理解者が、居てくれた
一方、ハークは急激な変身を行った影響か
朝まで眠れずようやく朝になったのを
確認して眠りについた。
* * * * *
ハークは自分の身体を
確かめるように何度もさする。
表面が滑らかで、且つ薄く硬い鱗。
人とは違う感触に何度も試した。
指を一本一本動かしてみる。
五指あるはずが、今は三つしかない指。
その先には禍々しく湾曲した鉤爪。
触れたら如何なるものも引き裂く爪。
ガラスにうっすら映る自身の姿。
己が人であるはずが、所々に恐竜の姿も
兼ね備えている。
確かに自分自身は人だ。人間だ。
『わるいこ』と発覚してしばらく経つ。
その実感は鏡を介して自身を目で見たり
変化した自身の竜の手足を動かしたり
事実として表面上としてしかわからない。
それがハークには理解と納得に至らなかった。
わるいこってなんだ?
ハークの内にひとつの考えが
全てを飲み込もうと渦巻き始めた。
* * * * *
「やァ。起きた?
おはよう、ハークくん」
べルードがやって来た。
変わらぬ様子で部屋に入ってきた。
ハークは身構えた。
少し余裕ある鎖に繋がれている故に
竜の手を開いて、それ以上来ないで、と
身振り手振りで示す。
「うん? あぁ大丈夫。
部屋は壊れないし
俺ひとりでも大丈夫。
……まだ戻らない、か」
べルードは距離を取って床に座る。
ふたりは同じ目線となるも
ハークは目を合わせることを避けている。
「--話せそう?」
ハークは喉を動かすも、言葉は出なかった。
出て来たのは竜のうなり声くらいである。
仕方なく首を横に振った。
「博士から聞いてる。急激な変身もあって
身体が追い付いてないと思う。
けどハークくんなのが分かるだけでも
安心した」
べルードは頭を掻き、うまく笑えずにいた。
「村でのこと。エリーさんから聞いた。
……すごく頑張ったね。
あのおじいさん、ロニィさんも言ってた。
『小僧は極意に指を掛けている』って」
あのロニィが?
ハークはうまくロニィの極意を
理解できてないと思う反面、
不意に褒められたという気恥ずかしさから
頭を掻いた。
* * * * *
ーーホーリー。覚えている?
ハークはその言葉にピクリと反応する。
懐かしい事に自然と竜の尾も動く。
「いま別の研究所に居るんだ。
ホーリーのお母さんも保護された。
ひとまず安全なワケ」
その言葉にハークは息をつく。
肩の力が少し解れ、いくらか表情が見えるようになる。
「まぁこれ秘密なんだけどね。
博士に聞いたら、特別にって。
けど逢えるかは別なワケだけど……。
けどさ、また会えるかもしれない」
ハークの内心は一度こそ喜んだが
すぐにその感情は消え失せた。
自分の手で脱走させ
あげくホーリーが実母を殺す手助けをした。
自分には合わせる顔がない。
けど、会ってみたい。
しかしそのとき、何て言えばいいのだろう。
ハークの脳内は考えうる事態を予測する。
「それじゃ、おやすみ。
また、戻っておいで。
俺も、博士も、エリーさんも待ってる。
レムザさんも、きっと」
べルードは立ち上がり、部屋を出る。
別れ際に振り替えって、手を振った。
部屋はロックされ、ひとりとなったハークは
天井を見上げた。
ホーリーは無事だった。
ロニィから褒められた。
ベルードは変わらず居てくれた。
ただそれだけの事だが
ハークは、素直に嬉しかったと感じた。
「(寝よう)」
身体を丸め、ハークは目を閉じる。
続きます。
次話投稿予定は2021年4月12日(月)です。




