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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
【わるいこ】になりまして
14/322

ハークと博士とわるいこ

続きです。ここから3話となります

――数日後。


エリーは目を覚まし、朝食を取っていた。

眠ってからなにも食べてないため、

出された食事をただただ口にする。


「おはよう。ミス・エリー。

 気分はどう?」


博士が変わらぬ様子で部屋を訪れた。

エリーは疲れからか、特に気にせず

食事を続けている。


「……最悪よ。デビュー直後みたい。

 ……私、辞めさせられたんだって?」


エリーは自身の持ち物であるスマホから

その情報を手に入れていたようだった。


自身のニュースが取り上げられた記事を

スマホごと博士に手渡し、見せる。


「ニュースに取り上げられてた。

 事務所側から引退文がでっち上げられて。

 契約書に書いた私のサインそのまま。

 ……バカみたい。なにこれ。

 アタシ、何のためにしてきたの」


エリーは食事の手を一度とめ

部屋の虚空を見つめる。


「まぁ仕方ないね。

 彼らもビジネスで動いているんだっけ。

 僕は研究ばっかりでそっちはあんまり。

 でも、あっちにはあっちの事情があるんだよね」


博士は息をつく。

しばしの沈黙の後、彼は口を開く。

 

「それでなんだけど。ミス・エリー。

 経理、やったことある?」


「ーーは?」


* * * * *


それから2日後。


ラプトル・ハークの体が

徐々に人間へと戻り始めた。


遅い部類であると博士は結論付け

ベルードと共に部屋へと入る。


「脈拍、異常なし。呼吸も安定している。

 体もほぼほぼ元通り。

 腕にあの羽が残ったままくらい。

 後は目覚めてどうか、だね」


「……ん?」


ハークが目を覚ます。

部屋の光に驚き、起き上がる。


目の前にアナグマ博士、ベルードの姿を目にする。

その後周りを確認し、部屋であることを確認した。


「……あれ? なんで部屋に?

 俺は、どうしたんだっけ?

 ……あ! ベルード、足の怪我は?!」


「うん? あぁ大丈夫。博士の手術でほとんど」


安堵しハークはベッドから立ち上がる。

身体のあちこちを確認する。


腕の調子を確認すると違和感に気づく。


病院服の裾をまくると

見慣れない羽が数枚ほど両腕から生えている。


「なんだこれはぁぁぁぁぁ!?」


「おや、無意識だったようだね。

 うーん、まぁ珍しい例だし、記録しないと」


「いやいや! まてまて! どうなった?!

 俺はどうなったんだ?!」


「えぇー? ハークくん、私より先に

 ベルードたちの前に駆け出したんだよ?」


博士は自身が見たありのままの事実を伝える。


ハークは自身よりも素早く駆け出した。

人の姿は一瞬にして小型の恐竜に変わっていた。

ベルードとエリーの前に出て、特殊部隊と戦った。


そして人を傷つけ、最後はけいれん発作。

約一週間ほど眠っていた。


「嘘、だろ? わるいこになったのか俺?

 それもベルードやエリーさんと違って

 ハ虫類? 恐竜? なんだよそれ……」


「わるいこ。うーん、それ通称ね」


* * * * *


――動物を従者にしていた神様の伝説があってね。


博士はそう話を切り出す。


「ハークくんたちみたいに変身する人たちの

 第一報告例発表時に、ある研究者が名付けたの。

 語呂はともかく浸透してね。研究者の悪い癖かな?

 それがいまは、ね。ネーミングも相まって

 みんなあんまりよく思ってなくて……」


「つまり俺は、……わるいこは

 その神様の……、手下か?」


博士の話に、ハークはぽつりとつぶやく。


「いやいや、あくまでそういう意味じゃ――」


「人間じゃない。……動物、ってことか?」


ハークの声が震え始める。


「違う。君も、ベルードも、レムザだって

 ミス・エリーも、ここにいる子達も人だよ」


「――あの人は、エリーさんのマネージャーは

 指差して『化け物』って言ったじゃないか!

 今度は真っ当な人間にって!

 真っ当な人間ってなんだよ!?

 それじゃあ、わるいこたちは、動物に変身したら

 わるいこになったら! 生きちゃダメなのか!?」


「違う! 違うんだ! そう考える人もいる!

 けど君たちは人だ! 僕らと同じ人間だ!

 ただ、動物に変身する力があるだけなんだ!

 それ以外は同じ人間。同じ命ある人間だ!」


気付けば、ふたりは立ち上がっていた。

ハークは握りこぶしを作り、少し目が潤んでいる。

それに感化されたのか、博士は目を大きく見開き

前のめりにハークと真正面から言葉を放つ。


「ま、待った! ふたりとも!

 落ち着こう! ハーク君は起きたばかりなワケ!

 また眠ってしまうかもしれないし!

 博士も……、ほら! ハーク君やエリーさんのことを

 ここずっと気にかけていたし! 落ち着こう!」


ベルードの仲裁により、ふたりの熱は徐々に薄らぐ。


大人げなかった、と博士は椅子に座り直す。


ハークもベッドに腰掛ける。

一度深呼吸し、博士の言葉を振り返る。


『わるいこであろうと、自分たちも人』

その言葉は、ハークには受け入れがたい反面

どこか安心している自分自身がいる事に気付いた。


「――ごめん。博士。言い過ぎた」


「僕もだ。ハークくん」


「博士。

 ……どうして、俺はわるいこになったんだ?

 そもそも、どうしてわるいこになるんだ?」

続きます。


次話投稿予定は、2021年2月15日です。

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