ユミナ式湯たんぽ
三人がカマクラに着く頃には
灰色の空は少しずつ切れ間が生まれ
光が雪を木々を照らし出した。
「ユミナも一緒に連れても?」
「置き去りには出来ないね。
ハーク君が見ることで良いかな?」
「あい!」
「なぜユミナが答えるんだ……」
* * * * *
「あの後、レムザさんから
電話あったか?」
カマクラを出て数十分。
研究所分所の道の途中。
雪の感触を確かめながら
イチモは先行し、ハークたちが続く。
「うん? いや、無いよ。
あの人、あんまり喋らないし。
仕事の付き合い程度かな」
イチモはハークたちに振り返らず話す。
「そうなのか」
「新人だし、そういうものだと思う。
……どうして? 気になる?」
「……レムザさんが、よくわからない。
あまり話さず、博士のところに来たし」
ハークがそう答えると
イチモはふぅと息をついた。
「僕と同じだね。
僕はまず来たばかりだし
何より、本部と分所じゃ
あんまり会うのも少ないから
尚更そうだね」
「うーう?」
ユミナは首を傾げて
ハークに目をうつす。
「レムザさん。
俺が保護された所の所長さん」
「う!」
「分かったのか」
* * * * *
「レグリシス山の分所って
まだ先なのか?」
道はだんだん険しくなる。
雪も深くなり、腰を落として
歩かねばならないほどとなる。
また、ハークたちに
雪が打ち付け始める。
「もう少し。
この道を二度折り返せば」
「うー」
ユミナはハークの胸の前
服の間から顔をのぞかせる。
辺りを見回している。
吐かれた息は白くなるも
寒さなど感じていないように見える。
「ユミナが寒がらない」
「着込んでいるようには見えないね。
寒い所の生まれ、育ちかな?」
「こんな雪の世界で
生きられる方がすごい。
俺は最近寒いのが苦手に」
「恐竜、ラプトルだっけ?
それなるからかな?
ほら、ハ虫類だし」
「……そうか。いやそもそも
寒い所出身じゃないな。
寒くても着込むほどじゃないのに」
「大人になると
寒いのに辛くなるよ」
「寒いのか」
「いやぁ僕は寒い所の人だし
いくらか良い方」
「うー? うー」
ユミナは寒がるハークを見て
服の中へと深く潜り込む。
胸辺りから顔をだし
ぱぁっと満面の笑みを浮かべ
目を輝かせる。
「温かい。けどこれって……」
「犬を抱いていれば
雪山で遭難しても生きてた、と
聞いたことがあるね。
それかな?」
イチモの言葉に
ユミナは予想外の言葉だったか
顔がうつむいた。
「う!? うー……」
「なんでしょぼくれるんだ……?」
* * * * *
中腹への道は
二度目の折り返しを越える。
吹雪が襲うことはなくなった。
代わりに雪が天からゆっくり落ちる。
風がないだけでも
ハークには進みやすくなっていた。
「見えてきた。
あれがレグリシス山にある
研究所の分所だ」
イチモが指差す。
見た目は大きな二階建ての
シンプルな山小屋。
ログハウスのような見た目である。
小屋の屋根には一本の煙突があるが
そこから煙が立ち上っていない。
小屋の横には
頑丈そうな黒い鉄製の円柱が数本に
石造りの出っ張りがひとつ。
窓は二重になっており
それが各面かつ各階にひとつはあった。
「研究所というより、山小屋だな」
「聞けば、最初に作られた分所なんだ。
当時は山にわるいこたちは
集まってたらしいんだ。
ではここで問題。
ハーク君は、なぜかわかるかい?」
「え? この雪山に集まる……。
単純にこの近くにわるいこたちが
居たから?」
「あり得るね。けど違う。
……ここが誰も立ち入らない
いや立ち入れられない」
「立ち入れられない?」
するとイチモのスマホが鳴る。
どうやらレグリシス山の研究所である
山小屋の内からの電話である。
イチモは小屋の方を見る。
手をふる誰かの姿が窓越しに見える。
「ここのスタッフだ。行こう」
続きます。
次話投稿予定は
2021年6月14日(月)です。
※21.6.10 8:08 加筆しました。




