ドッジ・ボール
「つまりね。
いろんな人と関わろうっていうこと。
年上年下関係なく。その方法が
遊びだったり、話したりとか色々」
「ざっくりしているなぁ博士」
「まぁ物は試しに。ハーク君」
ベルードはハークの身体を
ひょいっと脇に抱える。
「では博士。
子供たちと遊んできます!」
「うん。今はボール遊びしている
はずだから、混ざっておいで」
「なぜ!?」
それでは、と博士へ手を軽く合図し
ベルードは足早に部屋を出た。
ハークが逃げる間もなく
あれよあれよと事の速さに
圧倒されていった。
廊下は走らないでねー、と
博士の言葉は、ベルードの速さにより
かき消されてしまったーー
* * * * *
「やぁみんな。来たよー」
ベルードが唐突にある部屋へと入る。
中に居た十数人の子供たちが
一切にドアの方へと目を向けた。
「ベルードだ!」
「ベルード!」
「誰、その子?」
「新しい子?」
そこは運動場と図書室が
廊下一本隔てて作られた
共有棟の一角。
図書室には絵本はもちろん
少し年齢の高い子も読めるような
挿し絵のある小説や図鑑など
数多く置かれている。
大半は静かに一人で読む子もいれば
二~三人で本に指差したり話したりして
楽しむ子もいた。
運動場はシンプルな内装である。
床には転んで大丈夫なように
マットが敷かれてある。
隅に設けられたボールや
大小様々なカラーコーンなど
整理整頓されていた。
「ベルード! ドッジボールしよう!」
男の子四人の集まりの一人が
ベルードに声をかける。
「いいよ。このハーク君も一緒でいい?」
「へー、ハークっていうのか。
よし、じゃあベルード強いから
向こうな。ハークはこっち」
ハークと背丈の似た身体のあちこちに
絆創膏を張った男の子が、ハークの腕を
引っ張る。
「俺、ティーノ。
ハークだっけ。何歳?」
「え、じゅ、11」
「じゃ同じ! よろしくな!」
ティーノと名乗る男の子は
ハークへと手を差し出す。
ハークはそれに応じて恐る恐る
手を出すと、ティーノはそれを
ガッシリ掴んだ。
「お! 力強いじゃんか!
期待できそう!」
「なぁティーノ。早くやろうぜ!」
「おぅ。メンバーを紹介するな。
金髪のホウキ頭が、カンジ。
細目で身体デカいのが、エルジー。
んで一番小さいのが、グラッド」
紹介された三人はハークに
簡単な挨拶をする。
カンジは金髪で頭の下から上へ
放射状に髪が伸びていた。
頭を動かすたびに髪が大袈裟に揺れる。
鼻の下をこすり、新しく入るハークに
興味津々な様子でである。
他の子よりも後ろに立つのはエルジー。
その大きな身体を自分の中心に寄せようと
モジモジしている。
ハークやティーノたちよりも
体格が大きく、年の離れたベルードと
身長なら頭ひとつだけ違うほど大きい。
グラッドは誰よりもいちばん小さかった。
ハークよりも一回りも二回りも小さいが
同じ年齢だと本人は声を大にして話す。
とても落ち着かない様子で
その場に立っていてもゆらゆらと揺れている。
眉間にはずっと力が入っており
いつもらしいが、怒っているように見えた。
「小さいって言うなよ!
俺、誰よりも速いぞ!」
「そう言って、この前スタートで
コケてたじゃんかグラッド」
「なにー! カンジ! やるかぁ?!」
カンジは言葉の揚げ足をとり
それにグラッドが彼へ食い入る。
「まって。ケンカは止めよう。
ベルードにまた負けるよぉ。
ねぇティーノ。どうする?」
エルジーが冷静にふたりを
その大きな手で距離を離す。
ふたりはなす統べなく
大きな手に制された。
「そうだなぁ。ハーク。
お前、投げるのと逃げるの
どっち得意?」
「へ?! え、そうだなぁ。
逃げる、かな」
「よしじゃあカンジとハークで前。
エルジーは後ろ。俺とグラッドで
真ん中な!」
「どういうことだ?」
「ーーお前ドッジボール知らねぇの?」
ティーノは簡単にドッジボールの
ルールをハークに伝えた。
「まぁとりあえず敵のボールに
当たらないように避けて
敵にボールを当てればいい。
よしやろう!」
ティーノの掛け声で他の三人に
気合いが入った様子であった。
ティーノの指示でエルジーたちは動く。
ハークは最初に教えられた通りに
ボールに当たらないよう逃げ回った。
* * * * *
「圧勝……。大人げない」
「いやいや。これも俺の実力ってワケ」
「ちくしょう!ひょいひょい避けて
当たらねぇ! 投げるボールも曲がるし!
どうなっている!?」
ベルードは得意気にボールを
指先で回して見せる。
ティーノ以外の三人は疲れきった様子で
息を切らしてた。
「ちくしょう!」
その時、ティーノの口角から
ゆっくり裂け始めた。
他の三人は疲れからか
気づいてない様子であった。
続きます。
次で第五話は最後です。
次話投稿予定は
2021年4月26日(月)です。




