表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
行商人とクレスヴェン闘争
94/322

地下の先で、トカゲと男と、出会った

――来た! 来た来た!


その声はが大きくなるにつれて

ハークにかかる引力も比例していく。


しかしそれとは反対に

縦横無尽に振り回される。


コンクリートの壁や

柱にぶつかっていく。


ハークは何度もぶつかる中

とっさに激突していく部分だけを

竜化して自身も守っていく。


激突の衝撃が伝わらないよう

ユミナを包み込むように守る。


「(すごい、振り回される……っ!

 ユミナを守るだけで精一杯……)」


「うー!?」


ハークのパーカーの中。

ユミナは心配そうにつぶやく。


「大丈夫、だ」


そしてようやく安定し始めたのか

まっすぐ、とある方向に引っ張られる。


ビルの下の下。地下へと引っ張られていく。



* * * * *



ハークはその先で

ハッキリとした話し声を聞き取る。


そして、その声がよく聞こえる先に、壁。


ハークはそのまま壁をぶち抜いて

広い空間の宙へと放り出される。


地下。そこは天井もとい地上からの

わずかな穴から差し込む光だけが

照らし出している。


「来た! 来た来た! 来た!」


「ぃよっしゃ! これは大きい!

 ……って、あぁ?」


その下、二人いる。

ハークは吹き飛び宙を舞う

コンクリートの破片の隙間から

視認する。



ひとりはくたびれた作業服を着た

三十代くらいの痩せた男。


あごに細かな無精ひげと

土ぼこりが顔やら服やらが

そこかしこについている。


首には使い古されたタオルをかけ

何本か指先が抜けた軍手をつけている。



もうひとり、いやもう一匹。


ずんぐりむっくり巨大な生き物。

その巨体を隠すべく灰色のボロ布を被せられる。


しかしそこから見えたのはしっぽ。

何枚もの深緑色の鱗をまとった

天に掲げられた螺旋の尾。

尾の先は銀の球体がついている。


「あ、あ、あれだ! あれあれ!」


「……なんか人? いやいやいや!

 もうこの際、仕方ない!

 引っ張っちまおう! ヤッチマエー!」


「あ、あ、アイヨー! フゥゥゥンヌゥゥゥ!」


男の掛け声に、生き物は鼻息荒くし

尾をピィィィンと伸ばす。


一層ハークの体が吸い寄せられる。



「(敵、か? わけがわからないが……!

 ウェネスで一旦距離を――)」


ハークは宙で構える。

ユミナを片手で守りつつ

鉄槍ウェネスを出現させる。


構えた瞬間、鉄槍自体が重くなる。


先ほどまではハークの体ではなく

鉄槍の方に吸い寄せの力が強まる。



「あ、あ、あれ!?

 あれ?! なにあれ!?」


「が、ガキのくせに

 武器持ってやがった!?

 ……仕方ねぇ。兄貴!

 あれを奪っちまおう!」


生き物が力むと、体を隠していた

ボロ布が内から外へと弾け飛ぶ。


ひらひらと舞い散る布の先にいたのは

二足で直立する巨大なトカゲ。


ハークが飲み込めそうなほど

大きく開いた口。

そこからは鋭い牙ではなく

数本欠けているも人のものに似た

歯で食いしばっている。


血が巡り真っ赤になったその顔は

紛れもなくトカゲのよう。


小さな二つの目は

カッと見開いているようだが

それでも体に見合わないほど小さい。


ジャラジャラと鳴り響くほど

硬そうな鱗で覆われた皮膚。

それらは大半が灰色をしているが

ところどころ剥げており

そこからはオレンジ色が見える。


足は巨体を支えるのにふさわしく

コンクリートの柱のごとく太く短い。

足の爪もそれを支える、というよりも

四角く、先がボロボロに欠けている。


体格に合わない細い腕

その先にゴツゴツした四本の手指と爪。


「トカゲ?!」


「……あ? ……あ! しまった!

 兄貴よく見ろ! 正体バレてる! バレてんだって!!」


「んむぅ~? うわ!

 あ、あ、本当だ。どうしよう……?!」


「だから言ってんじゃんかぁ!

 仕方ない! こうなったら……!」


トカゲに耳打ちする男。

トカゲはそれに気を取られてしまったようで

しっぽをおろしてしまう。


「うわッ?!」


ハークは引力を失い

そのまま地面へと落下する。


「ちく、しょう……!」


とっさに足に意識を集中させ

竜の頑丈な脚にて着地する。



「うん? ……、あ! やっばい!

 下りちまった!?」


「あ、あ、あ……、どうしよう!?」


「何してんだよ兄貴!? 話する時でも

 しっぽに集中するの、練習したろ!?」


「そ、そ、それ言われたら

 何も言えないんだねぇ……」


ハークは槍を構えつつ二人と相対する


「うわわわ……

 アイツも姿変わりやがった!?

 どうする……。どうする……」


「(あいつ、も……?)」


「しか、しか、しかたない。やるしかなぁい!」


「ま、待てよ兄貴?!」


ドタドタと駆け出すトカゲ。

勢いそのままに尾を振り回し

ハークへ叩きつけんとする。


ハークがひょいっと横に避ける。


「お、お、おろららららら……」


尾を支点にトカゲの身体が浮き上がる。

勢いが止まらず、ひょこひょこ数メートル先まで

進んでしまう。


「す、す、すばしっこいのねぇ!

 に、に、逃さないもんねぇ!」


トカゲは緩やかにカーブし

ハークをとらえる。


しっぽの先を自身の前に突き刺し

その巨体を、宙へ。


トカゲの体は少しだけ宙にとどまる。


「こ、こ、これで、潰れる、のねぇ!」


腹を下に、大の字となり

ハークを潰さんと落下していく――

ここまで読んでいただき

ありがとうございます。


続きます。次話投稿予定は

2021.12.27(月)です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ