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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
【わるいこ】たちの、戦略的逃走
92/322

情報の大切さと危うさ

――待て! 危険だ!



レムザの一声をよそに

会議室へ突撃する兵士数名。


会議室から吹き付ける突風。

兵士たちが確認したのは、黒外套の人物。



* * * * *



黒外套は兵士たちに気づいて振り向く。


少年と青年――ハークとベルード――を抱えていた。


両名は深い傷を負っている。


ハークは顔に打撲やうっ血の痕。

黒外套の小脇に抱えられている姿からは

意識はなく、ぐったりとしている。


ベルードもハークと同じような傷を

受けているようだが、被害の大きさが違う。


口からダラダラと血がしたたり落ちる。



「な、なんだ……、あいつ……」


「うろたえるな! う、撃て! 」


兵士たちは銃を構えて

黒外套を狙って一斉に

引き金を引く。


しかし弾は消えていく。

黒外套の中へ、黒の中へと

吸い込まれていくようで

さながら闇に消えていくような

手応えのなさを兵士たちは感じた。


兵士の一人が弾倉を交換すべく

装備から取り出そうとする。

しかししっかり持ったはずなのに

弾倉は地面にポトリと落ちてしまう。


「ちくしょう! こんな時に!」


兵士は拾わずに、別の弾倉を使った。



黒い外套は兵士たちを一瞥した後

大穴から飛び出していく。


兵士の一人がそれを追うも

大穴から見えたのは

ビル群を難なく飛び越えていく

黒外套の姿だった。



* * * * *


「ーーそれで、君は突然現れた

 謎の男に不意を突かれた、と。

 エリーをかばった挙げ句に

 吹き飛ばされた、と」


「その通りです」


「ふぅむ」


少佐は監視カメラの映像を眺める。


確かに爆発音と共に

大穴が出来上がっている。


レムザの証言は間違いない。


しかし不可解に思えたのは

何も無い空間から、突如として現れたこと。


軍いえども、知らないことが

あるのかと調査したい所だったが

後の祭りである。


「しかし君のような男が負けるとは

 よっぽど腕の立つ人物みたいじゃないか」


「気配も予兆もなかったのです。

 流石にそんな相手は、誰だって

 負けてしまうでしょう」


軍の監視カメラはそこら辺の

使われるようなものではない。

頑丈かつ正確。映像データも

その通りのモノを映し出し、記憶する。


だからこそ少佐は映像を元に

レムザや兵士たちの話から

黒外套について思考する。


「その、黒外套、か。何か特徴は?」


「見たまんまのヤツです。

 ……ひとつ、気になることが」


「なんだね」


「南東部の噂、聞いたことは」


「往々にして把握しているつもりだ。

 どんなだね」


「夜な夜な現れる化け物の噂です」


「それは市井のーー」


「いえ、そこにしばらく

 住んでいた研究所スタッフで

 今回この場にもいたハークからも

 同様の話が挙げられています。

 真実としては定かではなく

 噂が有ることは間違いありません」


「……話を聞かせてもらおうか、レムザ」


少佐は報告書にどう書くかと思案し始めた



* * * * *



「ーー僕が人質になり

 レムザさんと中尉が

 事件解決のため奔走すると」


イチモは焚き火の前で

レムザとシャル中尉の

提案を復唱する。


「それしか方法はない、犯罪者」


「犯罪者じゃなくて、僕にはイチモーー」


「一緒くたにするな、と思うだろう。

 軍としては余計なことに

 気に止める必要は極力無くせとのことだ」


中尉は腕を組み、踏ん反り返る。

軍帽を深くかぶり、鋭いその目は

より一層強まる。


「なぜイチモだ?

 そもそも人質が必要なのか」


「――少佐は用心深い。

 それこそ今回の件の重要な部分

 研究所と無形無貌の集団の両方を

 知る人物を、手元に置きたいと考える」


「……だが現状、研究所側こちらの人間だ。

 何かあれば軍の立場が危ういだろう」


「そんなもの、少佐ならもみ消せる。

 好きなように出来る。だからこそだ。

 得になれば大切にするし、自分のためなら

 敵だって温情をかける」


「ーーなら、仕方ないな」


「良くないですよ!?」


「まぁ落ち着け。だがそうすれば

 少佐は必ずイチモを守る。

 最低でも、双方との橋渡しにもなる。

 この件が終わるまでは」


「最後は殺されそうですけど……」


「……こちらでも、口添えはしてやる。

 犯罪者、貴様はできる限り

 協力姿勢を貫け」


「無茶苦茶ですね……」


決まりだな、とレムザは立ち上がる。

タバコを一本取り出す。

口に加えて、ライターに手を伸ばす。


しかし、無い。


仕方なく、空を見上げ

一息つくと、焚き火にタバコを近づける。



* * * *  *



南東部。

ビル群の上を飛び跳ねる黒外套。


「そろそろいいんじゃないか」


「……いや、もう少し。匂いがあるね。

 一旦、路地裏に隠れようか」


黒外套は路地裏へと吸い込まれていく。



路地裏。日があまり差さず

そこに面した建物の窓は

どこも閉められている。


大通りに出るような所でも

まるで線を引かれたように

明暗を分けられている。


黒い外套は人気のない

雑居ビルへと姿を隠す。


そこからはあの複雑怪奇な

駅がすぐそこに見える。


「うん。匂いはない。

 降ろすよハーク君」


その声に黒外套から出てきたのはハーク。

そして顔を覆っていた黒外套を脱ぎ

ふぅと息をつくべルードの姿であったーー

お疲れさまでした。

ここまでが11話です。


ここまで読んでいただき

ありがとうございます。


続きます。次話投稿予定は

2021.12月中です。

作者の諸事情により

休載します。


申し訳ありません。

よろしくお願いいたします


※追記※


2021/12/05 13:22加筆しました

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