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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
巨毒狐を倒すは、竜か、狼か
73/322

???は遅れてやってくる

――失礼します。

 

「遅れて申し訳ありません」


ノックなしに法廷へ突然入る人物。


扉から現れたのは

金髪の凛々しい痩せた男。

慌ただしくかつ法廷をぐるりと

見渡したのちに、裁判長のいる席へと

目をやった。


黒をベースに少し金色が混じり

流線形と雲の模様が光の加減具合で

見えるよう施されたスーツを着ている。


手には分厚い書類を抱え

細いフレームのメガネをかける。


金髪は長く、後ろへと流され

後ろの首筋にて細い結紐で

蝶々結びで止められている。


後ろにまとめられた髪の先は

彼の肩に横たわるようにしなっている。



「ナドル・ファタール裁判官。またですか。

 毎度このような状態にならないようにと

 念を押されているはずですが」


ソニア裁判官が

ナドルと呼ぶ男に言葉をかける。


「申し訳ありません。

 別の裁判を3つ終え

 先ほど支度し終え

 この場に着いた次第です」


ナドル裁判官は裁判長ソニアへ

深々と頭を下げた。


その様子に、ソニアは肩を落とし

ふぅ、と息をつく。


「……原告側、バルドリア山麓村の席へ。

 グーン裁判官、改めてとなりますが

 これまでの流れの説明を」


「わかりました。ソニア裁判官」


ナドルはグーンの左横に座り、説明を受ける。



* * * * *



「(遅かったじゃないかナドル裁判官。

 ウィルクスから電話をかけさせたが)」


「(すみません。

 着信履歴がたまっているはずです)」


「(はずって。仕事熱心なのはいいが

 電話は出てくれ。それと――)」


「(すみませんが、裁判の流れを。

 話は終わってからでも差支えない

 というコトで)」


「(……わかった。む、それは)」


「(これですか。ウィルクスさんから

 お借りしたものです。

 先ほど急いでいた彼からこれを)」


「(先ほど……、あぁいない。

 またトイレか。いや、いい。

 それでいまはーー)」


グーンとナドルは数度会話する。


たったそれだけの説明を受けた後

持参した書類をパラパラめくり

ナドルは赤ペンで線を引いた。


「内容、理解しました。

 よろしくお願いいたします」


ソニアへ改めてお辞儀をし

ナドルは着席しなおす。



* * * * *



「(あれ……。あの人……)」


「(うー? あうあー?)」


ユミナはハークの服を小さく引っ張る。

ナドル裁判官を目をやり、頭を傾ける。


「(見覚えあるのか?)」


「(う!)」


コクリと頷くユミナ。

直後、鼻をひくひくさせる。


顔をしかめる。


「(うっ……うー)」


「(っ! なんだこの……

 キツい匂い。

 頭がズキズキする……。

 グーン、さんやソニアさんは

 何ともないのか)」



グーンと話終えたのか

ナドル裁判官は懐からひとつの

木の道具を取り出す。


額に流れていない汗をぬぐい

パタパタと自身へあおぐ。



「兄、貴……?」


トニー裁判官の横。

手枷をつけたベルードが

鼻をひくひくさせる。


少し含んでよく確かめてみる。

かすかに、しかし確実な匂い。


もう一度とベルードは

静かに吸い込んだ瞬間。


「うっ!? ゴホッ、ゴホッ!」


すぐに鼻と口を、手で抑えた。



それに気づいたトニー裁判官は

ベルードに駆け寄る。



* * * * *



「(どうした?)」


「(匂いが。あの人が入ってから

 この場にすごい、この、匂いが)」


「(なに? それはーー)」


「(わるいこ、ぽいけど、そうじゃない。

 そんな匂いなワケっすが、他の匂いで

 かき消されて分からないっす)」


「(わかった。警戒する。

 ベルード、退室して周囲のーー)」


ーーゴホッ、ゴホッ!



* * * * *



ベルードと数度話した後

トニー裁判官は挙手をする。


「ソニア裁判長。申し訳ありません」


「何事です」


「被告の関係者であるこの男が

 具合が悪いのです。退席を申請します」


「……嘘ではありませんね?」


「嘘、じゃないっす。

 腹、痛いっす。あと頭」


ベルードは強く咳き込む。

鼻をつまみながら口を開く。


「……わかりました。特例により

 被告の関係者であるベルードの

 退出を認めまーー、ゴホッゴホッ……」


ソニアも咳き込みはじめ、片目から涙がこぼれる。


「失礼しました。裁判をーー」


「その必要はありません」


ソニアの発言を被せるように、ナドルは書類を手に声を発する。



* * * * *



「被告は子供の保護を謳うものの、その実、子供の売買を行っている

 と所内から密告がありました。それも年に数人。行き先はひとつ。

 一夜にして街を消し去るほどの力を持ち、テロリストと取れる武装集団。

 特に、現在まで鳴りを潜めてますが、十数年前に台頭し今も知る者がいる

『レッド=アシッド』と調査報告もここにーー」


書類をまるで絶対の証拠と言わんばかりに

ナドルは天高く掲げる。語った内容に熱をこめて

聴衆へと演説を打たんとするひとりの男がそこにいた。


「ーー断じて、それはありえない!」


ナドルの話を打ち消さんと

トニーは机に拳を叩きつけるほど

荒々しく主張する。


「おや、お知り合いがいるので?」


「……いや。レッド=アシッドは十数年前に壊滅している。

 鳴りを潜めているなど、まして聞いたことがない」


「よほど思い入れのある処で。……ですが、事実です。

 レッド=アシッドは、特殊部隊を派遣しています。

 あぁっ! まるで、新たな秩序を創らーー」


「兵士を派遣するなど断じてーー」


"ガンっ!ガンっ!"


ソニアがガベルを叩く。


その打撃音は

それまでの空気を一新する。


「ナドル裁判官。そこまで。トニー弁護士も席へ戻りなさい。

 ……それが本件に関わることでしょうか。私にはさも真実と言うも

 都合の良い証言や事実だけに、目を向けているように感じられます。

 本件は、山麓村での出来事について精査する裁判です。

 グーン裁判官。隣にいながら、なぜナドル裁判官をーー。

 グーン裁判官?」


ソニアの声に、反応はない。

うつむいたまま、書類に目を通したまま

固まっている。


次の瞬間、グーンは椅子から倒れた。

手につかんだまま書類もぶちまけられる。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

投稿遅れまして申し訳ありません。


続きます。次話投稿予定は

2021.9.10(金)です。



追記:2024年3月11日より

一部内容を変更いたしました。

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