本件に関する事項について
便宜上、ここから10話です。
よろしくお願いいたします。
「これより、バルドリア山麓村に
関する裁判を行います」
一番上、真ん中に座るのは
裁判官イヴェル=ソニア。
彼女が裁判開始を宣言する。
表情は凛々しく、口は閉じられたまま。
その目は等しく目の前の人々へ向けられる。
先ほどより少し着飾るものが増えた
法服に身を包む。
座席には木槌ひとつと
書類数枚が置かれている。
「では被告、前へ」
「はい」
ソニアの一声に現れたのは
アナグマ博士である。
両手には手錠が掛けられ
すぐ近くには警官が1人付いている。
博士は少し元気がないようで
視線はやや下を見ている。
服も白衣のままであった。
しかしよく見ると真新しい物で
ハークと出会った頃と物とは違った。
「被告。名前、職業、住所を」
「はい。アナグマといいます。
職業は医者およびわるいこ研究所所長。
住所はエイール大陸南東部、です」
博士は振り返らずに
ただ被告人席から
まっすぐソニアの方へと
顔をあげる。
「……よろしい。
では、誓ってください。
真実を話し、嘘偽りなく
この場で答えることを」
「はい。私は、真実を話し
嘘偽りなく答えます」
「では、始めます」
裁判長ソニアは、木槌を二度叩く。
* * * * *
左右から二人ずつ
書類を手にする者がいる。
アナグマから見て左。
書類を置いたグーンが座る。
グーンの横、扉に近い方に
もう一席空いている。
アナグマから見て右。
同じく書類を置く男。
前髪で目元を隠し、メガネを掛けた
ガタイの良い大柄の赤髪の男がいる。
その横には、銀髪の痩せた男がいる。
ベルードである。
簡素な鉄の手錠がかけられ
そこに座っている。
手錠からは鉄鎖が伸び、床につけられた
頑丈そうな鉄輪に繋がれている。
傍聴席に座ったハークには気づかず
法廷に登場する人たちへと
視線は向けられている。
時折、頬をポリポリと掻いて
裁判の様子を伺っているようである。
「原告。バルドリア山麓村」
「はい。代理を務めます
イヴェル=グーンより
今回の件を述べさせて
いただきます」
ーーバルドリア山麓村への脅威
および報復手段の所持。
ーー同村の規則破棄。
ーー同村への脅威および報復の手段実行。
ーー同村の村長への暴力行為。
ーーその他、家々の破壊活動。
「これらの行為は
被告Dr.アナグマの職員によるもの。
監督不届きおよび破壊行為
元・村人であり現研究所職員の
ロニィ・ジェンへの接触および教唆。
これらの諸々へ、バルドリア山麓村から
訴えがあります」
「わかりました。
被告。内容に間違いは
ありますか?」
「……はい。間違いありません」
ハークは立ち上がりかける。
真実は違う。
しかしそれをウィルクスは止める。
裁判から目を話さず
まるで分かっていたかのように
ハークの前に手を出す。
「(待ってくれよ! 言わないと)」
「(先生からお話されたでしょう!
問題が起きれば裁判が増える、と。
必要以上に話を大きくするのでは
ありませんぞ! )」
冷静な判断であった。
ハークは元の席へ座るも
裁判が良くない方向へと
進んでいることに苛立ちを感じた。
「(む! むむむ!)」
「(ど、どうしたんだ!?)」
スクッと立ち上がり
出入口へと進むウィルクス。
腹部に手を当てつつ慌てて
小走りとなる。
そこに立つ警備員に声をかける。
何か案でも思い付いたのかと
ハークはその方へと耳を向ける。
「申し訳ない! トイレへ!」
満面の笑みで親指立てて
そそくさと法廷を後にする。
内心、ハークはガックリと
肩を落とした。
「次。被告の代理弁護士」
「はい。私トニー・ザレムが
務めさせていただきます」
代理の男であるトニーは
書類を持ちつつ話し始めた。
「被告アナグマは
孤児や親元での生活が困難と判断された
子供達の保護活動に務めています。
主に子供達の健康や心理的ケアを行う
医者であります。
しかし今回の件、渦中のロニィ氏とは
スタッフになる前に接触しています。
ロニィ氏は村での一件後、成り行きで
村から出た後、スタッフとして雇われています。
ーーつまり、ロニィ氏を訴えるなら
分かりかねるが、研究所を訴えるのは
筋違いではないでしょうか」
「被告。それは本当ですか」
「はい。古い知り合いとして
ロニィを思いだしました。
彼へ資金援助を、と尋ねました。
そのため、スタッフふたりに
それをお願いする形で村へ
行ってもらったのです」
そう話すアナグマ博士を
ソニア裁判長はじっと見つめる。
「わかりました。ではーー」
「失礼します。
遅れて申し訳ありません」
ノックなしに法廷へ突然入る人物。
扉から現れたのは
金髪の凛々しい痩せた男。
ここまで読んでいただき
ありがとうございます。
投稿内容の連絡を怠り
申し訳ありません。
続きます。
次話投稿予定は
2021.9.6(月)です。




