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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
行商人とクレスヴェン闘争
95/322

一時休戦と小銭拾い

「に、に、逃さないもんねぇ!」


「よっしゃ! 兄貴やっちまえ!」


その時、遠くから駆ける音。

風を切って迫る、細く黒い影。


「――それは、ダメな、わけでッ!」


「「……えぇ!?」」



トカゲと声の方へ目を移す。


トカゲはそれを視認する前

自身の横っ腹に、まっすぐ且つ

強烈な一蹴りが、打ち込まれる。



男が見たのは

突如として弾丸のごとく飛び出し

細くしなやかだが狼のようなその脚。


トカゲの横っ腹から向こうへと

衝撃が貫いていく様子だった。


「お、お、おあぁぁぁ……」


トカゲはそのまま落ちず

誰もいない場所へ力なく転がる。


壁にめり込み、ぐったりと地面へ落ちる。

口からだらりとよだれが垂れ

意識を失っていた。


「う、う、うぼあぁぁぁ……」


“ズシィィィン”


「あ、兄貴ぃぃぃ!?」


男はトカゲに向かって駆け出す。

とにかく抱き起そうとするも

その巨体を動かすことは叶わなかった。



* * * * *



「なんだってんだよ!

 俺らはただここでこうして――」


「て、て、鉄くずとか金属とか

 よければお金とかを

 集めてたんだねぇ!」


ふたりは正座し、ハークたちへ文句をいう。

男の頭には複数のたんこぶ。

トカゲは蹴られた側に手をおく


「……トカゲ? もしかして……」


「……うん。間違いない。

 わるいこだね。においで分かる。

 けど……」


「ん、ん、んうぉあ?

 なんで見つめるんだよぉ」


「人に戻らないのが気になるね」


ハークは首をかしげる。


わるいこならば、動物に変身するも

時間が経過すれば元に戻る。


特異な例で、レグリシス山でのクジラ。

これに似たものか、とハークは思った。



「兄貴は、ずっとこのままなんだ……」


ハークやベルードが困惑する様子に

男はそう小さくつぶやく。


「このまま?」


「いや、その前に!

 お、おまえら何者なんだ!?

 アイツみたいな力を使って

 おまけに武器まで持ってるなんて……。

 聞いたことがない!」


男は慌てた様子でふたりを指さす。


「う?」


ユミナがハークの服から

スポンと顔を出す。


するとユミナの姿を見たトカゲが

一瞬にして青ざめ、固まる。


「わ、わ、わわわわわ……」


トカゲは身体が文字通り飛び上がり

わたわたと慌てふためく。


急いで深々と頭を下げ、額を地につける。

短い手も何とか地につける。


「兄貴?! 何やってんだよ!」


「わ、わ、わからないけど

 なーんかこうしないと

 いけない気がするー」


「どういうことなんだぁ!?」


トカゲは頭を下げる様子に

ハークたち3人は頭をかしげる。



* * * * *



「――名乗った方がいい、よな。

 えっと、俺がサンサ・リード。

 んでトカゲで兄貴、サンサ・ブラクバ。

 大盗賊サンサ兄弟って、知らない?」


「「知らない」」


「だよなぁ……」


ハークとベルードの反応に

リードと名乗る男は落胆する。


「自分から大盗賊って……」


「で、で、でもでも、俺たちは

 盗んだことはあってもバレてないし

 しかも色々盗めているんだもんねぇ~!

 俺の尻尾と、リードの頭があれば

 大丈夫だもんねぇ~!」


トカゲのブラクバはしっぽを振り

とても自信満々に自慢する。


「そう! 兄貴の尻尾を使えば

 金目の物、銅貨や銀貨なんかを

 回収出来たり、調子よければ

 そのまま重いものでもするりと……

 兄貴、なんで言ってしまったんだ?!」


「え、え、ええぇぇ? 俺言ったっけ?」


サンサ兄弟はハークたちそっちのけで

ああでもないこうでもないと言い争う。



* * * * *



「それで、その

 わるいこってなに?

 兄貴が戻らないのに関係するのか?」


「それは、分からない。

 今わかるのは、ベルードの鼻で

 わるいこかどうかってことだけ」


ハークはベルードを指さして答える。

ベルードは少し照れている。


「ベルード?

 なんか聞いたことあるな……。

 どっかで俺たちと出会った?」


「いや、初対面のはず。

 俺そんなに知り合いが

 居るほうじゃないワケで」


ベルードという名前に

ふと気になったのか

リードはブラクバへ目をやる。


「……覚えてないよな、兄貴」


「お、お、俺に聞かれても

 困るんだよねぇ」


「だよなぁ。この通りだもんな」


「そ、そうだねぇ〜」


「……はぁ」


リードは額に手を当て、天を仰いだ。



「ところでさ『行商人』て

 言葉に聞き覚えはーー」


ハークの質問に

サンサ兄弟はサササと後ずさる。


「ぎ、ぎ、行商人?!」


「いやいや、まだ取り立ての

 時間が立ってない!

 てめぇらあのババアのなんだ!」


「……なにこの慌てよう」



「ーーつまり、お前ら二人は

 その行商人を探していると。

 仲間がひとり人質になっている」


「人質は可哀想なのねぇ。助けようリード」


「……兄貴。目的忘れている?

 あのババアへの返済金稼ぎに

 こうしてーー、おっと」


「返済金?」


「子供は知らなくていいん、だ」


リードはハークの額に

指先をコツンと当てて

話をうやむやにして、立ち上がる。

ここまで読んでいただき

ありがとうございました。


続きます。次話投稿予定は

2021.12.31(金)です。

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