛沫がまるで霧の様に細かく舞っていて、その冷んやりとした空気を吸っていると、胸がすぅ、、っと、気持ち良くなる。
清々しい。
、、って、こういう時言うのかな?
この冷んやりとした空気を吸っていると今までの嫌な事がまるで小さく思えてくる。
今日の朝の事も、なんかどうでも良く思えてきた。
、、、帰ろっ、かな。
もう昼も回っていて、このまま帰ると夕方、遅くなると夜になってしまう。
「夜になったらまた怒られちゃうよ、、、」
そんな独り言を言い、回れ右して家の方へ帰ろうとした、
その時
(足元のちょうどそこだけ)
(何故かメチャメチャぬかるんでいて)
ずるっ、、!!!
「う、わああああああああ」
僕は足を滑らせ、
ドボン!!!!!
、、と、滝壺に落ちてしまった、、、
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ぶぐぶぐぶがぶぐぶがぶぐ
息が出来ない、、、
水の中を手足をばたつかせる。
、、水面に、上がれない。
次々の滝から水が落ちてきてどんどん滝壺の下は吸い込まれていくよう。
僕はそんなに泳ぎは得意な方じゃ無かったから
水の流れに逆らって上昇するなんて出来なかった。
苦、、、しい、、、、
母、、、さん、、、、、
助けて、、、、母さん、、、、
と
心の中で叫びながら
僕はいつしか意識を失っていた、、、
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夢。
夢の中。
これは今よりもっと子供の頃。
その頃、僕は竜に憧れていた。
竜の話が大好きだった。
良い竜や、悪い竜。白い竜や、黒い竜。色々あったけど、
とにかく、その姿、形、存在が格好良かった。
親とドラゴンの森に行けば、いつも僕はドラゴンを探していた。
いないかな?いないかな?って。
でも、一度も見つからなかった。
でも、、、
、、、ところで、知ってるかな?
ドラゴンのいるところにはある花が咲くらしい。
いや、逆かな?
ドラゴンは良く、その花の咲いている場所に行く!
ドラゴンはその花が好きで、寝る時はいつもその花の生えてる場所で寝るんだって!
その花は白い花びらで、真ん中が赤く、雄しべと雌しべの所は鮮やかな黄色。
直径1センチくらいの小さな花。
子供の頃、ドラゴンを僕は見つけられなかった。
けれど、僕は花を見つけたんだ。
その、ドラゴンの好きな花を!
それは今でも押し花にして閉まってある。
花の場所にドラゴンが来るのなら、その押し花の所にもドラゴンが来るかな?なんて甘い考えで。
ずっと、ドラゴン来ないかな?来ないかな?と、待ちわびていた幼い頃。
「ん、、、、、、、、」
ふと、夢から醒め、目が覚める。
意識は朦朧としている。
地面に、、、寝ている。
服装はベチャベチャに濡れている。
そして、
目の前には、白い花。
ああ、、、そうそう、この花。
この花を、僕は押し花にしたんだ。
また、見つけた。
ふふ、と、喜んでいると
×××「珍しいな、人間の子とは」
頭に声が響く。
ふと、顔を上げて、前を見る、、、
と、
そこには、白い、大きな、竜の、姿
が、あった。
、、、、、、、。
、、、それが。
僕と、ドラゴン、、、いや、リュカとの
初めての出会いだった、、、、