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人肉管理職  作者: はんぺん小僧
6/12

■■**/13/62_35:90:652 移動、裏側。

七日目


 今日の天気は雨。自然現象で起きる本来の雨だった。今日はきぶんがよろしくない。それもこれも全て今回の件のせいだ。今からそれを書くことさえも億劫になる、この仕事の裏側という物だ。


 裏側なんて言っても別に企業側が隠していた訳ではなく、ただ知らなくても良い、ということだ。今日私は休み開けなので、仕事場所が移動となった。この衛生管理の仕事は注意すべき点が多くあり、その問題を解決させる知識が必要となる。勿論マニュアルを読めばある程度知識は得られるが、やはり行動力が大事なのだ。ということで、週の初めは必ず仕事場所の移動がある。自分で書いておいてあまり納得が行かないが、「経験が物を言う」と言えばそうだろう。そこまでは良いのだが問題はその移動先だ。そこは『人間養成施設』。我々が最も恐れている場所だ。


 人間というものは知識ある生き物である。いや、そうらしい。同僚から聞いた。そんな人間を育てている場所だ。そこに行った人は、新入りだろうとベテランだろうと、気の弱い人は漏れなく心がやられるらしい。今思うと当たり前の事だ。あんな酷い光景を見て、気を楽に出来るわけが無いのだ。


 人間養成施設に行き、まず目に入ったのは厳重な扉だった。「要消毒」と書かれている。最近起きた例の出来事からだろう。大分仕事が楽になりそうだと、私はその扉を開けた。

 開けてすぐの私の顔はしかめっ面だっただろう。そこはやけにうるさいのだ。ざわざわと話し声が聞こえ、物音や騒音が酷い。まだヒトを目にもしていないのにだ。一本道の廊下を歩き、右に曲がる。そしてようやく、ヒトを目にすることが出来たのだ。


 ヒトの姿や形を見た私は一歩、後ろへたじろいだ。ヒトは、私たちの姿にそっくりなのだ。顔も、私たち同様一つ一つ違う顔をしている。体も、雌雄はっきりしている。違うところと言えば体が二回りほど小さいことだけだ。信じられなかった。今でも信じられない。あの生物の肉を食っていたと言うことが。その肉の正体が私たちのような姿形ということが。驚く私を見て、人間養成者の一人はこう言った。

「…知識ある生物は皆、この形になるんだと。いつか社長が言ってたよ。…あんたは引いてるだろうが、この仕事になりゃ少しは慣れるさ。」

そして白色の髪をかき、また仕事を進めた。私は終始彼らに見つめられながら、作業をした。体毛も検査しなくてはならないらしいが、これに関しては養成者の方々がやってくれた。確かに慣れていない者が作業するとヒトにもストレスになるだろう。一通り仕事を終え、時間になったので帰ろうとすると、養成場から鋭い金切り声が聞こえた。一体何事かと躊躇いながらそこへ行くと、そこでは丁度ヒトが連れ去られる時だった。そのヒトは醜く抗い、周りのヒトは岩などの影に隠れている。この生物を今から殺し、解体する。その様子は想像もしたくなかった。同情してはならないのだろう。彼らは一つの食材なのだ。「助けたい」なんて言った者は気でも触れたかと思われるだろう。結局出来る事はやはり感謝と、そして美味しくいただく事のみなのだから。私はその場にいた者たちをまね、手を合わせた。


 帰りが遅くなったから妻はもう寝ていた。外食を済ませてきたし、今日は今回の件で色々と考えておきたい事があったから丁度良い。寝室で今なお思っているのだ。


 

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