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94【ロミオからの手紙~旅路・リリア国~】

「ロミオから返事がきました!」

 パティは手紙を持ち、三人がいる甲板へと小走りで寄った。その後ろからアルも近づいた。

 二人が傍に寄った時、ネオはゆっくりと立ち上がっていた。


「あ、ホント?」

 クルミは言い、手紙をパティから受け取ると、それを眺めた。思ったより長い文面だったので、回し読みするより読んだ方が早いので、クルミは声に出して読み始める。

 ロミオからの手紙にはこうあった。


『パティ、アル、ネオ、元気にしているかい? 手紙をくれて嬉しいよ。僕もジルも元気にしている。実は僕らは今、各国を旅しているんだ。

 僕たちは長い間北大陸にいたから、他の国を見て回りたくなってね。旅で会う人々は色々な人がいて、ジルのことを知っても優しく接してくれる人もいた。僕たちは狭い世界にいたんだなと実感したよ。

 グリーンビュー国では大変だっただろうが、羨ましいと思ったのは炎の神に会ったという話だよ。いや、その話は今度会った時に訊こう。無駄話が長くなったね。

 新たな石を持つ者と会ったそうだね。石の力の発動の仕方だが、それについて僕は長い間研究をしていた。

 石を空気に触れさせ、集中して石を光らせることで力が発揮される。

 その効果時間をのばすには日々体を慣れさせることが必要なんだ。始めは二分と経たず効果が消え、効果が切れると酷く消耗した。時間をかけて慣れさせることで、石の効果の継続時刻を約二十分ほどまで伸ばすことに成功した。そこまでかけるのにおよそ二年の時を要したけれどね。

 ネオに石の力のことを言ってなかったのは、その時のネオにはまだ石を持つ者としての自覚がなかったように見えたのと、高位魔族は地上に現れていなかったから、切羽詰まった状況だとは思わずにいたんだ。

 君たちに三大魔族の話をしたね? その魔王たちが地上へ入り込むのを阻止しなければならない。彼らが地上へ来る方法がない訳じゃない。グリーンビュー国が高位魔族に襲われたということは、他の高位魔族も地上へと入り込んでいるだろう。

 彼らは三大魔族直属の部下であり、自分の主の命を受け、地上を魔族に適した世界にするべく動いている。やはり今重要なのは、入り込んだ高位魔族を排除するために、神具の力を引き出すことだ。

 それから、一つ重要なことを伝えておくが、〝開放の剣〟だが、あれは異なる世界を繋ぐ剣だ。夢の中と現実世界を繋いだように、天世界と地上を、また地上と魔世界をも繋ぐことが可能だと推測する。はっきりとは言えないが……。

 あれについて書かれた文献をカストラ国の書庫で読んだことがあり、夢に入れる方法を知っていた。しかしそれ以外には、杖の使い方や試練についてしか書かれていなかった。

 ウォーレッド国には世界最大の図書館があり、神具のことについて書かれた文献もあるだろう。僕らはこれからウォーレッド国へと向かおうと思っている。

 ウォーレッド国へ暫く滞在し、他の神具のことも併せて調べてみるつもりだ。神具に関しては僕はそれほど詳しくはない。真の持ち主がいるとは、初めて知った。

 君たちがウォーレッドに着いたら、僕たちに会いに来てくれ。分かったことを話すよ。王都の中心街や、図書館に立ち寄ってくれれば会えるだろう。アルが無理なら、ネオや、まだ会ってない、君たちの友達が代わりに来れれば、来て欲しい。まだ先になると思うが、また君たちに会えることを楽しみにしている。ロミオ・クルス』


 手紙の文面からは、ロミオらしい、朗らかで親しみ易い人物像が見てとれた。

「流石、学者先生だな。こんな長い手紙を書いて寄越すなんてよ」

 クルミが読み終わると、ダンは頭の上で両手を結び、妙なところで感心した。

 クルミは何度かその手紙を読み返し、読み零しがないようにし、二年……、と口元で呟いた。

 


 前方に陸が見え、最も船に慣れたダンは、舵の操作を執事と代わるために操舵室に向かった。

 船が今にも港へ到着しようとする中、口火を切ったのはクルミだった。

「やっと怪我が治ったから、あたしはあたしなりに、神具を使う方法を調べてみるよ。せっかくここにあるしね」

「私も手伝います。神具は私も持っていますので。クルミ一人では怪我でもしないか心配ですから」

「それじゃ、あたしたちは王都を拠点にして、人気のない広い場所で神具を使ってみよう」

 ネオはクルミを見て頷き、クルミはアルとパティに告げた。


「パティ、君はどうする? 僕はリリア国のマクーバ王に会いに行くが、パティはクルミたちについて行くか?」

 アルはパティに向かって言ったが、他の者はなぜそんなことを訊くのだと思っていた。

「わたしはアルと行きます」

 ネオたちは当然その答えが分かっていた。

 彼らはパティがアルを好きなのは、彼女の態度を見れば一目瞭然なので、訊く必要などないのに、と、内心思っていた。

 そこで、船はリリア国の港街、ガシューへと到着をした。

 

「あたしは少しこの街も見てみたいから、行き先は途中まで同じだけど、アルたちは先に行って。それで王様と会う用が済んだら、王都の宿屋を当たってあたしたちのところに来て」

 リリア国王都はそれほど大きな街ではないため、宿の数も限られている。

 アルはクルミに分かった、と言い、パティとアルはクルミたちと一旦別れ、二人はリリア国の城を目指して出発した。

 

 南大陸リリア国は、メイクール国とさほど変わらない面積の国土を持っている。リリアは気候が熱いため、太陽に強い果物や野菜の実りは良いが、その分、陽に弱い作物はあまり育たない。北西大陸は、逆に陽に強い果物は実らず、陽に弱い作物が育つので、両国は毎年多くの作物で貿易を行っていた。


 アルとパティは二人、港街ガシューの、賑わいを見せる露店の通りを歩き始めた。

 ガシューはそれほど大きな港街ではないが、屋台の他に、旅人用の土産屋や女性用の小物の店等もあった。

 パティはその店の前に並んだ、綺麗な腕輪や髪飾りをの前で足を止めた。


「パティ、前に腕輪を失くしたそうだね。気に入った物を一つ君に贈るよ」

 アルは屈んで、パティの見ている腕輪や髪飾りを一緒に見た。

「アル、でも……」

「この店のものは高価なものじゃないから、気にすることはないよ」

「あ……はい」

 パティは瞳を輝かせ、アルと並んで小物を見て、うーん、と言いながら、悩んでいた。


 あまりもパティが悩むので、

「これはどうかな?」

 と、助け船のつもりで、アルは小振りの花の形を象った髪飾りを手に取り、それをパティの髪にそっと触れさせた。

「よく似合うよ」

 アルが優しく笑んだので、パティは胸がきゅ、と締め付けられた。


「これにします」

 パティは嬉しそうに言い、花の髪飾りを持ったまま、

「アル、有難うございます。大切にします」

 と笑顔を見せた。彼女の笑顔にアルもまた心が締め付けられたのだった。しかしその訳は、パティとは全く異なった理由だった。

 アルは銀貨を払い、パティに飾りを付けてやると、二人は店から出ようとした。するとその露店の通りは混雑していたため、パティはすぐ後ろにいた、背の低い、少し小太りの男とぶつかった。


「あ、すみません」

 パティは謝ったが、男から反応はなかった。

 日差しが強いのに、男の格好はフードのついた長いぽんちょを着て、だぼっとしたパンツを履いていた。  

 フードを目深に被ってはいたが、男はじっとパティを見ていたので、アルは男の視線が気になり、パティをそっと引き寄せ、行こう、と促し、二人は店を出た。

 店を出たパティの後ろ姿をじっと男はまだ見つめていた。


「天使……?」

 男はパティの膨らんだ背から舞い落ちた一枚の羽根を拾い、そう呟いた。


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