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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
【わるいこ】たちは、北東部へ向かう
112/322

分かれて向かって、いざ北東部へ

――何の用だい、ロニィ?


「(ロニィさん?!)」


突如、扉奥へと押し込まれた

ハークたち6人。


ちょうど扉近くにいたハーク。

耳を当てて、暗闇の中、息を殺し

様子を探った。


「(く、く、苦しいのねぇ……)」


「(ガ、ガ、ガ……)」


「(どうなっているワケ……!?)」


突然押し込まれたベルードやその兄、

サンサ兄弟は窮屈そうに

身体をよじり、体勢を直そうとする。


「(ちょっと静かにして欲しい)」



* * * * *



「ここに探しものがあると思い、来た」


ロニィは店内を見回す。

机や棚に置かれた品物を眺めるも

最後に目をつけたのは、ハークたちが

押し込まれた扉。


「……聞きたくないが

 教えてもらおうかね、ロニィ。

『どうやって』ここにたどり着いた?」


「語るに及ばず」


トン、とロニィはつま先で

床を軽く小突く。


突如、世界が震える。

ゆっくりとした大きく

うねりのある震動。


「「「「うわッ!?」」」」」


それは店全体に広がると

扉の鍵が外れ、中にいた6人が

雪崩れでた。


「むっ! こんなに大勢、だと?」


「……大勢?」


「……いや。いた。彼奴か。

 あの男だ。名は確か……。

 なるほど。『無名』か。

 ――こちらに渡してもらおう」


ロニィは指差すはベルード兄。


ライラナは半歩、足を後ろに引く。

少し前のめりになりかけているのを

老婆が片手で止める。



「(あれが、ロニィさん……!?)」


ハークはロニィの姿を確認する。


ハークたち6名、いや5名を

選別するように一瞥し終えると

言葉通り、ベルードの兄を捉える。



* * * * *



ロニィの姿は

ハークの知るものとは

ほとんど変わっていた。


古ぼけた作業着ではない。

研究所の掃除と警備を

担当するスタッフではない。



額には包帯が巻かれている。

見える範囲では腕や首にもある。


服装は見慣れたものとは全く違う。

縁や模様が金色で装飾された赤い服。

ハークが近しい印象は、コート。


丸縁の黒いサングラスをかけ

その目元はわからない。


顔には少なからず数発殴られた痕

わずかに斬られた痕が見受けられる。


「その男はウチの預かりものさ。

 特別な注文さ。誰の物でもない。

 アンタの探しものじゃない。

 出直しな」


「いいや。裙呂釿ぐんりょぎんで指名手配している。

 抵抗するなら、やむを得んが」


ロニィの掌は握られる。


「なに。裙呂釿ぐんりょぎん? あぁあの南西の――」



老婆は何かに気づいたのか

一瞬ロニィから目を離す。


すぐさま戻した途端、息をつく。


「アンタも大変さね。

 全くどうしてこう、ウチの買い手は

 変わり者ばかりなんだい。えぇ? ロニィ」


「……なんの事か存ぜぬ」


「もう茶器も、茶葉もいらんね?」


「無論だ」


「ようし、わかった。交渉決裂だ。

 こんな頭でっかちは初めてだよ!

 何が武だ、何が己だ、何が道さね!」


「話は良いか。では、戴くッ!」


「ライラナ。1分だ。繋ぎな!」


「了解です、主人」


ライラナは一歩出る。

ロニィと相対し、スカートの裾を持ち

深々とお辞儀をする。


「アンタらも寝てないで起きな!

 店の品物片付けな!」


「「は、はいっ!!」」


いち早く動いたのはサンサ兄弟。

リードが急いでエッサホイサと

品物を片付けていく。


「み、み、みんなで片付けるのねぇ!

 起きて起きて!」


呆気に取られるハークとベルードを

ブラクバは巨体を生かして起こす。


「大層な、引っ越しかッ!」


ロニィが一歩踏み込む。

しかし2歩目が出ない。



* * * * *



そのつま先。

ライラナが踏みつけている。


ならばと意識した途端

ライラナに間合いを詰められる。

もはや目と鼻の先となる。


「鈍りましたか? それとも?」


「否! 断じて否だッ!

 我が道、我が拳は、もう迷わん!」


ロニィはライラナへ頭突きを繰り出す。


「……らしくない、一撃」


ぐらりと自身の左横をすり抜け、沈む。


それを確認すると、すぐさま

ベルード兄を探すべく目を移す。


「……うぐッ!?」


身体は即座にそれを受けるべく動いていた。

もはや無意識の世界であった。


「いい判断です。咄嗟での防御。

 感服します。が、繊細に欠け――」


ライラナは不意の頭突きに

一度こそ意識を失った。


しかしすぐさま体勢を立て直し

腕を地に、後ろ蹴りよろしく

ロニィの横っ腹へ重い一撃が飛ぶ。


ロニィは咄嗟に構えたため

不意打ちにて辛うじて左腕だけ

使い物にならなくなった。


両者弾き返し、元の位置へと戻る。

距離を取り、様子を伺う。


「ようし。時間きっかりだ。

 ライラナ、戻りな」



* * * * *



「はい」


ライラナは構えを解き、ロニィへ背を向ける。


「(せめて、一人は……ッ!)」


ロニィは一歩踏み込む。

しかし地が揺れ、足取りは崩れる。


ロニィが目にしたもの。

それは店の木材がうごめき

ズズズ……と何かが意思を持って

形をなしていく様。



「――じゃあなロニィ。

 この恩知らずめ。仇返しになったさね。

 この、バカ野郎……!」


老婆は中指立てて、ロニィへ啖呵を切る。

「よし! ギリギリ入れ終わった!」


「よ、よ、よし、みんな乗り込むのねぇ~!」


リードに指示され片づけていた

ハークもベルードもブラクバの催促で

急いで店のカウンター近くに集まる。


それと同時。店全体が切り取られ

ひとつの形をなす。


「わ、わ、わ!? 落ちるのねぇ!?」


「捕まるしかないぞ兄貴ぃぃぃ!」


木造のはずだが、ギギィ……と

金属音を発しながら形が変わっていく。


クモ。


巨大な木製の足をギシギシ軋ませ

店があった宙へ浮かんでいる。


その頭には巨大な目。

目にはまた目があり、その目にも目。

何物も全て見透さんと

周囲を見張っているよう。


サンサ兄弟はすでに巨大木製クモの

身体に必死に捕まっている。


「デカい、クモ、なワケ……!?」


「クモに似せている、のか。

 ……てか、なんか店の品物が

 お腹に吸い込まれて、しまわれている!」


「うー?」


ユミナが何事かと顔を出す。

ふと大きなクモの姿を見て

ぐぅ……とお腹がなった。


「「え?」」


「う?」



* * * * *



巨大木製クモは咆哮する。


もうもうと煙を吐く。

前脚を手のようにゴシゴシこすり

景気よく三度、ぱちんぱちんと叩く。


「……テ」


「……?」


「……テヤンディっ!」


「ーー喋った……?!」


老婆とライラナはクモへと歩き出す。

ロニィなど気にせず、背を向けている。


「逃がすか!」


ロニィは跳躍しようと構える。

しかしそれを見越したのか

巨大クモは動き出す。


口を開き、光りだす。


「ナンデヤー、ワラカシタロカー」


クモは流暢気味に言葉を放つ。

多くの目は煌々と光だし

もうもうと煙が口から漏れ出している。


巨大クモの目はロニィへ向けて

威嚇のごとく大きく一瞬光る。


「目くらましか……!?」


クモの口から放たれた煙は

だんだんロニィを取り囲み

とうとうその場を覆ってしまう。


「くそっ! 見えん!」



「……なんだい。あの軍人は

 まだあんな所にいるんかい。

 それはまずい。どれどれ」


老婆はちょちょいと指を動かす。

クモは、いやクモの周りが消えていく。


「これが本当のクモ隠れ。

 ははは! 天下の裙呂釿ぐんりょぎん

 ここに逃したり! ざまあみろ」


クモは天へと糸を手繰るように

宙へと昇っていく。



「ば、ば、ばあちゃんが

 調子いいんだねぇ~」


「しばらくは元気になるな。

 うわぁ辛いのやら

 助かったのやら、はぁ……」



「さぁアンタたちは品物を整えるさね。

 ライラナ、管理は任せるよ」


「わかりました」


「ほら! しがみついてないで

 こっち来て、手伝いな!

 状況が変わって、気が変わった。

 兄貴を戻してやる」


「戻せるんすか?!」


老婆はコクリとうなづく。


「だが、面倒だがね。

 あのロニィが、裙呂釿あいつら

 この男を欲しがる理由が分からない。

 だが、戻してやれば話は分かるはずさね」


ハークたちは巨大クモの中へと

乗り込んでいった。



* * * * *



クモはどこかを目指して

歩き出している。


「どこへ行く?」


「エイール大陸北東部。

 アタシが語るより、ベルード(あんちゃん)

 よぉく知ってるだろう?」


「俺の、兄貴の、生まれ故郷のある所」


「え、確かそこは……」


ハークは思い出す。

ベルードの生まれ故郷。大陸北東部。

あまり治安が良くない、と話す場所。


「そこにいけば……」


「保証はしない。

 だが可能性はあるさ。どうする」


「兄貴が戻るなら」


「決まりだ。……んで、お前は?」


老婆はハークを指差す。


「い、いく」


「そうかい」


老婆は一言、そのままどこかへ歩き出す。


クモは宙を伝って歩いていく。

一行は大陸北東部へ向かった。

ここまで読んで頂き

ありがとうございます。


今話をもって第13話は終わりです。

お疲れさまでした。


また、投稿時間が遅れてしまい

申し訳ございません。


続きます。次話投稿予定は

2022年3月25日(金)です。

お昼ごろを予定しています。

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