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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
25話(仮)
320/322

何事も小さなことから

空に浮かぶ鉄城に座する女王は、深い悲しみから涙を流す。

涙は黒く滴り落ち、鼠となり暗雲にならんと身を投じる。


その様子をベルードらが、ナギらが、レムザと続いてハークが確認する。

大砲が再装填される間もなく、ハークたちは急いでトラックから降りる。

ちょうど燃料が尽き、エンジンはもうかからないほどであった。


そこは倉庫群と本社および工場とを繋ぐ、空木箱やコンテナが積まれる地。

どうやら暗雲と鼠の雨により、ハークたちがよく見渡すも社員らしき人気はない。

投げ捨てられたヘルメットに、書類を挟んだままの用箋鋏クリップボードが放り投げられていた。


荷台では熱が冷めきらぬ内にとキャンバスに食らいつくキアロ。

急かしても下りない彼を、ガライが力いっぱい引きずり下ろしていた。



「ーーあれか。工場は」


「あぁそうだ。このまま建物の方へ向かえばいい。鍵は……」


「私が持っています。海に面した方に貨物船用の扉があります。

 その横には従業員用入口。そこからの鍵です」


ガライは懐から鍵をナギへ手渡す。しかしそれはシドが受け取った。

ナギが持っていては失くしかねない。念には念を入れてと説明する。


「ナギ、ベルード。二人は工場へ。それ以外はこのままあの浮かんだのをーー」


レムザがそう割り振ると、空からラッパのような音が響き渡る。


それはあの暗雲からで、銃身の並ぶ前面から長く伸びた橋のようなもの。

そこから甲高い金属音を響かせ、何かが勢いよく飛び出していく。

それはあのカラスたち。パンパンになった肩掛けカバンを携えて

先頭は小柄なものが、殿に向かって体格のよいものが続いて飛び立つ。

カラスたちの背には一匹、多くて二匹ほど鼠が搭乗していた。

両者ともに飛行帽トラッパーを被り、まるで戦闘機のごとく空を駆ける。


「ーー!? 工場まで全員走れッ!」


レムザの指示は全員に行き渡る。すぐさま暗雲から背を向けて走り出す。

すると暗雲から飛び立った戦闘機カラスらは、隊列を組んでハークたちへ襲いかかる。

レムザは戦闘機の足や翼の辺りでギラリと鈍く光ったのを見逃さなかった。


最前線は左右に横一列、中心から後ろへ並び、矢の様な陣形をとる。

翼を折りたたみ、真っすぐ弾丸のごとく加速。身体が真っ赤に燃えて尚

ハークたちを視界に収めつつ、わずかでも届かんと迫る。


続けて第二、第三は左右の幅を広げ、くの字に編隊して追随する。

先頭の第一陣を援護すべく、携えた兵装を全て展開して弾幕を張った。


「またか!? ハーク、乗れッ! 雷で防げ! 今度はもっと大きく!」


「助太刀いたします!」


ナギは速度を落としてハークの近くまで寄る。すぐさまナギの肩へ飛び移り

ハークは戦闘機らを目視した後、鉄杵と竜の両腕で全員を覆えるよう解き放つ。

遅れて殿となったガライもまた、まるで荷物のようにキアロを肩に担いでいた。

大盾を掲げ、前を行くレムザたちを守るナギたちの後をピタリと追走する。


乗り捨てられたトラックが巻き添えを食らい、燃料タンクを貫く。

ボンッ! と一度大きな爆発を起こすも、誰もいない倉庫へ転がった。


「そのまま真っすぐ! 壁に沿って行けば――!」


走るガライの鼻先で、何かがすごい速さで横切った。

プツッと鼻頭から血がにじむ。風にあおられ、それがガライの片目に飛んだ。

突然の事にガライは気を取られてしまい、足がもつれ転倒してしまう。


「が、ガライーーッ!」


「構わず、先へ!」


「――ふぐ!? ぐえっ! な、なんだい!? あぁ作品が!」


ガライがそう叫ぶよりも速く、ナギたちへ襲い掛かるは戦闘機たち。

四方八方から狙いをつけ、地面スレスレを飛行して音もなく迫る。

ナギたちを間合いに収めると、一気にほぼ直角に急上昇した。


「ダァーッ! 足下から攻撃!」


一歩速くキーンがそう言い放つ。それに合わせてシドはナギから飛び出す。

持っていた鍵を振りかぶり、ハチの名を呼びながら剛速球で投げつける。


後ろの状況を把握しきれていなかったレムザたちは振り向こうとする。

だが銀狼ハチはそれを止め、投げられた鍵をドンピシャで素手で受け止める。

先に行け! シドの判断により、レムザたちが代わりに工場へ向かう。


「ぐッ!?」


ナギはふくらはぎを切り裂かれてしまう。

しかし急上昇による加速は足りなかった性か、二重三重の切り傷を与え

突然の痛みから足がもつれて、前のめりに倒れてしまう。


「うぐッ?!」


ハークの視界が一瞬暗くなる。戦闘機の捨て身な翼の攻撃が直撃する。

雷を展開する竜の腕だったが、竜鱗の少ない部分を狙われ、切り裂かれる。

また左目の目尻近くに翼が当たる。それを好機と見た戦闘機は一気に近づき

そのまま深部まで届かせるように肉ごと抉り取る勢いであった。

しかしキーンの咄嗟の一声とナギの転倒で致命傷にならず

ギリギリ鋭く突き刺さるような痛みで、視界が歪む程度で済んだ。


これ幸い、やれ追撃だと言わんばかりに戦闘機らの攻撃が激しくなる。

木箱やコンテナが次々と吹き飛んで、山のごとく辺り一面に積み上がった。

まるで二組に分ける様になってしまい、ハークたちは山を背にしながら

戦闘機たちと相対する。

ここまで本作をお読みいただき

誠にありがとうございます。


続きます。次話投稿予定は

2026年1月23日(金)~24日(土)です。


お楽しみに。

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