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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
【わるいこ】になりまして
17/318

ペーパードライバーは冷静に事故を起こす

ハークの視界は縦横無尽に揺さぶられる。


研究所所有の輸送車両を、舗装されていない悪路による

揺れをもろともせず、走らせる元女優の運転手。


「えーっと、地図地図……。ハーク、次は?」


「ガガガガガガ(揺れてわからない)」


「遊んでるんじゃないのよ!」


「ガガガ(無理だって)」


車両はどんな地形にも走れるように設計されている。

たとえ内外問わず衝撃に耐え得るものと博士は話していた。

だが、中にいる人間の安全はそう守られたものではない。


「貸しなさい! えっとここが山脈麓の入り口手前の……」


エリーは片手運転と地図に集中している。


するとちょうど木々の連なる道の途中。

曲がり角に差し掛かったとき、向こうから

牛の大群が現れる。

その数、道路を埋め尽くすほどの規模であった。


「ガガガガガ!(危ない!)」


「え!? わっ!?」


エリーはとっさにハンドルを切る。

道の端に立っていた巨木に前から突っ込む!


森に大きな衝撃音と木が倒れる音が響き渡るーー


* * * * *


“もー”“モー”“もー”


“ブモォ!”“もー””むー”


「まさか牛の大群に出くわすなんて」


間一髪、身体が無事で車から脱出した二人。


「エリーさん、そもそも片手運転は……」


「何よ。みんなしてたけど?」


「……一応聞くけど、運転したことは?」


「久しぶりよ」


「ちくしょう! 終わった!」


ハークは天を仰いだ。

両手で目を覆い、膝から崩れる。

牛はハークたちのことなど知ったことかと

道を歩いていく。

牛と森。と、なぎ倒した数本の木々。



「あんだおめぇさんら?」


声をかけてきたのは、麦わら帽子と

首にタオルを巻く腰の曲がった老人であった。


「あぁ、これからロニィ・ジェンさんに

 会いに行く途中で、牛を避けたらこんなことに」


「ロニィ? ……おまいさんら、帰ぇりな」


ハークの口から放たれた『ロニィ』という単語に

老人は小さくだが眉をしかめた。


「うん? 知っているのか?」


「何、知らない? それならすぐに帰ぇりな」


「見ての通り、車が……」


「帰ぇりな! ダメだ! 歩いてでも帰ぇりな!」


「あの、失礼ですが

 私たちは彼に会いに行かねばならないんです」


「知らんね」


エリーの説得を以てしても、老人は答えなかった。

老人は牛を引き連れて遠ざかっていった。


「村の人かな」


「あんなに帰れと言われても、帰れないのに。

 あ、せめて泊めくれるか聞けばよかった」


「え」


* * * * *


その時、森の茂みが大きな音をたてる。

地鳴りが響く。ズシンズシンと大きくなる。

ふたりは音と反対方向の茂みに身を隠し、

音の方を見る。


「ぐるる」


熊。二人の乗った車に近寄る。

器用に前足を使い、おもちゃにじゃれるように

何トンもあるであろう車を揺さぶる。


「なにあれ。ヒグマ? 動物園でしか見たことないわ」


「熊に間違いないけど、あんなに大きいのって……」


熊は車をひっくり返し、ドアに爪を引っかけて開ける。

中を用心深く鼻をひくひくさて、中の様子を伺った。


「どーしよう。地図や書状やら

 あの中に置いたままで……」


「なぜ置いたまま!?」


「仕方ないでしょ! まさか熊が来るとか!」


「最悪変身して……」


「ダメよ」


「なぜ?」


「戻れないじゃない」


「(……ちくしょぉぉぉぉぉ!)」


ハークは天を仰ぎ、叫んだ

更新、遅れました。

続きます。


次話投稿予定は2021年2月25日(木)です。


※2021年2月22日(月)17:50

細かい描写を追加&修正しました。

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