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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
【わるいこ】も、ゆっくり休む
30/318

理解者が、居てくれた

一方、ハークは急激な変身を行った影響か

朝まで眠れずようやく朝になったのを

確認して眠りについた。


* * * * *


ハークは自分の身体を

確かめるように何度もさする。


表面が滑らかで、且つ薄く硬い鱗。

人とは違う感触に何度も試した。


指を一本一本動かしてみる。

五指あるはずが、今は三つしかない指。

その先には禍々しく湾曲した鉤爪かぎづめ

触れたら如何なるものも引き裂く爪。


ガラスにうっすら映る自身の姿。

己が人であるはずが、所々に恐竜の姿も

兼ね備えている。


確かに自分自身は人だ。人間だ。

『わるいこ』と発覚してしばらく経つ。


その実感は鏡を介して自身を目で見たり

変化した自身の竜の手足を動かしたり

事実として表面上としてしかわからない。


それがハークには理解と納得に至らなかった。

わるいこってなんだ?

ハークの内にひとつの考えが

全てを飲み込もうと渦巻き始めた。


* * * * *


「やァ。起きた?

 おはよう、ハークくん」


べルードがやって来た。

変わらぬ様子で部屋に入ってきた。


ハークは身構えた。

少し余裕ある鎖に繋がれている故に

竜の手を開いて、それ以上来ないで、と

身振り手振りで示す。


「うん? あぁ大丈夫。

 部屋は壊れないし

 俺ひとりでも大丈夫。

 ……まだ戻らない、か」


べルードは距離を取って床に座る。

ふたりは同じ目線となるも

ハークは目を合わせることを避けている。


「--話せそう?」


ハークは喉を動かすも、言葉は出なかった。

出て来たのは竜のうなり声くらいである。

仕方なく首を横に振った。


「博士から聞いてる。急激な変身もあって

 身体が追い付いてないと思う。

 けどハークくんなのが分かるだけでも

 安心した」


べルードは頭を掻き、うまく笑えずにいた。


「村でのこと。エリーさんから聞いた。

 ……すごく頑張ったね。

 あのおじいさん、ロニィさんも言ってた。

『小僧は極意に指を掛けている』って」


あのロニィが?

ハークはうまくロニィの極意を

理解できてないと思う反面、

不意に褒められたという気恥ずかしさから

頭を掻いた。


* * * * *


ーーホーリー。覚えている?


ハークはその言葉にピクリと反応する。

懐かしい事に自然と竜の尾も動く。


「いま別の研究所に居るんだ。

 ホーリーのお母さんも保護された。

 ひとまず安全なワケ」


その言葉にハークは息をつく。

肩の力が少し解れ、いくらか表情が見えるようになる。


「まぁこれ秘密なんだけどね。

 博士に聞いたら、特別にって。

 けど逢えるかは別なワケだけど……。

 けどさ、また会えるかもしれない」


ハークの内心は一度こそ喜んだが

すぐにその感情は消え失せた。


自分の手で脱走させ

あげくホーリーが実母を殺す手助けをした。


自分には合わせる顔がない。

けど、会ってみたい。

しかしそのとき、何て言えばいいのだろう。

ハークの脳内は考えうる事態を予測する。


「それじゃ、おやすみ。

 また、戻っておいで。

 俺も、博士も、エリーさんも待ってる。

 レムザさんも、きっと」


べルードは立ち上がり、部屋を出る。

別れ際に振り替えって、手を振った。

部屋はロックされ、ひとりとなったハークは

天井を見上げた。


ホーリーは無事だった。

ロニィから褒められた。

ベルードは変わらず居てくれた。


ただそれだけの事だが

ハークは、素直に嬉しかったと感じた。


「(寝よう)」

身体を丸め、ハークは目を閉じる。

続きます。


次話投稿予定は2021年4月12日(月)です。

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