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ふわっとした短編集

「人をダメにするソファ」を召喚するスキル

作者: 蟹蔵部

「成功です!」


 勇者召喚に成功した魔術師が声高に叫んだ。

 いらぬ不安を煽らぬように、年頃の近い王女が、召喚された勇者に現状を説明している。


「勇者様は特殊なスキルをお持ちのはずですわ。ええ、そうです。使い方は自然とわかるそうですが。え? 出してみる? なるほど、具現化スキルなのですね。ええ、わかりました。こちらにお願いいたしますわ」


 勇者が手をかざした場所に、ポンッと丸い何かが出現した。

 ひとつ出ると、次から次へとポンポン出てくる。


「勇者様、確認のためには十分な量ですから、止めていただけますか? え? 人数分出るまで止まらない? そうですのね。あっ、止まりましたわね」


 丸い何かはその場にいる全員分出ると、ぴょんぴょん跳ねて、ひとりひとりの目の前へと移動してきた。


「あら、動きますのね。勇者様、これは一体なんですの? 人をダメにするソファ? なんでしょう、少し妖しい雰囲気を感じますのに、何故か気になって仕方がありませんわ」


 人をダメにするソファが目の前にきた人たちは、どうもソファが気になって仕方がないようだ。

 ふらふらとソファへと近づき、その身を沈めて行く。


「あぁ〜、わ、わたくし、ダメになってしまいますわ〜」


 王女の顔がだらしなく歪んだ。国一番と名高い尊顔が、だらしなく開いた口からよだれをたらしている。

 周囲の人たちも程度の差はあれど、同じようにだらしなくソファに沈んでいる。


 そして王国は滅んだ。


 〜Fin〜

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