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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
研究所本部へ
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エリーとハークと恐竜

――ベルード! 保護!


博士の一声と同時。

ハークの横にいたベルードは狼となり

猛然と地面を蹴り進む!


男の胸ぐらから放たれる炸裂音よりも早く

ベルードはエリーを腰から抱える。


男から離れるように跳躍する。

かろうじてエリーには被弾しなかった。

代わりに狼ベルードの足に一発

深く撃ち込まれてしまう。


「おやおや。番犬は優秀ですな。

 さすがは獣。人間とは大違いだ」


男は銃をエリーたちに向けつつ

博士へと問いかける。


「はじめまして。Dr.アナグマ。

 事務所ウチの子が世話になりました。

 いやーまさか、エリーが獣になるとは!

 思いもしませんでしたよ。嘘じゃないとも。

 神に誓って言いましょう!

 ……わかっていたら、ここまでプロデュースしなかった!」


男は片手をあげる。

それを合図に、研究所外で待ち構えていたであろう

武装した特殊部隊が大勢現れる!


「嘘……。待ってマネージャー!

 この人たちの嘘よ! 私は獣じゃーー」


「うるさい! 黙れ! この獣め!

 お前が駅で暴れた性でどうなった?!

 事務所の信用は一気にガタ落ちだ!」


マネージャーと呼ばれた男はもう一発

ふたりに向かって撃ちこむ。

銃弾はエリーの側をかすめていく。


「どっかの誰かが、テレビ局にネタとして流した!

 お前がライオンになる動画が報道された!

 一気に! 社長も! 他の子達も、目を疑った!

 どうしてくれる!? 猛獣は射殺すべきだ!」


男の合図に特殊部隊が銃口をエリーたちへ向ける。


エリーを抱える狼ベルードは動けず

ただエリーをかばうようにするしか出来ない。


エリーは狼ベルードの腕から離れようともがく。


「離して! 話せばわかるの!

 私は獣じゃない! 何かの間違いって!」


「だめダ。アイツ、オマエ、殺ス」


「いや! 離して!」


「さらばだエリー!

 ……今度はしっかり『全うな人間』に

 なれるようにな!」


男は手を振り下ろす。

特殊部隊の銃が一斉にエリーたちを捉える。


エリーは目をつぶる。


ベルードは動けず覚悟を決める。


博士はただ空手に、二人へ走り出していた。


ハークは、ただただその状況を

力なく、事実として、眺めていた。



――なんで。なんで人間じゃないといけない?


ハークの内側の奥底から

ふつふつとじんわり煮えたぎる

自身でも感じたことのない感情が

意図せず生まれていた。


「(なぜ獣になるだけで、こんな目に合うんだ?

 どうして? 見捨てられる。あの人が。

 今まで味方だった人に)」


……許せない。


……許せない。


……許せない!


目の前の状況に、ハークは歯を食い縛る。


怒りが。悲しみが。言い表せない思いが。


覆せない不条理に、ハークは憎んだ。


* * * * *


ハークの身体は先に走った博士を追い抜き

特殊部隊の銃を全て真っ二つに切り落としていく!


それに気づかず、特殊部隊は引き金を引くも

発射されないことに、切られてから気づく。


彼らと男は目を疑った。


目の前にいるのは紛れもない『恐竜』。


小柄で無駄のない体躯。茶色の縞模様。

銃を真っ二つにした刃物のように鋭い爪。

特殊部隊の目に止まらない速さをもたらした強靭な脚。

その先には太く禍々しく地面を掴む鋭い鉤爪。

頭と両腕には数枚ほどの鮮やかな飾り羽が生える。


ラプトルに似た恐竜が

エリーたちを背にして男たちの前に

低くうなりながら、立ちはだかる。



突然の事態に、特殊部隊には混乱が漂い始める。


映画や漫画なら、博物館で目にする骨格標本なら

見たことのある恐竜が、今まさに自分たちの目の前で

今か今かと襲い掛からんと身構えている。

銃を構えた誰もが、引き金にかけていた指が固まる。

足がすくみ、腰が引き始める。


「うろたえるな!

 たかが一匹のハ虫類だ!

 それに子供だ! 予備を使え!」


マネージャーの号令に、特殊部隊はすぐに構え直す。



ラプトルは大きく裂けた口から

だらだらとよだれを垂らしつつ

目の前の特殊部隊を一瞥する。


一瞬、後ろを確認する。

エリーと狼ベルード、それに博士も

事態を呑み込めず呆然としている。


ラプトルは足に力をいれ

口を大きく開け、特殊部隊へと突進する!

続きます。


次話投稿予定は、2021年2月8日予定です



※2024年2024/02/14より

一部表現を修正しました。

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