笑う所に恐竜来たり
「お、お、俺たちは
行商人のばあちゃんに
たくさんお金借りてたんだねぇ。
それがどんどん大きくなって
今は……、タッパなんだねぇ」
「兄貴。それタッパじゃなくて
下っ端って……、なにバラシてんだよ!」
「ん? あ、あ、あぁー、本当だねぇ」
ブラクバは特に気にしていない様子で
笑い飛ばして、頭の後ろをポリポリかく。
リードは両の拳を地に叩きつけ
声にならない声をあげつつ、嘆いた。
「……忙しいふたりだな」
「そうだね。すっごいマヌケに見える」
「「マヌケはやめて」」
サンサ兄弟は息ぴったりに言い放つ。
四人は顔を見合わせる。
そしてベルードがふふっと笑うと
四人は腹を抱えて笑った。
* * * * *
「……といってもなぁ。
行商人のババアに直接こっちから
会うことはほとんど出来ない。
いつも仲介人……、おっかない
姐さんが来るから
そこからあれこれ言われるだけだ」
リードは半ば諦めた様子でそう話す。
「いいのか。そんなに話して」
「――どうせババアに会うんだろ。
その時に会っても、ここで会っても同じ。
それなら、ここで知ろうが聞こうが
なんら変わらない。早いか遅いか、になる。
もっとも、姐さんに聞けば早いんだが」
「で、で、でも、遅いんだよねぇ。
姐さんは、時間きっちり、なんだねぇ」
トカゲのブラクバが
キョロキョロと当たりを見渡す。
ふとブラクバの横っ腹に
入った蹴りの痕が
すっかり消えていることに
ハークとベルードは気づく。
また、背の高いベルードは気づく。
トカゲのブラクバに向かって
金属片がジリジリと近づいている。
そこらへんにたまたま落ちていた
ネジやバネがゆっくりと動いている。
「お、お、遅いのねぇ……」
ブラクバは心配そうに
短い両の手を揉む。
「確かに変だな。
俺たちが来る数分前には
いつも待っているんだがな」
ベルードはふと耳を立てる。
「なんか足音が多い、ね。
しかも、すっごい大きいのも」
「足音が多い? なんだろう……。
もしかして、さっきの軍の奴らじゃ……?」
「ぐ、ぐ、軍だってぇ?!」
サンサ兄弟は飛び上がる。
ブラクバは頭を隠そうと丸まる。
リードは周りをよく見まわして
注意深く意識を向ける。
「お、おいテメェら指名手配かぁ!?
あのコウモリ野郎の回し者かぁ!?
それともお尋ね者ってやつかぁ!?」
「「たぶん違う」」
ハークとベルードは
サンサ兄弟とは正反対に
冷静に答える。
* * * * *
カツカツと靴の音が近づいてくる。
ベルードが先に気づく。
音の方へと目をやる。
リードも続いて気づくと
音の方へ目を向ける。
靴の音に混じって、連続の発射音。
「あ、あ、あ、来た。
来た来た。姐さんだ!」
「……いや、姐さんと、何かーー」
音の方の少し上。
コンクリートの壁が破砕され、吹き飛ぶ。
砕けた瓦礫は、石ころにまで
小さく飛び散った。
「おや。見慣れない人たちーー」
「姐さんだ……」
ハークは目視する。
そこから飛び出してきたのは1人の女性。
白と黒の服。袖は彼女の手首まである。
袖の先からは白のフリルがちらりと見える。
装飾のボタンは少しくすんだ金色。
頭には装飾のような段になった白い何か。
足首まで隠れる長いスカート。
それを留めるべくつけられた白のエプロン。
褐色の肌に縁の細い眼鏡。
三編みが幾重にも結われ、まとめられた緑の髪。
何物も届いてしまいそうな
細くしなやかで艶やかな長い手足。
「今日は5分前行動なのですね。
なるほどいい心がけです」
姐さんと呼ばれた女性は
後ろから迫る物を目視せずに
ハークたちへと地を跳ぶが如く突き進む。
「そ、そ、そうです、ねぇ!」
姐さんと呼ばれた女性と
それを追う複数の兵士。
「いたぞ! ゆけ!」
兵士の指示で進むは
至るところから轟音を立てる
巨大な、恐竜。
「ギャアアアァァァァ!」
その咆哮は風圧こそ強いものの
それは電子機械音であった。
目が突如ギラリと怪しく光ると
後ろ足が大きく開かれ
姐さん、とその他を狙う。
「うわぁぁぁ出たァァァ!?!?」
「稼ぎましたか、クソッタレども」
「いまそんな時じゃないが姐さん!?」
「わ、わ、わあぁぁぁ!」
恐竜はドシンドシンと地を蹴り
姐さんと呼ばれた人物に突進する。
振り回すはギギィーと
軋む音を響かす巨大な尾。
壁を柱を辺り一帯をなぎ倒す。
それを表情ひとつ変えず
ひらりひらりと躱すは姐さん。
その一瞬。恐竜の足元に目を移す。
「ここ、かしら」
恐竜の死角、腹下へ滑り込む。
恐竜の片方の脚へくるりと体を返す。
「たとえ機械でも、同じ」
その勢いのまま、腕を支点とし
恐竜の後ろ足に、姐さんの鋭い蹴り。
「ガガッ、ガーー」
鋭い蹴りは恐竜の体勢を崩す。
その瞬間から、その足で器用に
重さなど存在しないような様子で
恐竜をぐるりぐるりと手玉に取る。
スカートがその回転により
外へ外へと広がっていくが
その中はどういうわけか見えなかった。
そのまま仕上げと言わんばかりに
恐竜を宙へ放り投げる。
「これで、終い、です」
恐竜より上へ飛び跳ね
竜の脳天へかかと落とし。
勢いそのまま地も踏みつけ、恐竜を制する。
「あ、あぁ、あぁ、撤退ィー!」
兵士たちはそのまま後退していった。
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ありがとうございます。
投稿が遅れ申し訳ありません。
続きます。次話投稿予定は
2022.1.3(月)です。
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