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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
【わるいこ】も、裁かれるのか
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天国行きの切符は、ない

「そこの寝ている男は、起きないな。

 疲れているのか」


レムザで隠れたイチモを

グーンはのぞき込む。


「えぇ。ーー掻いつまんで言えば

 何分かなり高度な競技選手で」


レムザがそう答えるなか

グーンは耳だけをそちらに向けて

理解しているようだった。


「高度、か。若い人たちの

 やることはわからん。

 知識を疎かにすればたちまち……」


「貴方。本はいいけど

 体を動かさないとダメよ。

 この前階段を登って

 息切れしてたじゃない」


「あれは難解な件でだな……

 必要な書類や資料が下の階に

 集まってたのもあって……」



老夫婦の話し声に

イチモはゆっくりと意識を取り戻した。


「あれ……。天国へは、電車だっけ」


「なんと。起きたか。

 初めまして。高度な競技選手さん」


「初めま……あれ? 俺は……

 げっ!? レムザさーー」


イチモは状況が理解出来ないものの

すぐ近く、目の前のレムザに驚き

身構えようとする。


しかしイチモの口はすぐ閉じられる。

それはレムザの透明化した触腕による

最速の口封じ。そして一歩遅れて

レムザの掌によって覆われる


「やぁ、起きたかね、イチモ。

 雪崩に、巻き込まれて、

 それは、それは、大変だった!

 ……えー、こちらの方々は

 イヴェル裁判官さんたちだ。

 くれぐれも失礼のないようーー」


レムザは説明口調ぎみに

イチモへ合図する。


「え、あ、は、はい……?」


「いやぁイチモ兄さん。

 大変だったんだ。あの後

 兄さんは落ちて気絶したんだ。

 それでレムザ兄さんが担いで

 来たんだ」


ハークもなんとか調子を合わせて

レムザの説明に付け加える。


イチモは半ば状況が飲み込めずも

ひとまずレムザの話にあわせた。



* * * * *



「君たちは、スキーの選手か?

 それともクロスカントリー

 というやつか」


「イチモがクロスカントリー。

 ハークはスキーの初心者で

 ユミナはやむを得ず私が」


「(クロス、カントリー……?)」


「……なるほど。

 しかし同じ東南ほうへ向かうのは何かの縁だ。

 どうだね。君たちの切符代くらいは出そう。

 代わりに、私らの荷物を頼めるかね」


グーンはそう言って自身の鞄と

電車の荷台に乗せられた

いくらかの大小様々な鞄類に

別車両を指差す。


「荷物運びは歓迎いたしますが

 お金を頂くわけには」


「あら。そんなことないわ。

 私たち、結構資料とか必要だから

 運び手が居るのは助かるわ。

 それに、知っている人なら

 尚更お願いしたいわ。

 ねぇユミナちゃん」


「うー?」


婦人の後押しに

レムザは断りきれなくなる。


「……わかりました。

 では私と、イチモでやりましょう。

 ハークとユミナはお二人を」


「なに。この子がか」


ハークに眼を移すグーン。


彼の鋭い眼光に驚き

ハークはビクリと身体を

跳び跳ねさせた。


「あ、えっと。

 よろしく、お願い、します」


ガチガチに緊張したハークをみて

グーンは小さくふぅと息をついた。


「はぁ……。君、私は

 責めている訳じゃないんだ。

 だからといって優しくはしない。

 代わりに支払うべき物は支払う。

 しっかり頼むよ」


「貴方ったらまた……。

 ユミナちゃんは一緒にいく?」


「あい!」


「え、あの、レムザさんと俺で

 荷物って……」


「イチモ。お二人の好意を

 粗末にしないように」


話はまとまり、四人と二人は

大陸東南を目指した。



* * * * *



「(レムザ、さん。ちなみに切符代。

 どうするつもりだったんですか?

 持っているんですか?)」


「(ーーない)」


「(よかった、わけ、ですよね)」


「(さすがにハーク君だけ

 と思ったら、二人追加は予想外だ)」


レムザいわく

イチモとハークが

あの複雑怪奇な駅から

乗車するところに出くわし

身体を透明化させつつ

様子を伺っていたと話す。


レムザは一人うなだれ

渡りに船であったと内心ホッとしていた。



* * * * *



目的地まで二駅となった時

別の車両から悲鳴が飛ぶ。


「あら、何かしら?」


婦人ソニアは驚くこと無く、平静でいた。

老人グーンは眼を閉じ、耳を立てていた。


「何事かね」


「見てきます」


グーンが立ち上がり、様子を伺おうとし

レムザがすぐさま悲鳴の方へと向かった。



「わ、ちょ、レムザさん!?

俺を掴んでいるの忘れてません?!」


イチモが芋づる式に

レムザの後に引きずられていった。


「ーー器用な人たちだな。

 ……君も、ああ言うことが

 出来るのかね?」


「え、いや、さすがに……」


「そうか。まぁなんだ。

 あそこまではしなくてよい」


「ユミナちゃんは、何か出来るの?」


「うっ! ふー!」


ユミナは婦人の指に

息を吹きかける。


すると、指にあった小さな切り傷の

かさぶたがホロリと落ちる。


その下はほとんどきれいに治っていた。


「あら! ありがとう!

 この前付けちゃって

 痛くて仕方なかったのよ。

 これで傷を気にせず

 書類を扱えるわね!」


「うぇっへへ」


「……君。あれは」


「わ、わからない、ですね」


ハークは目線を斜めに落とし

知らないフリをした。



* * * * *



レムザとイチモが戻ってきた。


それも勢いよく吹き飛ばされ

電車の椅子に打ち付けられた。


「本部、本部。

 指名手配犯、発見。

 これより殲滅します」

ここまで読んでいただき

ありがとうございます。


続きます。

次話投稿予定は

2021.8.9です。

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