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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
半竜は、歩き出した。
22/322

技よりも、極意よりも、命

――ひとまず、裏の倉庫に隠したが……。


「あの黒いライオンが、あのお嬢さんなのか?」


ロニィは黒獅子エリーを眺める。

見慣れぬ獅子、それも黒いタテガミをもつからこそ

まず存在し得る動物か、と疑問に感じたのである。


「そう。俺もだ。その証拠に――。

 というより、一度なった時から

 その名残がある」


ハークは袖をまくり、腕を見せる。

幼き子の腕が露になる。

一目見た限りでは違和感はない。


しかしよく見るとそこには

ちらほらと見慣れぬ羽が生えている。


ロニィは己の目を疑った。


「なんと。小僧は鳥にでもなるのか」


「鳥よりもずっと前。恐竜、らしい。

 博士や他の人から教えてもらったけど

 実際、俺はこの羽でしか……」


「『らしい』か。……そうか。

 我が娘と同じ、己が変身したのを

 意識できず、か」


「博士の手紙に、その鍛練も、って

 書かれているはず」


「む? もしやかすれた箇所に

 そう書かれていたか」


ロニィは博士の手紙を開き、その箇所を指差す。

泥や砂が文に付着し、虫食いになっていた。


「己が姿を変えても、己を持ち続ければよい、か。

 ……我が極意に似ておるな。

 あぁ、こんなことなら博士の話を

 しっかり聞けば良かった……」


ロニィは残念そうにそうつぶやく。

眉間にシワを寄せ、腕を組んでは

後悔しているようだった。


「それで、どうすればいいんだ?」


「まてまて、慌てるな小僧。

 そんな早く出来ぬ。ワシが鍛えた

 娘フェンリーでさえ、あの通り。

 ……しばし待て」


ロニィは部屋の片隅に置かれた

小さなチェストの引き出しを開ける。

その中からひとつの巻物を取り出す。


「これがその極意だ」


ロニィは巻物を開き、ハークへと見せる。


そこには、達筆な字が書かれている。


「……何て読むんだ? 俺には落書きにしか」


「なに、字を知らんのか」


「俺、教われなかったんだ」


ロニィは一瞬理解が及ばず、戸惑った。


しかしロニィはそれを咎めない。

それ以上、問わなかった。


* * * * *


「我が極意は、不言でな。

 つまり、言葉よりも心の理解。

 知の理解より、体得こそが

 もっともだが……」


ロニィは巻物を閉じ、

窓越しに周囲を警戒する。

誰もいないのを確認し、居直る。


「では小僧。いやハーク。

 一度しか言わん。覚えろ。

 そして考え、実行せよ。

 他言無用でな」


『……。……、……。……。……、……』


ロニィは丁寧にゆっくりと言葉にする。

一小節、一単語、一文字ずつを

自身も確かめるようである。


「? 何て言ったんだ?」


「分からぬか。つまりだなーー」



その時、個室から大きな破壊音が響く。


ロニィの娘フェンリーの叫び声が続く。


「フェンリー!」


ロニィは巻物を放り投げ、

すぐさま娘の部屋へ突入する!



そこには部屋の大半が壊され、

直前まで見慣れた風景が

すっかり外の景色となっていた。


村人たちが集まって

ぐったりしたフェンリーを縄で縛り

急いで麻袋に詰めるその瞬間であった。


「貴様らぁぁぁ!」


ロニィは激昂し、村人たちと距離を

たった一跳躍で詰める。



掌は村人たちの麻袋を持つ腕を狙う。


触れた途端に誰もが宙を舞う。


そこにいた大勢の村人が

ひとりの壮年の男によって

一瞬でひっくり返され、制された。


「お待ちなさい、ロニィ。

 よく見なさい」


声の主は、村長である。

フェンリーの入った袋に向かって

拳銃を突きつける。


「人質です。理解できますね?」


「村長! 娘に何のーー」


「あなたはとうとう

 我らが主の教えに従わず、

 ここまで来たのです。

 娘を差し出せばいいものを。

 あなたの招いた結果です」


村長はタバコを吸いつつ、

ロニィと相対する。


ロニィはすぐにでも

娘フェンリーを奪取すべく構える。

しかしすぐには動けなかった。


なぜなら、目の前の村長の周りには

異質かつ統率のとれた集団。

見慣れない特殊部隊の姿が在ったことである。

続きます。


次話投稿予定は、2021年3月15日(月)です。

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