わるいこ二人は村へ向かう
博士は自身の書類棚から
一冊のメモ帳を取り出す。
そこにはびっしりと名前と住所に
電話番号が書かれていた。
「うーんと、誰かいたかなぁ。
ミス・エリー、希望は?」
「お金持ち。篤志家。石油王あたりね」
エリーは考える暇もなく、即答する。
「アハハ……、残念。みんな貧乏だよ。
研究者は研究一筋で、その他はからっきし。
大体、研究者は何かお金になるような研究というより
研究がお金に変わる、っていうのが常だし……」
「なら……、研究者つながりで
誰かスポンサーつけそうな人、辿れない?」
「そんな都合のいい人なんて
あー、うん。この人なら……」
博士はぺらぺらとメモ帳をめくり
あるページに差し掛かる。
「どちら様? 私も知る人なら、話は早いけど」
「ううん。誰も知らない。
ロニィ・ジェン。
僕と同じか少し若かったかな。
ここから電車を乗り継いだ先の
村に住んでいる、薬剤師だよ」
「ロニィ・ジェン?
研究者じゃなくて薬剤師?」
「そう。出会ったのは
あるお酒の席だった」
博士は懐かしいと呟きつつ
所長室の壁に掛けられた地図を指差す。
* * * * *
現在わるいこ研究所本部は
二番目の大きさとなる
エイール大陸の南東に位置する。
おおむね四角い大陸は
中心にそびえる霊峰から
大陸をきれいに四分割するように
山脈が伸びている。
大陸の区域内
バルドリア山脈の麓にある村を指差す。
その近くまでは電車を乗り継ぎ
現地まで歩いていくというルートである。
「ロニィはとにかく強いからね。
どっかの用心棒しているはず。
そこからのつながりで見つかるかも」
「……薬剤師なのに、用心棒ってなんだそれ」
「まぁ、すごいよね。薬剤師で用心棒てのも」
ハークは内心どういう理由で
薬剤師と用心棒が両立されるのか
見当がつかなかった。
「……いいでしょう。行きましょう」
「え? エリーさんが行くのか?」
予想外の発言に、ハークは耳を疑った。
「何よ。会って話した方が良いでしょ?
博士。資金援助の旨を一枚、書いてください。
それを持って、交渉しましょう」
「そう? わかった。あ、そうだ。
ロニィはとにかく強い人のはずだから
ハークくんの自分を保つ練習に
一役買ってもらおうかな!」
「……え?! 俺とエリーさんのふたり!?
それに練習? なら、ベルードも……」
「ベルードはさっきレムザの所に急遽戻ったよ?
何でも新しく保護した子が多いらしくてね。
現場の応援ってこと。気にしなくていいよ。
あ、電車賃を経費で落として--」
「博士。確か輸送用車両がありますよね?
私が運転しますね」
「「え?」」
博士とハークは耳を疑った。
続きます。
次話投稿予定は、2021年2月22日です。




