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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
研究所本部へ
9/322

ハークと博士と黒いライオン

「改めて、アナグマ博士です。

 ハークくん、初めまして」


輸送車内で博士はそう名乗った。

ハークは目の前の人物を注意深く見つめる。


ハークの想像では、白衣を着ているも

ひげが立派で、身なりが整った背の高い

口が真一文字に閉じた気難しそうな

壮年の男だと思っていた。


しかし目の前にいるは

ふちの太い黒い眼鏡をかけており

現れてからずっとニコニコと笑みを絶やさない。

頭のてっぺんの周りだけすっかり髪などない。

おまけに背も自分より少し高いくらいで

ひげは一切ない。


自身の予想よりも遥かに違う人物で

ハークは少し戸惑った。


「ど、どうも。ハーク、です」


* * * * *


「博士。駅には何か用事で?

 いつものバッグを持っていたし

 出張の帰りっすか?」


「ううん。二人のお迎え。

 だって、迷うでしょ?

 あの駅、迷路だからね」


博士はカラカラと笑う。


輸送車両に設けられた格子越しに

静かに眠った黒いライオンを見つめる。


まだ人間に戻っていない。

ベルードの鋭い嗅覚により

わるいこであることは分かっていた。


しかし薬を打ったのに人へと戻らない。

おおむねすぐに人へ戻るはずだが

ライオンの彼女は、未だその気配が見えない。


何か理由がありそうだ、と

博士はあごをさすりながら

思案していた。


「はぁー。凄いねぇ、ライオン。

 滅多に見ない。狼でさえ珍しいのに、ライオン!

 百獣の王様で、しかも黒。強いよぉ!」


老人はニコニコしながら見つめる。

その目はキラキラと子供のようだった。


「(ベルード。この人、本当に話に出ていた

 アナグマ博士なのか? なんかこう……)」


「(ああいう博士だから。

  研究者ってあんなのが多いって

  レムザさん言ってたし)」


* * * * *


「ライオンさんは十四番ね。

 一応、両腕にだけ鎖繋いどいて。

 あとご飯は、生肉と焼肉の両方」


老人の指示にスタッフらしき数名が

ライオンの檻を研究所内へと運び出す。


「さて、ハークくんとベルードは

 たしかここに来たのは『研修』なんだよね。

 研修って物々しくて嫌だけど

 体裁上そう言わないと、ね。

 やることは……、ハークくんは座学から。

 ベルードは身体検査からね」


「身体検査?」


博士いわく、わるいこは突発的に

人に戻れなくなる例もある。


人としての意識ある状態で

動物やらになったまま姿が戻らなくなると、

恐怖や混乱から、人であったことを忘れ

動物やらになってしまうらしい。


つまり、その兆候を調べるためである。

また、人とわるいこを行き来している安定期を

観察し、他の人にも生かすためでもあった。


「それじゃ、ベルードはいつもの検査室にね」


ベルードは別のスタッフと一緒となり

違う部屋へと入っていった。



研究所内は一種の学校のような内装だった。


所内には学校のような部屋が並ぶ。

机やイスが規則正しく間をあけられている。

黒板には様々な落書きや授業内容らしき文字列に

上部分は届かないのか、半分から下までが

頑張って消した痕が見えた。


それだけなら普通の学校に似た施設だが

よく見ると、天井には数台の監視カメラが

等間隔に設置され、絶え間なく動きながら

中にいる人を追いかけていた。


「あの子達は安定期に入っててね。

 凄いよぉ、あの子達。

 ああして遊べるのって頑張ったお陰の上で……」


博士がハークとベルードを案内しつつ

彼らの姿を大変喜ばしいとしみじみ語っていた。



「あぁいた! 博士!

 ライオンが元に戻りました!」


若いスタッフが慌てて伝えに

廊下の向こうからやってきた。


「あぁそうなの? よかったよかった。

 ……けど、慌てなくてもいいのにー」


スタッフが息を切らし、息を整えた後

博士からの言葉ではなく、すぐさま要件を話す。


「ライオンに変わっていたのは

 女優のエリー・スカーレット!

 いま話題になっている方です!」


エリー・スカーレット。


彼女は昨年デビューを果たした新人女優である。

多彩な演技と役への高い完成度から

デビュー前から話題になっていたのだと

スタッフは語った。


「その、カーペット、さんは有名人なんだ。

 私は知らないなぁ。ハークくん知ってる?」


「いや。テレビとか見れなかったし」


それもそうだね、と博士は笑いながら答える。


いやいやそんな場合ではないです! と

スタッフは博士の手を強引に引いていく。

ハークも迷子にならない様ついていった。



続きます。


次話の更新予定は2021年1月29日です。

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