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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
【わるいこ】たちは、北東部へ向かう
111/322

突然の仲裁と訪問者

振り下ろされる拳。

確実に握られ、叩きつけるべく

それは加速していく。


ハークは防御のために

赤い半竜へと身体変えるも

半歩遅い。


それでも身を守るべく

腕を前に構えようとした。


「――兄貴ッ!!!」


店の扉が吹き飛ぶほど

強く開かれた。


そこから飛び出した銀の影。


男へと飛びかかったのは

ベルードであった。



狼の脚による疾駆。

半狼の頑丈な腕は

振り下ろされるはずの

男の拳を弾き飛ばす。


あまりに突然のことに

男の意識はすべて

ベルードに向けられる。


「(逃げるッ!)」


少し男の脚が緩んだの見計らい

ハークは赤から青の半竜となり

その場から脱出する。



ベルードとその兄は

勢いそのまま転がる。

ベルードは兄を止めるべく

マウントポジションを取った。



「兄貴! 俺だよ!

 ベルード! どうしたんだ!

 何で俺たちを襲う!?」


ベルードの言葉は届かず、もがく。

しかし体格差が同等のため

ベルードを突き飛ばせない。


「グルル……」


切り裂かんと男は

己の武器となる爪も牙も

同時に使う。


しかしベルードには届かない。


牙は何も捉えられず

紙一重に躱され、固く閉じられる。

爪の一閃も虚空を抜け、受け流される。


「ごめんッ!」


ベルードは男の喉元に

左腕を押し付ける。


払いのようと男の腕は

有り余る力を振るう。


その力は誰にも向けられず

ベルードに手首を掴まれる。


「グ、グ、グルル……。

 クフー、フー、フーッ!」


それ以上何も出来無いと

分かったのか、息を荒げつつも

男は動きを止める。


しかしその眼は目の前の

ベルードを睨んだままである。



「まあまあの働きだ」


店の中扉から入ってきたのは

行商人の老婆。



* * * * *



「痛たたた……。

 普通にげんこつかよ」


「い、い、痛いのねぇ……」


後ろにはサンサ兄弟。

頭にたんこぶを作って現れる。


「さて、その男を縛るさね。

 退きな。ベルード」


「え、でも……」


「もう飛びかかりはしない」


ベルードは老婆の言葉を信じ

恐る恐る力を緩め、兄から離れる。


男はその一瞬に動かんとする。


しかし老婆の言葉通り、動けない。

ぴたりと拳を爪を牙を構える姿が

そこに止まったままであった。


「全く、よく店を荒らして

 くれたもんだ。えぇ?

 後々困るのはアンタなのに」


兄はただただ襲わんと息巻いている。


「というか、ハーク。

 アンタひとりでは

 抑えきれなかったかい」


「……ごめんなさい」


ハークは頭を下げて謝る。

老婆はただベルード兄を眺め

はぁ、と息をつく。


「謝って済むならそれでいい。

 だがここまでなるとは

 アタシも想定外さね。

 ……が、そもそもこいつが

 暴れたから、もある」


ライラナがユミナを抱き上げ

立ち上がるハークへと手渡す。


「うー!」


ユミナはすぐさま

ハークの元へと急いで戻った。


「ぐるる」


「まだ襲おうとする辺り

 よっぽどだ」



* * * * *



「……クシュン!」


ハークはお腹に風圧と

湿っぽさを感じる。


恐る恐る出してみる。


ユミナが鼻水を垂らしていた。


「うー……。くしゅん!

 う、うぇ、へ、へ……」


「(あ、ちょ……)」


ハークはくしゃみを避けるべく

別方向へとユミナを向かせる。


しかしそれが解き放たれのは

偶然にも縛り上げられた

男の方だった。


「くしゅん!!!」


ユミナから放たれたくしゃみは

大きな風圧となる。



そこにいた誰もが風圧を感じ

髪が乱れ、痛みを一瞬かき消し

意識が途切れる。


そして一番それを受けた男を

吹き飛ばさんとするほど。

暴風。一体その小さな身体の

どこから出てきたのか謎であった。


「ガ、ガ、ガ……!」


男は発狂した。

身体に刻まれた傷のほとんどが

ユミナのくしゃみひとつで

癒えてしまった。


「ガ、ガ、ガアアアアアッ!!」


もう一度傷をつけようと

身体をねじるも叶わない。

身体には細かな傷が生まれるも

それは男にとって傷ではないようだ。


そして耐えきれなかったのか

泡を吹いてぐったりと力なく倒れる。


老婆は目の前で起きたことに

文字通り目を丸くする。


「傷が癒えちまった……?

 全く訳のわからない子だね」


「あ、兄貴は!?」


「――大丈夫さ。

 気を失っただけだ」


「あうー、あー」


ハークへじっと眺める。

ちょうど持っていたティッシュを

鼻に当てる。


ユミナは鼻をかむも

まだくしゃみは止まらなかった。

顔が赤いということはなく

熱はないようだった。


「主人。これは」


「同じものだろうさ。

 だが傷を癒やすってなると――」


その瞬間、老婆は振り向く。


店の入口に目をやる。

そこには人影ひとつ。


ライラナは老婆の様子を察し

続いて扉の人影に気づく。


「(主人。私が)」


「(いや。だめだ。

 アタシに用ありだ)」


老婆は焦る。


そして両指が動きだす。


「うお?!」


「な、な、なんなの……むぐぐ」


サンサ兄弟の口には

突如宙に浮いた布が

ねじ込まれる。


ライラナを除いた全員が

何かに縛られる。


ベルードが飛び出した扉へ

全員吸い込まれるように

押し込まれる。


扉が閉まり、店内には

老婆とライラナの

ふたりだけとなる。


店の扉が音もなく開かれる。

コツコツと靴を鳴らして

二人の目の前に現れたのは

一人の男。


「――久しいな行商人。

 店主直々の出迎えとは

 ちょうど誰か見送った後か」


「……何の用だい、ロニィ」


――ロニィさん?!


ハークの耳は彼の名を捉えた。

ここまで読んでいただき

ありがとうございます。


次回で13話は終わりです。


続きます。次話投稿予定は

2022/03/21(月)

お昼ごろです。


お楽しみに

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