彼の背を押すは、突風か神風か
「ロニィ。あなたの稼業に
目をつぶったのは、誰のお陰でしょう?
もちろん分かっているはずです」
村長は手を後ろに回し
ロニィへとじりじり距離を詰める。
「否! 断じて教えに屈したとは一言も!」
「だがあなたは、仕事を終えた時。
娘への関わりは、少ない会話の言葉のみ!
自身のその汚れた手で、娘を汚さないように。
ひとり願ったのは、我が主であった!」
ロニィはハッとする。
しかしそれを振り切り、村長や特殊部隊に構える。
ロニィは何かを感じ、少しだけ歩調を変える。
ひとつの炸裂音がその場を染める。
* * * * *
ロニィには直後こそ気づかなかった。
遠くからの狙撃。正確な一発。
咄嗟に動いたお陰か
凶弾は致命傷にならず
ロニィは胸を押さえつつ膝を着く
「くっ……、グッ!
くそ……ったれ」
血を吐き、胸を押さえる。
「見苦しい。貴様が殺してきた人間と
同じ立場に立っただけでしょう?
なぜ立とうとするのでしょう?
娘のため? 己のためか?
それともその、つまらぬ意志のたーー」
村長の言葉が言い切る前に
ロニィは一瞬にして村長の懐へ接近。
跳躍かと確認できない
わずかな出来事であった。
それを予知していたのか
村長は麻袋を自身の前に差し出す。
ロニィはすぐさま動きを止める。
麻袋の向こう側から
鈍く光る物がロニィの身体を貫く。
村長の腕から、鉄の剛力さと水の柔軟さを
兼ね備えた何かが絶えずうごめく。
それが鋭く細い鉄線となり、ロニィを串刺しにした。
「おぉ。やはり主の教えは素晴らしい。
あれほど村人を恐れさせた悪漢を一刺し!
あぁ主よ! これが新しい力!」
「な、なんだ……」
ロニィは体勢を崩す。
突き刺さる無形の鉄槍は、村長の手を離れ
ロニィの腕を拘束した。
* * * * *
「(なんだよあれ!?
わるいこで動物になるだけでも驚きなのに!
人間の手から鉄の槍?! なんだよあれ?!)」
ハークは身を隠し、一部始終を目にしていた。
「これで供物は手にしました。
娘を贄としてひとまず――」
「村長。外の者たちはどうしますか?
あの黒い虎と、子供一人が……」
特殊部隊のひとりが村長に駆け寄る。
手に持った銃は、まだ目の前でうずくまる
ロニィを狙っている。
「村長! ロニィの小屋に虎もどきが!」
逃げていた村人たちが、機を見て
ロニィの小屋に押し入っていた。
「ふぅむ。ライオンも拘束しましょう。
子供は……、一人で何ができます?
どうやら、ここに居ないようです。
いてもいなくても同じ。まずは供物を」
村長の一声に村人たちは
フェンリーと黒獅子エリーを抱えていく。
村長と共にいた特殊部隊は
村の外の警戒に当たるよう言い渡され
彼らとは別行動を取った。
「(何とか助けないと。だがどうする?
……あの村長の言う通りだ。
俺一人で何が出来るって言うんだ)」
その場には誰もいなくなった。
ハークは身体を出し、先ほどまでいた
小屋へと戻った。
「何か手がかりを……」
ロニィの小屋にはそう物はない。
電話もない。あるのは調理器具や食器類。
椅子に机。ハークは諦めず辺りを探す。
ふぅと息をつくハークの足元に、何かが転がる。
それはロニィが見せてくれた極意の巻物であった。
改めて読むも、やはり読めない。
蛇かミミズが這ったような字である。
「よく分からなかったな……。
……どういうことだ?」
その時、小屋に一迅の突風が吹く――
リアルが忙しくなったため、投稿遅れました。
申し訳ありません。続いてます。
次話投稿予定は、2021年3月18日(木)です。




